濫読屋雑記

濫読屋雑記

2007年01月04日
XML
最近、欝が原因なのかどうかは分かりませんが、 物事を斜めや間違った方向から考察する事が多くなってきたような気がします 。そのような状況の中で、今日は昨年末に書架整理と本の修理をした時に考察した絵本に関するちょっとしたお話を書いていきたいと思います。

絵本、と一口に言っても種類は様々あります。それこそ、『 ブルーナ 』や『 ノンタン 』のような幼児向きから大人が読むような、というか大人向けに書かれたのだろう、というような絵本までジャンルはそれこそ多種多様であります。そんな理由で、私の勤める中学校にも絵本が100冊ちょっと配架されています。この前も、1年生の国語科の先生が「 授業で読み聞かせをするので、なにか良い本はありませんか? 」との レファレンス を受けたので、 馬場のぼる さんの『 11ぴきのねこ 』を薦めてみて、その本を授業で読み聞かせしたところ、 中々評判が良かったです

それにしても、この『 11ぴきのねこ 』という絵本。 私も子どもの頃から読み聞かせてもらったり、自分で読んできましたが、大人になった今、改めて読んでみると子どもの頃には思わなかった感想とかが出てきて面白いのですよね




例えば、最初の魚が落ちていた場面。落ちていた小さな魚を11等分するのですが、絵を見てみるとどう考えても尻尾とか尾ひれの部分も含めて11等分されているので、腹身や頭の部分と比べてみると不公平な配分です。絵本の中でも「 しっぽのところはいやだな 」とのセリフがありますが、まぁ当然でしょう。そんなお腹をすかせた猫たちに年寄りの猫が大きな湖に巨大な魚がいる、との話をしたので、11ぴきの猫たちは勇んでその巨大魚を捕まえに 湖にどう考えても浮かびそうに無い筏に乗って漕ぎ出し 、湖の真ん中の島で巨大魚が出現するのを待ちます。で、巨大魚が水から飛び上がったのを発見するや、 筏に乗って無謀にも素手で巨大魚に特攻するのですが、あえなく玉砕 。そこで、今度は巨大魚が夜、歌を歌ってから寝ているのを知って、その巨大魚がサザエの貝殻を枕に寝ている島(この辺が絵本の絵本たる所以ですが)に上陸、 子守唄を歌いながら徐々に接近し、枕を蹴飛ばし巨大魚をふんじばってしまうのですが これは明らかに卑怯な闇討ちです 。で、捕まえた巨大魚はといいますと・・・、あとは絵本を読んでみてください。



ついでに、ひどい絵本といえば私が大好きな同じく、 馬場のぼる さんの『 11ぴきのねこふくろのなか 行く先々で看板に書いてあることを無視して勝手な行動 、例えば、花畑の「 はなをとるな 」だとか、吊り橋の「 はしをわたるな 」とか、大木の「 きにのぼるな 」という警告を無視して行動した挙句、最後の「 ふくろにはいるな 」という看板のところにあった大きな袋に入り込んだところ、 怪獣ウヒアハ にとっ捕まって、怪獣の城へ連れて行かれて、牢屋にほうり込まれて城の運動場作り(明らかに強制労働)を強いられてしまうという、ある意味、自業自得なところがあるお話です たるにはいるな 」という看板が立てかけられている樽を発見し、勢い込んで樽の中に頭から突っ込んでしまうのですが、その直後、 11匹のねこがその樽を棒で谷底に突き落として、ウヒアハを退治してしまう 、というのがこのお話のあらすじですが、 この最後のほうの怪獣を樽に閉じ込め、谷底に突き落とすというのは、なかなか残虐な話とは思いませんか

大体にして、絵本の大本となる童話にしてからもちょっと斜めから眺めてみるとアクドイ話や残虐な話が多いことは、皆さんご承知の通りだと思います(その残虐性や性的表現を誇張した本が、幾年か前に出版されて売れたことをご記憶している方もおいでかとは思いますが)。

例えば、かの有名なフランス人の ペロー が集めた童話集に収録されている『 長靴をはいた猫 』のネコなどは暴虐の限りを働いています。まずは、ご主人様から帽子とマントと長靴を買ってもらった水車小屋のネズミ捕りのネコ君。身なり一式整えて起こした行動が、 猟場荒らしです 。物語には「 王様の狩場から 」小鳥やウサギなどを捕まえては「 カリバ侯爵 (こっちの侯爵でよかったかな?) 様からの贈り物でございます 」としゃあしゃあと言って、密猟して来た獲物を当のご本人に貢いでご機嫌を伺うのですから大した役者といいますか、知恵者です。ちなみに、中世ヨーロッパではこのような王侯貴族の狩猟場、若しくは御用林で密猟したら 絞首刑 (あぁ、なんと甘美な響きかな!)です!ちなみにこの法律は18世紀末まで適用されいます。

で、その次に酷いのはご主人の服が水浴びの最中に盗まれた、と言って王様とお姫さまの乗っている馬車に「言上」仕って(しかも、王様たちが領地を視察する予定を知っての姦計です)、貧しい水車小屋の粉屋の三男坊を身奇麗な格好に仕立てあげさせて、王様の馬車に乗せた後です。馬車の道行く先々の領民を恐喝、例えば畑で働く農夫には「 お前の小麦畑にネズミを追い込むぞ! 」と脅して三男坊「 カリバ侯爵 さまの領地でございます 」、と 無理矢理言わせていますし 、仕上げは、悪魔の住む城に通りがかりのご機嫌伺いと称して上り込み、口先三寸で悪魔を二十日鼠に変身させてペロリッとたいらげてしまい、悪魔の持ち主であった城やら領地やらはみ~んな「 カリバ侯爵 」閣下の持ち物となり粉屋の三男坊はめでたくお姫さまと結婚し、 ネコは貴族に取り立てられました 、というあらすじです。

実は、 これらの童話のネコのひとつひとつの行動や、長靴といった道具ひとつを取っても色々な中世ヨーロッパの史実に裏付けられた社会性が見えてくるのですが (例えば、ネコが長靴を要求したことは裸足=奴隷・農奴身分から騎士階級、皮の長靴は乗馬用の履物です、への出世、若しくは隷属からの脱却を暗示している)、そういうような難しい話は、私が学部時代の西洋史概説で使った 森義信 先生の『 メルヘンの深層 』(講談社、1995年)に分かりやすく解説されているので、そちらの方を読んでみて下さい。



こんな感じで、 ちょっと物事を斜めや間違った方向から考察して今日は書いてみましたが 、先日、とある友人より 凄まじき絵本 が存在するので、読んでみたら、と『 人殺しの女の子の話 』という絵本を薦められたので、これまた公立図書館の相互貸借で借りようと思ったのですが、近県には1館しか所蔵がないので、絵本の1冊ぐらいと只今楽天に発注をかけて家に届くのを今か今かと待っているところです。この絵本が届いたらまた、このお話の続きみたいなものを書いてみたいと思います。それでは、今日はこの位で、おやすみなさい。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年01月04日 23時16分48秒
コメント(2) | コメントを書く
[学校図書館司書のつぶやき] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


お久しぶりです  
余菱  さん
どうもご心配をおかけしました。
ときどき見出しだけは拝見して鬱のことなど心配していたのですが、筆無精に見無精ときて、お立ち寄りも出来ませんでした。申し訳ございません。
また、細々と始めますのでよろしくお願いします。 (2007年01月07日 01時09分08秒)

こちらこそ、ご無沙汰です  
花開富貴  さん
余菱さん、ご無沙汰ぶりです。
また、ブログの更新が始まるとの事ですので、ちょくちょく拝見させていただきますね。
こちらも、諸事情で更新が不定期になってしまっていますが、のんびりと書き進めていこうと思っています。
とりあえずは、復帰を祝して!
(2007年01月08日 22時35分06秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

お気に入りブログ

sour grapesさん
ま、てきとうに Me162さん
怪鳥の【ちょ~『鈍… 白い怪鳥さん
とりあえず練習用の… バルディッシュさん
brog katu6448さん

コメント新着

背番号のないエース0829 @ 第二次世界大戦 映画〈ジョジョ・ラビット〉に、上記の内…
gordon@ nQdZmuLyMEEktLLsj KbT59H http://www.QS3PE5ZGdxC9IoVKTAPT2…
sammy@ LWuYJEqkFyjeGuJ 7VxFoY http://www.QS3PE5ZGdxC9IoVKTAPT2…
名無し@ Re:上話菜穂子さんの作品が、アニメ化されるので(07/10) タイトルが上話菜穂子さんになってますよ。
nhPSm3 nnrqsdt@ nhPSm3 <a href="http://nnrqsdtryito.com/">nnrqsdtryito</a>, [url=http://obzunpo nhPSm3 &lt;a href=&quot;http://nnrqsdt…

バックナンバー

2026年08月
2026年07月
2026年06月
2026年05月
2026年04月

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: