濫読屋雑記

濫読屋雑記

2007年06月10日
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カテゴリ: 手に取った本
え~、みなさま。お久しぶりです。 ウツの原因の一つとなった伯父の死から丁度1年 本日、一周忌の法要が終わって ホッとしたら気分が楽になったので、久方ぶりの更新と相成りました

さて、今日取り上げる本は、世界中の戦史研究家、並びに戦記ファン、軍装マニア等々に愛されている 英国オスプレイ 社の『 世界の軍装と戦術 』シリーズの日本語訳第二弾、 ゴードン・L・ロトマン 著、 スティーヴ・ヌーン [カラー・イラスト]、 三貴雅智 第二次大戦の歩兵対戦車戦闘 』(大日本絵画、2007年6月)です。



この本をなぜ購入したかといいますと、 日本軍の対戦車戦術が外国ではどのように評価されているか非常に興味があったからです 。で、本を捲って見てみますと・・・、本の真ん中のカラーイラストに日本軍の対戦車戦術の例として「 日本軍の自己犠牲精神の発露、1945年、「十人一殺」 」という感じで紹介されていました。

まぁ、戦史を少しでも齧った方なら如何に旧帝国陸軍の対戦車戦闘装備が貧弱であったかは、良くご存知の事だと思います。何しろ、日本軍最良の対戦車用兵器といえば、 一式機動47粍速射砲 だったのですから・・・。この速射砲、距離やく500mでかろうじてM4シャーマン戦車の側面を貫通する能力しかなかった代物です。

本書でも「 日本軍における対戦車戦闘に関する対策は、まったく立ち遅れていた 」と 初っ端からバッサリ切って捨てられています 。1939年のノモンハン事件でソ連軍の機甲部隊に圧倒されたにも関わらず(この時、まともな歩兵用の対戦車兵器なんて、空のサイダー瓶にガソリンを詰めた火炎瓶ぐらいしかなかったのですから・・・)、 戦車は歩兵の支援兵器とする誤った観念に固執した結果、機甲部隊の集中運用や、戦車遭遇戦闘に関するドクトリンもなかった、とケチョンケチョンに貶されています 。そこで、訳者が「 筆者のいわんとする日本軍の対戦車戦闘への不備は、大口径対戦車砲や対戦車自走砲、ロケット砲などの装備近代化への遅れをさしている。 」と補足している始末です。この他にも、訳者は 1941年に新設された機甲兵種(戦車兵と騎兵科を合体させたもの)とそれを統括する機甲本部の創設、翌年の戦車師団3個を基幹とする機甲軍の編成、そしてそのドクトリンをまとめた『機甲作戦要務書』も編纂されている 一応、旧帝国陸軍も対戦車戦闘をある程度は想定してはいたのですが、戦車と戦車との対戦車戦闘は起きない、とか対戦車戦闘の基幹は速射砲である、との固定観念、そして大口径対戦車砲を開発する技術力と生産力がなかったので、画餅になってしまったのですが・・・。

さて、この他にも一応、歩兵用の対戦車兵器としては、 九四式三七粍速射砲 (距離約500mで24mmの装甲を貫徹する)や 九八式二十粍高射機関砲 九三式十三粍機関砲 が配備されていました。この機関砲は、対戦車用の鉄甲弾を使用することで、対上陸用舟艇、対水陸両用トラクター用(装甲が無いに等しい車両だったため)に威力を発揮、上陸を試みる海兵隊を苦しめました。後は、高価で低威力な対戦車ライフルに分類される 九七式自動砲 (口径20mm)とか、ドイツからの技術支援で作られた30mmと40mmの成形炸薬を利用した2種類がある小銃に装着して使用する 二式擲弾器 刺突爆雷 (米軍からは「愚者の棒」と呼ばれた)があります。この刺突爆雷、装甲貫徹能力は150mmで確実にシャーマンを撃破出来ましたが、当然、攻撃手の生還は望めない特攻兵器でした。この他、磁石式の対戦車吸着地雷として 九九式破甲爆雷 がありましたが、これは、爆風威力による普通の地雷の為、装甲貫徹力は25mmと戦車の装甲の薄い、側面や上面にしか使用できませんでした。

このような、 威力不足な兵器でもって太平洋戦争を戦い抜いた旧帝国陸軍ですが、意外と米軍に対して、一定の戦果を挙げることに成功しています 。これは、 太平洋戦線がジャングルやら山岳地帯などの錯雑地形が多く、また、旧帝国陸軍が偽装の達人だったため、対戦車兵器に十分な隠蔽を施し、戦車遭遇戦闘の基本として待ち伏せを重視したことにより、敵戦車をやり過ごした後、側面やら後方から射撃を開始、撃破するという戦法を多用したからです 。この戦法は、サイパンや硫黄島、沖縄などで用いられ、米軍戦車に多大な損害を与える事に成功しています。また、日本軍は対戦車肉薄攻撃隊を支援する為、戦車に随伴する歩兵を迫撃砲やら擲弾筒などの弾幕射撃で迎え撃ち、歩兵に出血を強いました。このため、海兵隊の一部の部隊は、戦車の随伴を拒んだほどだそうです。

では、最初の「 日本軍の自己犠牲精神の発露、1945年、「十人一殺」 」の解説を簡単にしますと、米軍のM4シャーマン戦車に日本兵が群がっている様子が描かれています。 戦車には、先に述べた吸着地雷対策に厚さ5cmの木の板を装着し、ハッチには鋼鉄棒を加工した網カゴを装備、エンジンルームの上には土嚢を積み、戦車の前面には予備の履帯を貼り付け、さらに、日本兵が戦車に飛び乗って自軍の兵士に機関銃を乱射させないように、砲塔上面の機関銃を撤去するという状況です 。そこへ、 日本兵が吸着地雷やら、破甲爆雷、爆薬筒を持って突撃する様子が描かれ、他に、40mmの二式擲弾を発射する兵士や、戦車に馬乗りになって、後部エンジンルーム上面に破甲爆雷を2個木の板で挟んだものを仕掛けようとする兵士や、ハッチをこじ開け、九九式破片手榴弾を投げ入れようとせんとする兵士が描かれています 。まさに、 肉弾攻撃・・・ 。しかし、 硫黄島の戦いでの戦車の最大の損失原因は、広範な地雷の使用、航空爆弾や魚雷まで使用したのですから、戦車など文字通り粉微塵に吹き飛ばされてしまいます。そして、お次が一式機動47粍速射砲による攻撃だったそうです

とはいえ、旧帝国陸軍の肉薄攻撃は往々として成功をおさめ、極端な例でしょうが、本書では ビルマ戦線でM3リー戦車に飛び込んできた日本軍の将校が装填手のエンフィールド中折れ回転式拳銃で蜂の巣にされるまで、軍刀で戦車長と砲手を惨殺したとの公式記録が存在しているそうで まさしく日本軍はドイツやアメリカ、そして何より人名の安いソ連と比べても高い代償を払って対戦車戦闘を敢行していた事を改めて、納得させられた一冊でした

ちなみにこの本では日本の他に、アメリカ、イギリス、ソ連、ドイツの対戦車戦闘に関する兵器の解説やドクトリンが紹介されていています 歩兵が如何にして戦場の怪物、戦車に挑んでいったか関心のある方は、ご一読の価値がありますよ





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最終更新日  2007年06月11日 01時29分51秒
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Re:『第二次大戦の歩兵対戦車戦闘』を読んでみて(06/10)  
余菱  さん
ああ、やられちゃったって感じですね(^^;)。

そのうち、列車砲グスタフのネタでも書こうかと思っていましたが、やめておきます。

昔、TAMIYAの1/35MMシリーズで「ドイツ小火器セット」というのが発売されたのですが、もちろんパンツァーシュレックやパンツァーファーストも入ってましたよ。

ところで花開富貴さんはゲルリヒ砲は知ってます?

まあ、元気そうで何より


(2007年06月11日 19時26分50秒)

○○の証明  
KKC さん
拳銃一丁で
薬師丸をかついで戦車群に向かっていく高倉健は
かっこよかった。

映画だから。 (2007年06月12日 04時37分26秒)

やっちゃいましたよ!  
花開富貴  さん
余菱さん
>ああ、やられちゃったって感じですね(^^;)。

>そのうち、列車砲グスタフのネタでも書こうかと思っていましたが、やめておきます。

そう仰らずに、ぜひ書いてみてください。

>昔、TAMIYAの1/35MMシリーズで「ドイツ小火器セット」というのが発売されたのですが、もちろんパンツァーシュレックやパンツァーファーストも入ってましたよ。

懐かしいな~、TAMIYAの1/35MMシリーズ。高校の時、放送部の連中となぜか放課後、放送室の部室で、ワイワイやりながら作っていたことを思い出します。ちなみに高校の時、私は書道部と無線部を掛け持ちして、生徒会にも顔出していて、人生で一番楽しく、忙しさを満喫していた時期ですね。

>ところで花開富貴さんはゲルリヒ砲は知ってます?

ええ、もちろんですとも!sPzB41型2.8cm砲。アイディアは良かったのですが、ドイツの勢力圏内で採掘できない、タングステンを弾芯に使っていたのが泣き所で、少数しか配備できなかったスクイードボア砲身の特殊砲ですね。本当は、5号戦車ティーガーの主砲にも検討されたこともあることでも、有名ですね。

>まあ、元気そうで何より
-----
まぁ、なんとかかんとかやっています。
先日、医者に行ったら、過剰なストレスが溜まっていますね、と言われてしまっている状態ですが・・・。 (2007年06月13日 20時03分24秒)

Re:○○の証明(06/10)  
花開富貴  さん
KKCさん
>拳銃一丁で
>薬師丸をかついで戦車群に向かっていく高倉健は
>かっこよかった。

>映画だから。
-----
映画ですからね~。
自分だったら、絶対いやですね。逃げますね。
あ、敵前逃亡で銃殺か・・・。
(2007年06月13日 20時05分01秒)

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