サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2020.07.19
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カテゴリ: エレクトーンの日
音楽を観る

 コンサートマスターの樫本大進さん、指揮者とオーケストラのつなぎ役として大奮闘ですが、これくらいのオケになると、まとめようとか指揮者の意図を伝えようとかのレベルじゃなくて、各楽員の「歌心」を何とか極限まで引き出そう、という一点に注力しているように見える。それも各員バラバラの「歌心」じゃなくて、指揮者と同じビジョンを共有するような仕方で。

 それらが時に幸福に一致するとき、そこから立ち昇る音楽は、指揮者の意図からも、名手たちの奏でる楽器からも解き放たれて、何やら別のところから包み込むように響き渡っているように見える。私は思うのですよ、そうした瞬間には、じつは音楽は聴き手も含めた、会場全体が作り出しているのではないか、と。
 しわぶき一つ許されないクラシックコンサートですが、音楽が本当に聴き手に届いたとき、音楽は指揮者やオーケストラの手を離れ、ある意味自然物のように勝手に動き出す。それはあるいは先の見えない、ひょっとして不安もともなう進行であるかもしれないけれど、同時にかぎりなく「心地好い」瞬間でもあるのです。

 なんだか禅問答のような意味不明の話になってしまいましたが、「音楽は、どこに本当にあると言えるのか?」という例の命題を考えたとき、私には上のような想念がよぎってしまう。カラヤン以前のいわば全権委任型の音楽じゃなく、オケも聴衆も一緒に音楽を作り上げようとするのが、今どきの流れではないかしらん。
 だから!と言い張るわけじゃないですが、演奏家はやっぱり顔を出すべきだと思いますよ。ラトルや樫本さんの表情や身振りを観ることによって、私たちは音の紡ぎ出される瞬間に立ち会うことができる。時に苦悶の表情であったり、喜びや憂いを含んだものであっても、それはいわば「集中」がなせる業なのであって、一流アスリートたちが本番で見せる厳しい表情と一緒でしょう。私たちはそれらを「美しい」と感じるはずです。

 それにしても、ベルリンフィルというのは、各楽員の表情や振りが大きいのが印象に残る。ザアとらしい歌舞伎みたいな見栄は、イヤミったらしくてゴメンですが、それぞれが集中し、なおかつ全体として驚くほどシンクロしているというのは、かつて指揮者以外、だれ一人微動だにしなかった、お堅いクラシックオーケストラの演奏を見慣れた者には、ずいぶん新鮮に映ったものでした。
 樫本さんの身振りや表情は、ときに楽員に向かってではなく、なんだかもっと遠いところに向かっているようにさえ見える、「音楽のミューズよ、ここに降りて来い!」みたいな。

 私が意識して「音楽を観る」ようになったのは、先にも触れた高校の時、武満徹「 ノヴェンバーステップス
 それもそのはず、普化宗とは鎌倉禅仏教の一派で、経典を持たず、尺八を奏することによってのみ、悟りに至ろうという教義を持つ(いわゆる虚無僧尺八)ので、尺八は楽器ではなく法具なのです。法具(仏具)であるなら、これを改変改造するなどということはあり得ない、という仕儀になるのでしょう。かの楽器が古体のままの姿を残しているというのには、しかるべき理由があったのでした。

 私は鶴田錦糸と横山勝也の協奏で、武満のもう一つの邦楽曲「エクリプス(蝕)」という曲を、実演で一回だけ聴いたことがありますが、残念、この二人の演奏風景の入った動画が見当たりません。先ほど剣士の立ち回りなどと言いましたが、見ようによってはバレエのデュエットのような優雅さも、そこから感じたものでした。
 横山勝也の代表的な演奏と言えば、どうしても古典本曲ということになってしまいますが、貴重な動画があったので、音も画像も今一つですが聴いてみてください。「 産安 」。





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Last updated  2020.07.19 22:59:09
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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