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オキナワの中年
21~29
サブカルチャー批評の問題点
まず第一に、とてつもなく多くの人が興味をもっているという点にある。例えば、私はもとは鏡花を研究していたのが、「高野聖」あたりならともかく、「縁の女」など、研究者しか読まないのである。一念発起しても、ある程度修行しなければ、読破は難しい。小栗風葉あたりになると、普通存在していたことすら知られていない。ここに専門家の優位性がある。
これに対して、サブカルチャーは誰でも簡単に見ることが出来る。それゆえ専門家の優位性というのはほとんど無い。センスの無いことを論じたら、バカ丸出しである。非常にリスクの大きい分野である。例えば社会学者の大澤真幸という人は、とてつもなくえらい社会学者であると思われるが、彼の西田幾多郎論と「ウルトラマン」論とを比べれば、その違いは明らかである。まあバカ丸出しまでは行かないが、ウルトラマンマニアなら、簡単につっこめる部分がある。
ついでネットという表現媒体の出現によって、サブカルチャー批評においては、マニアの水準が異常に高くなった。やや傲慢であるが、ネット内の文学ファンの議論という言うのは、まあたいしたものはない。これに対してサブカルチャー系の議論は、しばしば侮りがたい水準に達している。特にウルトラセブン系は、その最高峰のひとつだと思われる。決して無視できない。
例えば私はウルトラセブン11話「魔の山へ飛べ」および13話「V3から来た男」にアンヌ隊員が登場しないことを、男の友情を強調するための意図的な設定だと考えた。特に「魔の山へ飛べ」のソガの男泣きはアンヌがいないことによって成立している。しかしネットで調べると女優としての自覚にかけるアンヌ役のひし美ゆり子に怒った、満田監督に干されたらしいことがわかる。
http://www7.gateway.ne.jp/~okhr/page09.htm
この事例には、さらにサブカルチャー批評における、別種の問題が含まれている。シナリオライターの意図とは、作品の中で常に部分的であるという点だ。文学研究の場合は読者論(受容理論)というものがあって、作者の意図はカッコにくくり、作品がどのような効果をもたらすか、という事に重点をおく場合がある。この立場に立てば、先の問題は、「(理由はどうあれ)アンヌの不在により、男の友情が強調された」と記述することが可能である。ただこの場合は、作家論的な視点は制限される。そうすると完成作品にないシナリオ部分を批評するという行為は、原理的には許されない。実現されなかったシナリオには通常の意味での受容者は存在しないからだ。
また回をあらためるが、サブカルチャーを文学とのアナロジーで批評することに関しては、他にも様々の原理的問題が横たわっている。
ウルトラマン研究22 (1) 7月18日(金)
『金城哲夫全集』をもし発刊するとしたら
シナリオ30分ものの分量計算
『ノンマルトの使者』の版組 20字*18行*2段 (720字)
例「まぼろしの雪山」18ページ、これに扉とスタッフ名簿が各1ページ。
シナリオ部分は12,960字 、題字、スタッフ名簿を詰めると原稿用紙33枚程度。改行が多いため、一行文字数を増やしてもあまり効果は出ない。 約700行と考えるといいかも。
一般的なA4版の書籍だと、22行程度が標準。この2段組だと30分シナリオ一本16ページが目安になる。なおシナリオ集『金城哲夫の世界』は、ポイントを小さくして30行とっている。これは率直に言って見づらい。
金城哲夫 のシナリオ
円谷系 本来単著のみを中心にすべきかもしれないが、それだと例えば「ウルトラ作戦第一号」などがはずれてしまう。一方共著者の著作権も存在するため、専門家に相談が必要かも。
ウルトラQ 12本、ウルトラマン15本、ウルトラセブン15本 マイティジャック1本(60分もの、2本で計算)、戦えマイティージャック7本、怪奇大作戦3本、帰ってきたウルトラマン1本、怪獣ブースカ2本 以上全て製作、小計55本
未製作、woo2本(『ノンマルトの使者』に収録)、ウルトラセブン2本(このうち「認識票NO3」は『ノンマルトの使者』に収録、「人間泥棒」については未詳)小計4本
ここで中間集計をすると、59本。標準的な本の形態にすると、概算で944ページになる。小熊英二の『〈民主〉と〈愛国〉』が966ページ(ちなみに6300円、新曜社)なので、まあ一冊でも出来ないことはないが、上下2分冊にすると500ページ弱の製本が可能。この中に円谷プロの日誌や、ジュブナイル、ノート「ウルトラセブン覚え書き」等を加えることが可能だと思われる。
仮に企画が『金城哲夫・円谷プロ全作品』だと、装幀にもよるが、上下分冊、セット価格5,000円台で出版可能かもしれない。
ただこれだと全集では無いので、円谷以前と帰沖後を含めると、映画「吉家チルー」および6編の沖縄芝居、5本(内前後編1本)のラジオドラマが『金城哲夫の世界』に収録されている。この本は前述の通り、ややきつい版組をしているが、300ページである。これに未上演の『剣は知っていた』および沖縄芝居と内容酷似のために省かれたラジオドラマ2本を加えると、ほぼ沖縄分は網羅できる。その他パイロット版のドラマ『沖縄物語』が3本(このうち一冊の台本が行方不明)、テレビドラマ5本。何とか一冊でいけそうな感じ。
『金城哲夫全集』全三巻、A4版二段組み平均500ページ、分売不可。ニーズが不明なため価格設定は難しいが、一万円は切ることが出来ると思う。
ウルトラマン研究23 7月23日(水)
まだそういう段階ではないが、仮に今論文を書き出すとすればという前提で、構成を作ってみた。これは四年生の卒業論文指導のために作ったもので、実際にこうなるかどうかはわからない。
「ノンマルトの使者」論ー金城哲夫と沖縄(仮)、「〈使者〉というモチーフ」の方がいいかも
序論
サブカルチャー批評の方法について、金城哲夫の位置、「ノンマルトの使者」の概要等
一章、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の時代
(1)大状況:高度経済成長期、宇宙開発競争、科学への夢。公害、交通事故、都市化の問題点、科学に対する懐疑。薄れゆく「戦争」体験と冷戦状況、キューバ危機からベトナムへ。
(2)テレビの時代:受像器の普及。海外テレビドラマの大量輸入。ゴジラからウルトラマンへ。商品版権の問題。
(3)沖縄問題:アイゼンハワー一般教書から佐藤ニクソン会談、復帰へ。
これらの状況を簡単にまとめる。
二章、金城哲夫の両義性
金城哲夫の伝記は先行文献の紹介程度にとどめる。金城にはヤマトへのあこがれと沖縄へのこだわり、というような相反する価値の葛藤があった。金城の〈使者〉意識はこの両義性に発する。二つの異質の価値を仲立ちすること。
この章は全体に関わる重要な部分なのだが、まだ準備不足のため、うまく節に区切れない。「玉川学園慰問隊」のエピソード、大城立裕の「文化的劣等感」の問題などをからめ論じる。またしばしば市川森一のキリスト教と対比される金城の沖縄性だが、金城の実家もクリスチャンだったことに注意。
三章、〈使者〉達の系譜
(1)「ウルトラマン」
「ウルトラマン」の枠組み。民俗とSFとの二重性。
*「恐怖のルート87」交通問題と神話とを結びつける、使者=死者、モチーフ的にはもっとも「ノンマルトの使者」と関連がある。
*「 禁じられた言葉」ここではウルトラマン自体が、使者となり、交渉は成立する。
→セブン「闇に光る目」( 藤川桂介)、「ウルトラ警備隊西へ」
*「小さな英雄」におけるピグモン。怪獣とのコミュニケーション。無惨な死。しかしメッセージ自体は伝わる。なおピグモン(ガラモン)は八重山エリアの神々、特に「アカマタ」にそっくりである。これは上原輝男経由の知識か?
(2)「ウルトラセブン」
侵略物としての「ウルトラセブン」の枠組み。フォークロア的な異界との接触が、きわめて困難になる。セブンとダンという異質なもの同士との連帯は、「敵」の存在によって強められる。「戦友」というモチーフ→「コンバット」
*良くしゃべるウルトラセブン。ウルトラマンは変身後、人間と言葉を交わすことはほとんど無かった。
*「ウルトラ警備隊西へ」、和解の困難。藤川シナリオの「闇に光る目」についても、宇宙人であるセブンだから信じるのであって、人間と宇宙人が和解したわけではない事に注意。
*「蒸発都市」、ユタ花村。作品構造上はほとんど不必要な仲介者はなぜ現れたか、しかもユタという名を付けたか?
四章「ノンマルトの使者」
(1)シナリオライターとチーフライター
(2)〈使者〉の純粋性。
(3)シリーズ全体への違和と、「カクテル・パーティー」芥川受賞。沖縄意識の再浮上。
大城の芥川賞受賞は67,7,23であり、ウルトラセブンの制作中の出来事であった。
(4)〈使者〉の挫折と、強者の勝利。
結論
帰沖後の「風雲 琉球処分前夜」の宜野湾親方の造形に言及しながら、全体をまとめる。
参考文献、ちょっとやりかけ
『金城哲夫シナリオ選集』(金城哲夫シナリオ選集を出版する会 代表 屋良朝輝)アディン書房 1974。
『ノンマルトの使者』金城哲夫、宇宙船文庫 1984.9
『金城哲夫の世界 脚本集[沖縄編]』金城哲夫の世界実行委員会編 1993,2 パナリ本舗
『ウルトラマン昇天』山田輝子 朝日新聞社 1992,8
『金城哲夫 ウルトラマン島唄』上原正三 1999,10 筑摩書房
『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』佐藤健志 文芸春 1992,7
「私の思い出・戦争・金城哲夫・ウルトラマン」 上原正三 『うらそえ文芸』第8号 2003,5
『怪獣使いと少年』切通理作 1993、7 宝島社
『GARVE 特集・ウルトラマンを作ったウチナーンチュ金城哲夫』 1993,7
『帰ってきたウルトラマン大全』白石雅彦・荻野友大編 2003,1双葉社
『怪獣学・入門』 町山智浩編 JICC出版局 1992,7
『ウルトラセブンアルバム―空想特撮シリーズ』竹内 博 編
『小説ウルトラマン』金城 哲夫
『ウルトラマンの東京』実相寺 昭雄
岩田功吉「さまよえるウルトラマン」(東京大学出版会『UP』1995年2・3月号)
大江健三郎「破壊者ウルトラマン」『世界』1973,5
大城立裕「金城哲夫の沖縄芝居」『沖縄タイムス』1993,7,21
上原正三「なぜ、今」同、22
満田カズホ(のぎへんに斉)「怪獣ネーミング秘話」同、23
大城立裕 「心残りの記」(エッセイ)『金城哲夫シナリオ選集』金城哲夫シナリオ選集を出版する会編 1977,2 アデイン書房刊
大城立裕「金城哲夫の帰郷」(コラム)『琉球新報』1988,5,29
大城立裕「金城哲夫が、いま」(エッセイ)『日本経済新聞』(夕刊)1993,7,14
ウルトラマン研究24 8月14日(木)
『潮』のバックナンバーあたりも、沖縄県内で入手するのは難しいため、今回の東京行きは有意義なものだった。国会とは行かないまでも、広尾の中央図書館ぐらいの図書館が沖縄にもあればなあ。
新着資料
岩田功吉「さまよえるウルトラマン(一)(二)」(東京大学出版会『UP』1995年2・3月号)
岩田氏の専門は朝鮮現代史。ネットで検索すると、なかなか強力なイデオロギーを感じるが、この論文はバランスのとれたいいものである。私の関心と重なる部分も多いので、入手して良かった。タイトルはおそらく広津和郎の「さまよえる琉球人」からとったもの。なお同氏には他に
岩田功吉「思想としてのウルトラマン-沖縄からの発信-」(『沖縄文化研究 27』2001年)
というのがあることが判明。これもおそらく学術論文であり、貴重な先達者ということになる。早急に入手すべし。
実相寺昭雄「ウルトラマンを作った男」(『潮』1982年、6月)
内容自体は既出のものが多いが、発表年に注目。おそらくこの手の研究の最初期を形作る文献といえる。
実相寺昭雄「ウルトラシリーズの怪獣達」(『歴史読本』臨時増刊1989年12月)
これも実相寺監督のエッセイ。実相寺監督は文章自体はあまりうまくなく、焦点がはっきりしない部分もあるが、やはり貴重な文献である。
実相寺昭雄『星の林に月の船』(大和書房、1987年、2月)
古本屋で入手。
テレビドラマ「ウルトラマンを作った男たち」の原作。あくまでも小説であり、あつかいが難しい。
原田実『ウルトラマン幻想譜』(風塵社 1998年9月)
書泉ブックタワーで入手。
著者原田実氏は経歴をみると正体不明な感じもするが、一般向けの歴史書をたくさん書いている人らしい。ホームページもあるようなので、今度チェックしてみよう。この本自体はまだ熟読していないが、しっかりした本だと思われる。
池田憲章、高橋信之編『ウルトラマン対仮面ライダー』(文春文庫plus、2001年1月)
ハードカバー版もあったが、最近の本は文庫化の際に増補などがあるので文庫版を購入。まあ悪い本ではないが、あくまでも一般向けの読み物。池田憲章氏は竹内博氏と並び、この分野の第一人者だと思われるが、時代は白石雅彦氏のような、よりコアなものを要求しているような気もする。
その他紫藻さんに貴重なビデオを貸していただいた。
上記以外で、むしろ沖縄の方が入手しやすい資料が数点あるが、場所を押さえているので、近いうちにそろえられる。まだ見落とし、未発見の資料もあるだろうが、だんだん勝負になる分量になってきたと思う。
その他、進行状況としては、谷川健一あたりを読んで、「まれびと」「ニライカナイ」等を勉強中。こちらはなかなか手強い。
ウルトラマン研究25 8月19日(火)
人文諸科学、殊に文学研究においては、学術論文(通称ペーパー)と批評、エッセイ、さらには感想文との境界がきわめて曖昧である。しいていえば「学術雑誌に掲載されていること」が外見上の特徴であり、内容的には「レファランスがしっかりしていること」が、肝要であろう。
この「レファランス」の問題には、今回非常に苦しめられた(ている)。学術論文の場合、内容は下らなくても、レファランスだけはしっかりしているのが普通である。これに対してサブカル研究の場合、非常に鋭い分析でも出典が明示されないことが多い。特にネット上では「~だそうです」「~らしい」が乱発され、事実とうわさの境目がはっきりしない。
たとえば『ウルトラセブンism』(2002、11 辰巳出版)のコラムは一種アカデミックな表記法を取り入れており、注(note)が非常に多い。しかしその多くはいらない情報であり、肝心の注がないのである。私は満富幸男氏の「希有なヒーロー・ウルトラセブン」(同書p.86~p.87)中、
「さらに、セブンの特殊性を裏付ける決定的な要素として、彼の本来の任務である恒点観測員(注22)という点が上げられる」
というくだりを読んで少なからず興奮した。ついに「恒点観測員」の出典が明らかになるのか、と思ったのである。しかし(注22)を読んで、大きな失望を感じた。
(注22)ウルトラヒーローの多くが席(ママ、籍の誤りだろう。引用者注)を置く宇宙警備隊が、大宇宙の平和と安全を守るという、地球上における警察活動に近い任務であるのに対し、恒点観測員は本来、調査や研究という点に重きを置いていると思われる。
むむ。何がいいたいんだろうか?「恒点観測員」が調査研究に重きを置くのは当たり前である。そうではなく問題は、ウルトラセブンが本当に「恒点観測員」として設定されているのか、ということである。実はこの設定は、結構常識になっているのであるが、実際に放送された「ウルトラセブン」のどこにもそんな言葉は出てこないのである。(この点については見落としもあり得るので、何か知っている方は、掲示板に書いてください)
また90年以降、かなりの分量が出されている「研究本」の類が重要な論拠とする関係者のインタビューについても、私は限定的な評価しかしないことにしている。その理由は上原正三の『金城哲夫 ウルトラマン島唄』の「あとがき」にはっきり出ている。
「年月日が決まっている過去の事実を掘り起こすのは容易ではない。当時のスタッフに取材しても三者三様の答えが返ってくる。三十五年の歳月が記憶を風化させているのだ」(p.275)
そこで上原氏は当時の文献にこだわり、優れた評伝を書いた。本当に事実に近いのは「当時の」証言であり、文献であり、幸い閲覧が容易な「作品そのもの」なのである。
現在の所例えば「ウルトラセブン」に関しては、第一級の資料といえるのは、オクヤマさんの「ULTRA SEVEN CRAZY FAN BOOK」であろう。
http://www7.gateway.ne.jp/~okhr/
この前お会いして確認したが、案の定オクヤマさんは何度もDVDを巻き戻して、セリフを再現したということである。私もこの作業を「ノンマルトの使者」に関してのみやってみたが、たった一作でヘロヘロであった。紛れもない事実というのは、きわめて地味な作業を通してしか得られない、というのは本当である。
さて一方の「学術論文」であるが、実はネット上にも「教材研究」としての論文が結構ある。
例
http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/ultraman.htm
http://www.biwa.ne.jp/~m78seiun/siryo.html
グーグルで「ウルトラマン×教材」で検索すると、結構ヒットするのである。既にウルトラマンは「教材」として一定の市民権を得ているらしい。この教材研究を別にすると
岩田功吉「さまよえるウルトラマン(一)(二)」(東京大学出版会『UP』1995年2・3月号)
岩田功吉「思想としてのウルトラマン-沖縄からの発信-」(『沖縄文化研究 27』2001年)
津島知明「“まれびと・ウルトラマン”再考」 『新沖縄文学 第93号』1992.10
現在の所3本であり、岩田氏のものは上が下のダイジェスト版である。本当は今日は岩田氏の論考について考えようと思っていたのだが、今日は時間切れ、明日から数日いそがしいので、続きは不明です。
訂正・昨日の日記で『宇宙からの贈り物』の定価を2,000円と書きましたが、1,200円の誤りでした。
ウルトラマン研究26 (1) 8月22日(金)
次第に最深部に近づいてきた感じ。
岩田功吉「さまよえるウルトラマン(一)(二)」(東京大学出版会『UP』1995年2・3月号)
岩田功吉「思想としてのウルトラマン-沖縄からの発信-」(『沖縄文化研究 27』2001年)
上が下のダイジェストなどと書いたが、時期からいうと増補ということになる。ちょうど切通さんの「ウルトラマンと在日朝鮮人」(『異人たちのハリウッド』映画宝島Vol.1(別冊宝島)所収JICC出版局 1991.12 )と、『怪獣使いと少年』との関係。「思想としてのウルトラマン-沖縄からの発信-」の方をよめば上は必要ない。
異論は結構あるが、これに気付いて本当に良かった。大江の「破壊者ウルトラマン」批判から入るなど、私もやりそうなことをやっている。先行文献の見落としは命取りである。
沖縄芝居の原文にあたらず、『ウルトラマン島唄』の引用を使用するなど、ややいい加減な部分もある。
津島知明「“まれびと・ウルトラマン”再考」 『新沖縄文学 第93号』1992.10
津島氏の専門は、枕草子などの古典のようである。國學院を出ているので折口系だろう(違うかも)。
「”悲劇の沖縄人”という物語が、あまりにも型どおりになぞられていることがわかるだろう」という佐藤健志批判など、なかなかに鋭い物がある。
またこの論文を読み、『ウルトラマン大鑑』(朝日ソノラマ、1987/12)は是非とも必要な資料だと感じ発注した。この本も通常6,000円くらいで売られているのだが、3,500円のを見つけた。もともと定価が4,000円以上する本なので、まずまずラッキーである。
じつは「再考」というだけあって「まれびと・ウルトラマン」という論考が別にある。『飢餓陣営』という特殊な同人誌に掲載した物で現在品切れ中。これが入手できるのかどうか不明。国会にもないようである。まあ「総括」といっているので、こっちだけで何とかなるかも。
以下未読
本浜 秀彦 「1972年前後のオキナワ表象--手塚治虫・ゴジラ・ウルトラマン」 『ユリイカ』2001年8月号
まだ見つけていないのだが、この本は研究室のどこかに絶対ある。なお、本浜さんは、前に『沖縄文学選』で一緒に仕事をした知り合いである。名刺に「マンガ表現論」と書いてあったが、こんな論文も書いていたのか。
飯塚 聡 「ウルトラマンの構造分析--プロップの手法の応用による異類婚姻型昔話との比較 」『工学院大学共通課程研究論叢』(通号 36-1) [1998]
むう。こんなのがあるのか。折口の「まれびと」にウラジミール・プロップをぶつけてきたのか?飯塚氏の専門は英文学のようで他にコナンドイルの分析とかあるらしい。前回上京する前に知っていれば、難なく入手できたものを・・・。「またパパお仕事なの」攻撃を受けるが、家族を連れて里帰りが、追加調査・資料収集になりそうである
ウルトラマン研究27 8月24日(日)
飯塚 聡 「ウルトラマンの構造分析--プロップの手法の応用による異類婚姻型昔話との比較 」『工学院大学共通課程研究論叢』(通号 36-1) [1998]
なんとうちの図書館にあった!といっても驚くほどではなく、大学図書館なのだから、他大学の紀要があるのは当たり前であった。灯台もと暗しである。
実は私の卒論は鏡花の「高野聖」の構造分析であり、最初に書いた学術論文も同じ手法であった。それゆえこの論文にはある程度の共感は感じる。しかし、すこし専門的な話になるが、構造分析自体はこつを覚えてしまえば非常に簡単なものであり、重要なのは、分析結果から何をいえるのか、という考察部分だと思う。この点率直に言って飯塚氏の論文には魅力を感じなかった。
〈異類婚姻型〉とは早くいえば、ツルの恩返しである。異類が正体を隠し人間と共棲するが、最後は何らかの形で破局を迎える、というタイプである。一見すると「助けてもらった」と「ハヤタを死なせてしまった」は事情が異なるが、負い目という点に注目すれば、構造的には等価であるし、「婚姻」とは便宜的な名称で、構造的には共棲すればいいため、必ずしも結婚しなくても良い。確かに「ウルトラマン」も「ウルトラセブン」も、このような全体構造をもっている。が、問題はそこから何が言えるのか、であると思う。
飯塚論は映画「シェーン」も同一構造だと分析した後で、次のように結んでいる。
「現代の物語もそれらが作られるに際しては、神話や昔話などの口承文芸から受け継がれて来た、物語の祖型の支配を受けているのである」
そりゃそうだろう、というほか無い。というか、プロップのモデルは非常に抽象的なので、多様な作品が同一構造になるのはむしろ当たり前なのである。
今回はこういうスタイルでやるつもりはないが、例えば「ウルトラマン」はウルトラマンが地球に来訪し、帰っていくまで38編(怪獣殿下はひとつと数える)の小構造から成り立っている。この全てを構造的に記述し、全体構造との関連等を分析するとか、シナリオライター監督別に何らかの傾向があるのか分析するなど、何らかのひねりが必要なのではないだろうか。
現在の所、私が最も重く見るのは津島知明氏の「“まれびと・ウルトラマン”再考」 である。紫藻さんが勧めてくれているように、バックナンバーお願いしてみようかな、とも思う。
ウルトラマン研究28 (1) 8月29日(金)
『宇宙からの贈り物』(朝日ソノラマ1985.8)到着、非常にきれいで満足
ウルトラQ
「五郎とゴロー」
「宇宙からの贈りもの」
「甘い蜜の恐怖」
「クモ男爵」
「ガラダマ」
「ガラモンの逆襲」
「空想都市」(「1/8計画」の準備稿)
「南海の怒り」
「火星のバラ」(未使用シナリオ)
ウルトラマン
「ウルトラマン誕生」(前夜祭)
「恐怖のルート87」
「禁じられた言葉」
「小さな英雄」
その他
「人間泥棒」(ウルトラセブン未使用シナリオ)
「フランケン1968」(怪奇大作戦の前身、チャレンジャー準備稿)
「来訪者を守り抜け」(戦え!マイティージャック)
「毒ガス怪獣の出現」(帰ってきたウルトラマン)
巻末には抄録ながら円谷の文芸部日誌、円谷一宛書簡あり。おそらく活字としては初出と推定される。
マニアックである。『ノンマルトの使者』の翌年に刊行されながら、相当発行部数が少なかったのだろう。これが現在の極端な品薄につながっていると思われる。これで刊行された四冊のシナリオ集全てを手にすることが出来た。
『ウルトラマン大鑑』 (朝日ソノラマ1987)について
これは本当にすごい本である。A-4版の大型本の大半(約180ページ分)が、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンの企画資料。近年では良く知られている「WOO」「ベムラー」をはじめ、実現しなかった「戦え!ウルトラセブン」の企画資料まである。まさに研究書である。「島唄」などで部分的に見ることができるものの、文芸部日誌の全文などは実に貴重だと言えよう。
『ウルトラQ伝説』(アスキー1998)紫藻さんおすすめの本。ヤフオク3800円で落札。といっても競り合ったわけではなく、出品者の言い値。定価3600円だが、絶版美品としては、まずまずの値段。
ウルトラマン研究29(第一部最終) 8月31日(日)
樋口尚文『テレビヒーローの創造』筑摩書房 1993,10
『月光仮面』から『金曜日の妻達へ』まで30年にもわたるテレビ史、その中で中心に据えられるの「ウルトラシリーズ」である。これといって新しい情報はなかったが、どうしても金城哲夫に偏りがちな自分のとらえ方を対象化するためにはいい本だった。
この本も93年刊。92から93年は、非常に重要な年である。
玉城優子「沖縄を愛したウルトラマン」『沖縄タイムス』コピー開始。さっき2月分だけコピーして、腹が減ってダウン。何とか今日中に仕上げたいが、縮刷版から記事を選りだし、拡大コピー(160%無いと読みにくい)するのは、想像通りの難作業。114回もある(涙)。
きだみのる『気違い部落周游紀行』(初版は1948)、入手。帰郷の際、金城は「きだみのる氏のようになりたいのです」(円谷一宛書簡、1969,1,23)と述べている。前掲書はきだの代表作とされているもので、1957年、松竹により映画化、『気違い部落』。現在の感覚ではあまりにすごい題名から、テレビ・新聞等ではその存在すら取り上げることが出来ないらしい。ちなみにここでの「部落」は、古い日本の慣用表現で、共同体をさすものである。
実は私はきだみのるについては、名前を聞いたことがある程度で、奄美出身という事すら知らなかった。
http://noz.hp.infoseek.co.jp/Kida/
このページである程度のことがわかる。
その他初期の金城が強い影響を受けたという新藤兼人『愛妻物語』1951松竹、帰郷の大きな要因となった今村昌平監督の『神々の深き欲望』1968日活、等まだ見ていない。特に後者は大学の図書館にあるので、早い時期にチェックすべきだった。
円谷時代の金城については沖縄出身を重くみる立場(実相寺監督、切通氏など)と、沖縄問題とは無縁であったと考える立場(満田監督、會川昇氏など)の対立があり、私自身は「カクテルパーティー」芥川賞受賞以前については、後者に近い感触をもっている。一方、きだみのると『神々の深き欲望』は、きわめてマージナルなモチーフを取り上げている。
6月4日にスタートした「ウルトラマン研究」であるが、ここで一段落させることにする。執筆に入る。
0から始まっているので、ちょうど30回。当初は一本だけ書くつもりだったが、最低二本書くことにした。一本目は仮題「金城哲夫論序説ー「ウルトラマン」はいかに読まれてきたか」、これは早くいえば受容史、研究史論である。包括的かつ体系的にまとめるつもりである。作品論もしくは作家論は二本目という予定である。
重要ミス・訂正 9月28日(日)
ウルトラマン研究23において、金城哲夫の実家が「クリスチャン」であったという記述があるが、これは誤りである。少年時代の教会通いや、玉川学園進学からなんとなくキリスト教の結びつきが頭の中に入っており、岩田功吉氏の記述を無批判に採用してしまった。金城がキリスト教入信を真剣に検討するのは晩年である(『ウルトラマン島唄』p.248)。
だが母親のツル子はクリスチャンであった。(「沖縄を愛したウルトラマン」31)これが玉川学園進学の、ひとつのモメントになったことは確実である。それゆえ、金城とキリスト教との結びつきは何とも微妙と言えよう。
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