ちょっと休憩

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2005年06月15日
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カテゴリ: 本
「号泣する準備はできていた」
江國香織 / 新潮社

直木賞受賞作品、ということですが、「へ~?」というくらいあっさりした短編集です。
江國香織といえば、私にとっては、「なんとなくエキセントリックな主人公達の静かなる狂気」のようなものがテーマな恋愛小説という印象でした。
たとえば出世作の「きらきらひかる」とか、ほかには「落下する夕方」とか「神様のボート」とか「流しの下の骨」とか……。
だけど、この本の12篇はすべて、普通の人たちの普通の時間が描かれてます。
どれも人生の中のある一日だけを、あるいはひとときだけを切り取っただけのような、それだけの時間の話だから、大きな事件が起きるわけではない。
だから、印象としてはとてもあっさり。

どの短編も共通しているのは、主人公達が、かつて、もしくは今現在、もしくは近いうちに、何か(恋愛関係)を失ってしまった、あるいは失いつつある、もしくは失うかもしれない予感におののく、ということ。


「……略……
たとえば悲しみを通過するとき、それがどんなにふいうちの悲しみであろうと、その人には、たぶん号泣する準備ができていた。
喪失するためには所有が必要で、すくなくとも確かにここにあったと疑いなく思える心持ちが必要です。
……略……
かつてあった物たちとそのあともあり続けなければならない物たちの、短編集になっているといいです。」

失う前にも失う方向に向かいつつある時間の流れがあり、失いつつある今もそれに至る人生の瞬間があり、失ったあとにもそれを思いだし喪失感に耐え忍ぶ時間がある。
そういう1つのテーマのさまざまなシチュエーションが描かれているという感じですね。
でも前述したようにそれはあっさりと冷静に描かれているので、読んでいる方は号泣にはいたりません。
タイトルを見て、「泣ける本だわ」と思って手にとった人は、たぶんがっかりするだろうと思います。

個人的には、「洋一も来られればよかったのにね」がよかったです。
年に1度の恒例行事で、姑とふたりで温泉旅行に来ている主人公が、旅先でも考えているのは半年前に別れた不倫相手の男のことばかり。

そのうえに、恋に落ちるとは、すでに帰る場所を失っているということ。
恋人を失う前に、すでに夫を(観念的には)失っていたということ。
そういうことがさらりと書かれていて、かえってずずーんと胸にきました。
それでもこの先えんえんと営まれる主人公と夫との結婚生活(それは描かれてないけど)を考えると、そのむなしさといったら……。
そしてその先続けられる姑との旅行にいたっては……。


それから、「溝」。
これは部分的にだけど、私にとって、とってもリアリティありました。





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Last updated  2005年06月16日 00時18分24秒
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Re:「号泣する準備はできていた」江國香織(06/15)  
こんにちは。
”洋一も来られればよかったのにね”はよかったですね。もう戻っては来ない恋の喪失感というか、夫との虚無感というか、叫びたくなりましたっ 主人この女性の代わりに私が泣いてどうするんだあと、思いながらもです。
さらさらと淡々と描かれていて、全部が分かるわけではなかったけどなにか自分の中に残る物語だったなあと思います。

(2005年06月18日 09時48分44秒)

Re[1]:「号泣する準備はできていた」江國香織(06/15)  
ときあさぎ  さん
月はまぼろしさん
こんにちは。

>”洋一も来られればよかったのにね”はよかったですね。もう戻っては来ない恋の喪失感というか、夫との虚無感というか、叫びたくなりましたっ 主人この女性の代わりに私が泣いてどうするんだあと、思いながらもです。

わかります(笑)
そして、この内容で、このタイトルがまた恐いです。

この短編集は既婚女性が主人公のものが多くて、そして読んでいる方も結婚しているからこそ、「わかる」部分って多かったように思います。
主人公の虚無感が、何事もなければ死ぬまで続く結婚生活にずっと伴われていく……こわいですね。 (2005年06月18日 16時47分50秒)

Re:「号泣する準備はできていた」江國香織(06/15)  
この本持ってますよ。
江国香織さんの味は出ていますね。
どうしても、大衆受けしているのが「冷静と情熱の間」だとか、「東京タワー」(まだ読んでない)
など、結末や話だしがはっきりしているものなんだけど、どこかにあるお話の中間部分だけを色濃く描くような掴みどころのない描き方が得意な方です。
女性の中にある静かな狂気をとても巧みに表してますよね。
そしてかなり多く家族が出てきます。
「流しの下の骨」だとか。
「思いわずらうことなく愉しく生きよ」もいいですよ。
「号泣する・・・」の中の「号泣する・・・」自体はあまり心にHITしなかった。大好きな作家の直木賞受賞作品でもそんなことあるんですね。
でも他にさすが江国香織さんだわ~と思う作品もいっぱいありました♪ (2005年06月18日 21時38分20秒)

Re[1]:「号泣する準備はできていた」江國香織(06/15)  
ときあさぎ  さん
ポプリローズさん

こんばんは。

>どうしても、大衆受けしているのが「冷静と情熱の間」だとか、「東京タワー」(まだ読んでない)
>など、結末や話だしがはっきりしているものなんだけど、

確かに……。どちらも映画化されましたね。
でもどちらも淡々としているといえば、淡々としてましたが、シチュエーションが映画的だったかも。

>どこかにあるお話の中間部分だけを色濃く描くような掴みどころのない描き方が得意な方です。
>女性の中にある静かな狂気をとても巧みに表してますよね。

語り口が静かなだけに、その「狂気」が日常の中にに常に存在しそうな気になってしまいます。

>「思いわずらうことなく愉しく生きよ」もいいですよ。

これ、未読です。
いつか探して読んでみます。

>「号泣する・・・」の中の「号泣する・・・」自体はあまり心にHITしなかった。

これは私も同意です。
私の経験的理解の外にあったからでしょうか。 (2005年06月18日 22時01分39秒)

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