桔梗の心とかごめの心

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かごめは深い森の中を歩いていた。

不気味なほど静かで・・・風で木々が擦りあった音がする。

そして――かごめは背後に人の足音を聞いた。

振り返ると・・・己の前世の巫女、桔梗がそこに無言で立っていた。

「桔・・・梗?どうしてここに」

「・・・・・」

桔梗は弓矢をギッ、と鳴らしながら矢の先をかごめに向けた。

「ちょっ・・・何?桔梗。あたしなんかした??」

「黙れ。」

桔梗はそう言うと手を離した。風を切る音がし、クコッ、と何かに矢が刺さる音が続いた。

「・・・・っ」

矢はかごめの頭すれすれに刺さっていた。木に刺さった矢がまだ振るえていた。

「あ・・・」

かごめは恐ろしさのあまり、震えながら座りこんだ。足が立っていられなくなったのだ。

「・・・・・ふ」

桔梗は微かに笑った。


かごめは一瞬でも思ってしまった。"桔梗に殺される"。

しかしそれは現実には起こらなかった。よかった・・・、と思うしかない。

桔梗は自分の前世。そして自分は桔梗の来世。

なんでこんな風に複雑な関係に居なければいけないのだろう。

始まりは骨喰いの井戸。"時を越える"と言うことがまずありえない。

しかしその時にもうすでに桔梗は死んでいたのに・・・!

桔梗は蘇った。本来なってはいけないこと。人は死んだら蘇らない。

どんなに回りの者が願っても。


それでも今この世に居る桔梗。

一番苦しいのはきっと桔梗。だけど・・・

かごめは自分の前世に嫌われるのは辛かった。

「桔梗・・・一つ訊いてもいい?」

「・・・・・」

桔梗は空を見上げていた。かごめを相手にしていないようだけど、それなら―――・・・

「なんで桔梗はあたしが嫌いなの?」

判りきった事、とかごめは思いながらも訊いた。

自分で勝手に思い込むよりちゃんと桔梗の口から訊きたかった。

「私が犬夜叉を好きだから?私が桔梗の生まれ変わりだから??」

「・・・・・・私は」

「・・・・!!!」

桔梗が自分の問いに答えようと口を開いてくれた。それだけでもかごめは少しの喜びを感じた。

「お前の前世・・・だ」

「うん・・・」

「私は・・・自由になりたかった。」

「え?」

「ただ、気ままに生きたかった。そして幸せな気持ちで逝きたかった。好きな時に散歩し、好きな時に遊び・・・」

「・・・・桔梗」

・・・ムラノモノタチト フレアウコトガ キライダッタワケジャナイ――・・・!

ただ、それも好きな時に・・・、村へと出掛けていたかった。

わがままかも知れない、だがそれが本心だから。

羽を広げて・・・気持ちを軽いままにしたかった。

巫女だから仕方ない。そうやっていつも自分に言い聞かせていた。

だが、自分を押さえつけるのは容易な事じゃなかったから・・・!


「私はお前が少し・・・」

「え・・・?」

「 羨ましかった――――・・・!!! 」

「え!?」

桔梗の口から飛び出た思わぬ言葉にかごめは訊き返してしまった。

「好きな時に現世へ戻り、好きな時に犬夜叉達のところへ戻るお前が・・・」

羨ましかった――・・・!

桔梗はそれだけ言うと向きを変えて去っていった。


しばらくかごめは立ち尽くしたままだった。桔梗の言ったことを頭で考え直し、整理していた。

理解して、涙が出た・・・!桔梗の苦しみと自分への本当の気持ちが判ったから。

あとからあとから溢れ出てくる優しさと苦しみと強くなった気持ち。それは雫となって

かごめの瞳から零れ落ちていた。


かごめは、桔梗のことで悩む事はが少なくなった。

いつか、桔梗が自分に本当の笑顔で笑ってくれる事を願い――・・・!



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