☆月影雫。16歳。母親に捨てられ、父親に育てられた少女。父親は天才格闘家だったらしい。父親が死んでしまっても、その事実は少女を支えてくれたが、なかなか成果が出ず、格闘家は諦めようと思ったとき、雫をずっと探していたらしい父親の古いなじみの桜風明に引き取られる。父の写真を見せられたり、話を聞いていくうちにだんだん桜風家になじんでいき、ただ今幸せ真っ盛り。明もまた、格闘家として道場を設けていて、そこで修行をした結果、普通の人よりは強くなった。やはり才能があったのか・・・?

☆桜風世界。17歳。桜風家の長男。父親の血をひいて、彼もまた格闘家の才能があったらしい。雫に勝つか引き分けかの辺りだ。桜風家1人の男だが、本人はあまり気にしていない。雫に気があるのかはわからない。

☆琴川剛。17歳。雫の許婚。母親が借金を返すために自分の娘を資産家の息子と結婚させようと言う作戦だったのか。剛はもう大分待たされていて、断られても粘る男。桜風一行には嫌われ気味。ほしいものは力ずくで手に入れようとするタイプ。

☆桜風京子。3*歳。(伏字/笑)世界の母親。明が他界したあとは雫の稽古を見守ってくれている。お節介で剛のことを直前まで隠したりするところもあるが、優しくて、雫を本当の娘のようにしたってくれる。

☆弥神梨里。16歳。桜風家のヘルパー。年齢は雫と同じだが、彼女も又都合で居候として住んでいる。雫とは話も合って大の仲良し。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


―プロローグ―

私の名前は月影雫。一見おとなしそうな名前でしょ?
でもね・・・

               1

「 てやぁっ! えい!」
「雫!攻撃に迷いがでてるよ!それじゃあ簡単にやられるからね!」
「はいっ!」
「ラストーーーーーーーっ!」
「こいっ!雫!!」
「うらーーっ!!」

ばしっ! というけたたましい音と共に パンッ と軽く手を打つ音がした。


「う~んvだいぶ良くなったわ、しずく。もっとがんばりましょう!」
「はーーい!」
「さ、朝ごはん、莉里ちゃんと、世界がご飯作ってるはず。ま、世界はあり得ないか・・・!」
「・・・・・(苦笑)」

「雫ちゃん!おはよ~」
この子の名前は弥神莉里。
「んぁ~、よ、雫v稽古どうだ~」
このヘラヘラバカ小僧は桜風世界。変態野郎よ!まったく・・・

「雫ちゃん、これちょっといい?」
「ん?いいよ、莉・・・、~~~~~~きゃーーーーっ!」
「な・・・」



・・・ ボカッ!!!

「尻を触るなーーっ!!」
ゲシゲシゲシ・・・

「あ・・・!雫ちゃん、そんなにやったら世界君死んじゃう・・・」
「え?あぁ。そうね、もうやるなよ!何回目だと思ってるの!」
「う゛ぅ・・・」
「世界~~!さっさと母さんの手伝いしなさい!」
「へいへい・・・」
「ん?(ギロッ)」
「・・・! はいはい。」
「“はい”は一回ーーっ!!」
「~~~っ」
「「あははは」」

♪紹介遅れましたが、私はこの桜風家に居候中。元々体が弱かった父と、借金を抱えた男を父とする母の子供として生まれて、早15年。お父さんは私が7歳の時に他界。お母さんは借金から逃れるために、逃げてしまった。
1人になった私を救ってくれたのは、父が若いころ、天才格闘家だったこと。
お父さんのような強い人を目指し、剣道、空手と色々習ったのだが・・・!
そこに、父の古いなじみの世界のお父さんが私を居候として住まわせてくれた。莉里は同じ年だけどヘルパーとして働いている。けど、世界のお父さん、明おじさんは・・・3年前に永眠・・・。♪

「あぁ、雫。言い忘れてたけど、今日男の子と手合わせしてもらうね。」
「え・・・え!うそ。聞いてないよ、そんなこと・・・!それに、
男のことなんて・・・!力はあっちのほうが強いに決まって・・・」
「あら、最初から諦めるなんて雫らしくないわね~・・・。お父さんの名を汚しちゃうの?」
「・・・!」
「ん?どうなの?雫。」
「う・・・うん、わかった・・・やってみるよ・・・!」

その時あたしは気づいてなかった。おばさんの顔が悪戯っぽく笑ったのを――・・・!

                2 
―昼―
ピンポーンと家のベルが鳴る。
「はぁ~い!」
「どうも、雫さんに会いに来ました、琴川剛です。」
「いらっしゃい、さぁこっちよ。」
「あら?お客さんみたいだよ、雫ちゃん」
「ん?おうおう。お前と手合わせしに来た奴じゃねえの?」
世界は自分の家によそ者の男が入るのがあまり気にくわないようだ。
「・・・・。(不安だなぁ・・・)」

「こちら、有名格闘家の長男・・・」
「琴川剛です、よろしく。」
「お初・・・!桜風世界・・・」
「ちょっと!世界!お客様に対して失礼じゃない!あんただって雫ちゃんを応援してるんでしょ!?雫が今より強くなるために手合わせしにきてくれたのに・・・!」
「私は弥神莉里です、手伝い係です、よろしくおねがいします。」

「ねぇ、おばちゃん。あたしの服どこ?」
剛が階段から降りてきた雫を見て目を輝かせる。
「雫ッ!!」
あっという間に、雫に抱きついた。
「ちょ・・・!やめてよ!なれなれしい!」
雫が拳を打とうとすると、剛はシュッとよけた。
「やだなぁ、なれなれしいなんて・・・!抱きついて何が悪いんだい?僕は君の婚約者なんだよ?おばさんから何も聞いてないの?」
「え゛ぇぇえええええええーーっ!」
世界が仰天の声をあげた。
「な・・・!京子おばさん!どういうこと!?」
「や・・・その、雫はあんまり恋とか興味なさそうで、驚かそうと思ったのよ・・・!で・・・でも!剛君はあんたが赤ちゃんのときから・・・!」
「ふざけないでよ!あたしをなんだと思ってるの!?あたし・・・っ、このままこの人と結婚しなくちゃいけないなら・・・!あたしっ、ここの居候辞める!!」
「え・・・、雫・・・!そんなことされたらっ!」
「京子おばさん!!あたしだって、恋くらいするわよ!相手は自分で選ばせてよ!!おばさんだっておじさんが好きで結婚したんでしょ!!??」
「う・・・」
「おっけー、雫。君が心の準備ができてなかったのはわかったから・・・!
おばさん、僕しばらく此処に居座らせてもらいます・・・」
「「「えええぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」」」
今度は莉里、世界、雫同時だ。
「え・・・わ・・・私は別にかまわないけど・・・!」
「だめだっ!絶対反対だ!」
声を張り上げたのは世界だ。
「じゃ、僕を雫の部屋に案内してください。」
剛は世界など居ないかのように無視をし、タンタンと京子に話しかけた。
「ちょっと!あたしの部屋ですって!?冗談キツイわ!!」
「冗談じゃないよ、本当に雫はかわいいなぁ・・・」
「うっへぇ・・・気持ち悪いなぁ・・・。(本当にどうなっちゃうの?)」

―夜―
「う~~~ん、あいつが来そうで寝れないよ・・・!」
と、そのとき・・・
カチャ・・・、と扉を開ける音がする。
来たかっ、と雫は構えた・・・が
「雫?無事か・・・?」
声の主は世界だ。
「(心配・・・しててくれたの・・・?)」
「雫?」
「せっ、世界・・・?」
「よかった。・・・じゃ、俺は寝るから。なんかあったら叫べよ。すぐ行くからな」
世界が雫の部屋からでようとする。
「・・・っ!ま・・・待って!世界・・・!」
「ん?便所1人じゃ怖ェか?」
「っばか!そんなんじゃなくて・・・!」
「なんだよ」
「一緒に・・・居てよ・・・!」
「はっ・・・、何言ってんだよ・・・/////」
「なんちってね、やっぱヤバイよね、男と女が夜に一緒なんて・・・、ごめんね、呼び止めて。おやすみ。」
雫が布団にもぐろうとしたそのとき・・・

「いいよ・・・」

「えっ!?世界・・・熱は?寝ぼけてない!?」
「冗談でこんなこというか!イイッつってんの!」
「う・・・うん」

雫は世界の部屋へと歩いていった。
ベッドに座ると、心臓が激しくなっているのを雫は隠そうと、なんとなく世界に喋りかけた。
「あの・・・さ、こないだ来た・・・珠璃って子のことさ・・・」
「・・・ん?」
「あの・・・(~~わーーっ!やっぱり言えないよぅ・・・)幼なじみなんだよね!」
「・・・・、ウン。・・・・・雫?」
「えっ!あ、な・・・なぁに?」
「お前、剛のこと・・・!」
「え?」

それから2人は話題を変えて話し出した。
雫は15分程度過ぎると・・・・

パタッ・・・、ベッドに倒れこんで眠ってしまっていた。
「しずく・・・」
世界が呟く。
世界は箪笥から敷布団とタオルを取り出して、ベッドの横に敷いて、眠りについた。

              3
―朝―
「ん・・・ぅ」
「―――――――――――・・・」
「あ、さ?あ!」
雫は昨夜のことを思い出し、思わず声がうわずった。
「せ、かい・・・?」
「・・・ふぁ?あ・・・雫」

と、そのとき・・・

「雫ちゃーん!世界くん!今日は珠璃ちゃんが来る日だよ!」
莉里の声がする。
「・・・・!(ウソ、珠璃が・・・来る?)」
「え?ひゃうふぃーい!珠璃ちゃんが来るんだ~」
「・・・」
雫はムッとする。
「(なによ、馬鹿みたいにはしゃいじゃってさ、デレデレして・・・!)」


「おはよ・・・僕のスウィートハニーv」
「失礼ですけど、私、あなたの“スウィートハニー”になるつもり、これっぽっちもありませんから!さ、莉里、ご飯食べよ。」
「おぅ。つれないところもマタキュートだねv」
「うわ・・・(吐きそ・・・)」

と、そこへ・・・

「こんにちは!いつもお世話になってます。水町珠璃でーす!」
「げ・・・(早いっつーの。珠璃のやつめ~~)」

「はい、珠璃ちゃん、お茶どうぞ。あの・・・雫も・・・いる?」
「・・・うん」
あの騒ぎ以来雫と京子の間の空気は気まずいものになっていた。

「あのね、世界君。聞いてv私格闘大会に出ることになったのよ。」
珠璃が大はしゃぎで世界に語りかける。
「うわっ・・・おめでと!すごいじゃん!」
「・・・・っ」
雫は耐えられなくなって・・・・、居間を飛び出した。
「え?あ、おい!雫!!?」

雫は息を切らしながら走っていた。
「(世界のバカ・・・!あたしが大会に出ることになったときは、あんなに・・・!喜ばなかった。『おめでと』ただ・・・それだけで・・・!)」

居間からは珠璃の声が聞こえる。
「私ね、大会の3日前が誕生日なのよ、これってなんか運命かなぁなんて思っちゃったの。」
「うん、きっとそうだよ!」
世界だ。
「・・・・。(こういうときは稽古が一番いい・・・、嫌な思いもふっ切れる。)」
雫は着替えて道場に行った。
「・・・・、スゥッ・・・」
雫は大きく息を吸う。
そして――・・・
「てやーーーーーぁ!はっ!やぁ!」

ばしっ!ばしっ! と力強い音がする。

・・・とそこへ
「やっぱここか。」
世界だった。
雫は無視して稽古を続ける。
「・・・、雫。お前もっと足を開いた方がいいぞ。肩幅ぐらい・・・」
それでも、雫は無視する。が、世界はなおもアドバイスを言う。
「・・・・!うっさいな!集中できないでしょ!あんたってどうしてそう、
お節介やきなの!?余計なお世話なの!!ほら・・・、なにやってんだかわかんなくなってきちゃった!!」
「俺のせいか!」
雫はじわ・・・、と鼻の奥がつーんとするのを感じ・・・
「もう、いい!放っといて!」
道場を出ようと走るが・・・
がしっ と世界に肩を掴まれる。
「痛いな!放してよ!あんたは、珠璃ちゃんのことでも心配してなさい!彼女が負けないように、怪我しないように!勝つように!!」
「心配・・・?」

雫は聞きたくない、と耳をふさいで道場を飛び出した。


             4 
―昼―
「はぁ・・・」
雫は商店街のなかで大きくため息をついた。
「あたし・・・なにがしたかったんだろ、何が言いたかったんだろ。」
独り言をぶつぶつと言って、とぼとぼ歩く雫。

キュウウン、クーン。とかわいらしい声が雫の足元から聞こえる。
下を見た雫が見たものは、可愛らしい子犬だった。雑種犬のようで、見た事のない種類だ。
「あれ?君迷子?ちょっと首見せて」
雫が子犬の小さな首を覗く。
「あら?首輪がない。捨て犬なの?」
多分そうだろう。野良犬にしては人懐っこ過ぎるし、ちょっと前まではちゃんと毛を整理してもらっていた感じが残っている。
「すてられちゃったのね・・・、よし!いいわ!あたしが飼ってあげる!」
京子おばさんに聞かなきゃ、と雫は家へと走っていった。

「お願い!おばさん!この子飼わせて!」
「・・・・!可愛い犬ね、どこで?」
「う・・・商店街の中で。捨て犬っぽいんだよ・・・」
「そう、いいわv命なんだからちゃんと責任とってね。」
「はーーいっv」
「・・・・クス。よかった、雫がまた私にそんな風に笑いかけてくれて。この前はごめんね。雫の気持ち・・・考えてなかった。さっき剛君に言ったの。『剛くん、悪いんだけど、雫の婚約は取り消させてもらいます、あの子には本当の親が近くにいないけど・・・、雫が生きている限り、あの子の責任と保護者権は私が・・・あずかってる。だから、15年も待たせて悪かったんだけど、婚約はなしにさせてもらう。当然・・・悪いけど・・・この家からも出て行ってもらうわ』ってね・・・」
世界はこれを聞いてピクリ、と耳を澄ませ、うれしそうにフッと笑った。
「・・・・わぁ!おばさん!ありがと!!大好き!!」
「あらら・・・」
「あの、珠璃ちゃんは・・・?」
「あ、珠璃ちゃんなら今トイレに行ってるわ。ご両親が夜まで帰らないそうだから、珠璃ちゃんはいいって言ったんだけど、夕飯も一緒にすることにして、9時30分過ぎくらいに珠璃ちゃんのご両親がお迎えに来ることになったのよ。」
「そ・・・そうですか。」
雫はこれから丸一日一緒に珠璃と過ごすことになると考えると、腹が立ってしょうがなかった。珠璃は世界が好きなのが丸見えで、世界にベッタリだし、世界も世界で嫌がってるわけじゃなく逆に喜んでるかのごとく・・・顔をほんのり赤く染め、でれでれしている。

「そうだ、この子の名前決めなきゃ・・・」
雫は犬を抱きしめて、自分の部屋に戻った。

           5

―夕方―
「あのね、おばさん!あたし、この子のこと、チイって呼ぶ。名前はチイよ!」
「そう、可愛がってあげなさいね」
と、そこへ・・・
「あぁ、楽しかったね。夕方の散歩は最高よね。リアナ。」
珠璃が帰ってきた。しかし、その腕には可愛らしいチワワがいる。
珠璃がチイに気づき・・・
「あれ?雫ちゃんって・・・犬飼ってたっけ?」
「え・・・あぁ、拾ったのよ。捨て犬・・・捨て犬だったの!」
「そう。」
珠璃は捨て犬なんて小汚い、とでも言うかのような口調だ。
「ね~え、世界くぅんv稽古、付き合ってくれないかしら?」
「えっ・・・・!!?」
雫は思わず声が出た。
すると、世界が・・・
「雫も一緒にやろうぜ」
「うん・・・」
雫は内心嬉しかった。いつも、珠璃に声をかけられるとデヘデヘの世界が、自分にも気を使って、声をかけてくれたのだから・・・!
「えぇ~・・・、雫ちゃんも一緒?」
「今日だけだよ。ごめんね、珠璃ちゃん」
世界が優しく言う。
珠璃は雫をにらみつけて、ツンッと鼻を上に上げた。

珠璃はお嬢せいか、グサッと来る言葉を雫によく発する。

2人は稽古用の服に着替えて、道場に入った。
雫の格闘用の服はチャイナ服のようで丈がかなり短いのだが、なぜか下着は見えない。(汗)
珠璃の服も雫と似たようなものだったが、丈は明らかに雫のほうが短いものだ。
しかーし、雫と珠璃をならべると、3サイズは雫の勝ちである。
珠璃はそのことをきにしているようで
「(ザマーミロ!体はうちの勝ちじゃい!)」
雫は思わず口走ってしまいそうだった。
その日の稽古は楽しかった。相変わらず珠璃が
「世界く~ん、この技ッてこんな感じでいいのかなぁv」
と、ブリブリっ子だったが、世界はそんななかで、雫に対する態度は珠璃の時との態度とはだいぶ違ったが、アドバイスをくれた。

―夜―
「いただきます」
夕飯が始まる。世界はがつがつ食べ始め、莉里は相変わらず、お行儀良く静かに食べる。雫は・・・食が進まない。
「この野菜炒めね、珠璃ちゃんが作ってくれたのよ。おばさん助かっちゃった。ありがとね、珠璃ちゃん。」
「いえ・・・とんでもない。」
しかし、珠璃は得意そうに雫を見ながら言う。
雫は珠璃の目が、『これも花嫁修業ですから』なんていっている気がしてしまう。

「あたし、お風呂入る・・・」
雫がいうと、京子が・・・
「あら、雫。全然食べてないじゃない、どこか具合悪いの?食欲ない?夏バテ?」
「う~ん、わかんないけど・・・。ごちそうさま・・・」

雫は服を脱いで、風呂に入った。
湯の心地よさが今日の嫌なことと疲れたことを全て癒してくれた。
と、そこへ・・・
「 クゥ~ン、キュウゥゥ 」
と、愛らしい声が聞こえる。
「チイ・・・?!」
ドアを開けるとチイがドアを開けようとしたのか、右前足を上げて、カリカリかこうとしている体勢で止まっていた。
「どうした?おいで・・・」
チイは
「キャンキャンv」
と喜びの声で雫に抱きついた。

雫は再び湯に使った。
と、今度は・・・

ガラッ、とドアがあいた。
そこに立っていたのは――――――――・・・!!


「きゃあぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっ」
雫が叫ぶ。
「いやあああああああぁぁぁぁーーーーーっ」
珠璃だった。

どうも、誰もいないものだと思い込んだらしい。

「どうした!?」
世界と京子おばさんがびっくりして飛んできた。

「やだーー!変態世界!来んなーーっ!」
世界に向かって、雫が石鹸、シャンプー、リンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔石鹸、タオル、終いには桶を投げる。

さすが格闘家の息子だけあって、石鹸からタオルはよけていたのだが、一番当たると痛い桶は見事世界の顔面にあたり・・・
「いて・・・ ぶっ! 」
今度は珠璃のシャワー攻撃だ。
「いや~~ん、世界君のエッチ!来ないで~!」
とは言うものの、やはり世界の前だとぶりっ子全開の珠璃である。
「うわ!珠璃ちゃ・・・よせっ・・・て!うわっ!」
世界は京子に引っ張られ、ドアから見えなくなった。
「もう、2人とも・・・ 落ち着きなさーーーーいっ!」
「はぁ・・・・、見られたかと思っちゃったんだもん。ごめんなさい。」
「私も・・・、まさか、この雫ちゃんが、こんな、こぎた・・・・可愛いワンちゃんとお風呂に使ってたなんて・・・わかんなかったんですゥ・・・」
「(ケッ、ぶりっ子め!)」

            6 


その夜はてんやわんやでハプニングがあったものの・・・
「じゃ、ありがとうございました。」
珠璃の両親がやってきて、珠璃をつれて帰ろうとしていた。
と、世界が・・・
「あのさ・・・珠璃ちゃん・・・!大会には応援に行くけど、その日まで会えないと思うんだ、多分・・・。だからさ・・・」
世界が取り出したものは、ピンバッジだった。
「わぁ・・・キレイ!」
「ちょっと早いけど・・・お誕生日プレゼント・・・///」
「世界くん!ありがとう!とっても嬉しいよ!」
「そ?よ・・・よかった」
「これ大会につけていくわ」
「うん!そうして!それ、父さんが戦うときとか、稽古の時、必ずつけてたんだ!忘れたときは怪我したり、負けたりしちゃったんだって!格闘のお守りなんだよ!それ着けて、頑張って勝てよ!珠璃ちゃん。」
「うん!ありがとう。世界君は毎年素敵なものをお誕生日にプレゼントしてくれて・・・v」
珠璃が雫を見ながら言った。
「去年は・・・マグカップよね。カップの底に、『ずっと仲良くしようね』って・・・・書いてあったっけv」
雫は、珠璃の目を見て、『ずっと仲良くしようね、じゃなくて恋人系の言葉が良かったのに』と言っている気がした。

「一昨年は写真立て!本当に可愛くて・・・!今までもらったの、全部大切に使ってるわ!でも、今年のが一番嬉しいかも・・・v」
「そ?よかった!」
「じゃ、さよなら」

満足気に珠璃は帰っていった・・・。

みんな自分の部屋で布団に入る・・・。

「ふぇっ・・・チイィィィ~~~・・・・っ!」
「 キュ~ン? 」
チイがどうしたの?と雫の顔を覗いていた。
「えっ・・・えっ、だって聞いてよ・・・」
雫はぽろぽろ流れる涙をふきもしないでチイに語りかける。
「だって、あたし、こないだ莉里と話してたんだよ。お誕生日いつかって・・・!世界はそれをそばで聞いてたのに・・・!お誕生日の日、なんにもくれなかった、ヒック・・・、『おめでとう』ぐらい言ったっていいのに・・・!なんの一言も・・・なくて・・・!」
「 くぅぅぅん・・・ 」
「で・・・でも、珠璃には・・・・毎年プレゼントあげてる・・・っひ、んだよ・・・!それも、みんな可愛いの!それって・・・それってさぁ・・・!」
「 くるぅぅん 」
チイが慰めるように鳴いた。
「わぁぁぁーーーーーーーん!」
雫は泣いた。泣いて泣いて・・・

「あぁすぅっきり!話し聞いてくれてありがと!チイ!さ・・・寝よ」

翌朝雫は起きて・・・
「世界は珠璃が好きに決まってる。」
と、一言呟いた。
――――次の瞬間
「雫。入るよ。」
世界だ。
「あの・・・さ、これ・・・!」
「あ・・・それ、切れると願いが叶うっていう・・・!」
「“ミサンガ”って言うんだよ!切れると願いが叶うそれだ。」
「わぁ・・・!で?見せびらかしに来ただけ?」
「ばか!ちげーよ!お前にやる。」
「え?どうして急に・・・///」
雫は自分の全身が・・・熱くなって、赤くなって、心臓がドキドキと早鐘のようになっているのを感じた。
「まぁ、いいじゃん!ほら・・・」
世界が自分の腕を見せる。
「あ・・・これと一緒だ」
「本当は・・・さ、お前の誕生日の前の夜に作ったんだけど・・・
なんか・・・渡すの、照れくさくてさ。」
「わぁ!ありがと!」
「よかったら、今つけてくれよ。」
「うん。・・・できない・・・(泣)」
「ヘタクソだな、お前って本当に不器用だな」
「なによ!ばーか!」
「へへ!ほら・・・」
「サンキュ☆早く切れるといいな」
「何お願いすんの?」
「秘密だよv今すぐ切っちゃおっかなぁ」
「そんなことしたって、願いは叶わないぞ。」
「わかってるって☆(でも、これって世界とおそろい・・・!///)」
雫は、階段を降りていった。

わかんなかった・・・、これからこんな風になっちゃうなんて・・・!

「やぁ、雫!おはよ」
「!!?(なんで!?どうして・・・ 剛 がいるの?)」
「ごめんね・・・雫。剛君とあんたが勝負して・・・、剛君が勝ったら・・・また、あんたの婚約者になるって・・・!」
「え?なんで!」
スッ、と剛が雫に近づく。
「うちはそれなりの資産家でね、うちのグループの力で彼女には悪いんだけど、早朝に彼女を人質として・・・ね♪勝負を受けないと彼女は・・・僕の何十人といる愛人の中で一番・・・。どうなるかわからない。殺しはしないけどね。」
邪悪な笑いを浮かべ、雫に内容を説明する剛は・・・なんだか・・・!
「“彼女”って・・・!――・・・っハッ、まさか・・・っ」
今朝から莉里の姿が見当たらない。
「そ、弥神莉里ちゃんを君を手に入れる為に・・・ね、あの子はいつでもお手伝いだね・・・」
「なんですって!!?」
雫は激怒する・・・が
ガッ と雫の頭の真上スレスレに剛は拳を打ち込んだ。
ビクッと雫から怒りの表情が消え、恐怖を感じている表情に変わった。
「(やだ・・・!怖い・・・!あたし・・・負けちゃうよ・・・!)」
そこに世界がやってきた。
ハッ、と雫は世界にもらったミサンガを見る。
「(そ・・・か、そーだったんだ!だから・・・私にミサンガを世界は・・・!)」
「雫・・・」
だっ、と雫は世界のほうに走る。
「ねぇ!これ、切ってよ!ねぇ!世界!!切ったら・・・切ったら願いが叶うんでしょ!?ねぇ!じゃあこれ切ってよ!お願い!今・・・今切って!怖いよ!世界!!助けて!ミサンガ 切ってよーーーーーーーーーっ!! 」
雫は大粒の涙をボロボロこぼしながら、世界に訴えた。
「わかった・・・」
世界は自力でミサンガを切ろうとする。だか、ミサンガはなかなか切れない。世界は今度は、歯で引きちぎろうとする。だが、舌を噛み、首を横に振って、世界は雫のミサンガから手を離した。

「さて、雫。どうする?僕と勝負するか・・・それとも莉里ちゃんを・・・」
「ぅわぁあああああぁぁーーーーっ!」
雫はその場に座り込んでしまった。

「本当に雫は女の子で可愛いね、よし!お前ら!もう少し待てよ・・・!雫の心の準備ができるまでな・・・」
そのとき剛の顔がニンマリとしたのは言うまでもない。


==================================
「強くなれ!格闘娘☆月影雫」第一部、終わり・・・・ 

      「強くなれ!格闘娘☆月影雫」第二部に 続く

第二部へ


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪管理人の呟き♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

格闘娘どうでしたかぁ?
このお話の始まりは、主人公の名前からでした。
学校の授業のときにボッケ~としてるときに小説で「雫」という名前の少女を
書きたいな~、とか思って、今までにないジャンルを考えたら格闘系に。
それで、書いてくとどんどん書けるモンですね~、第2部に突入してしまいました。
ミサンガと言う設定はちょっと前に流行り、それを今も切れないままに
身に付けている友達から思いつきました。

私はなぜかキャラの名前をありえないほどに珍しくしてしますという
クセ(爆)がありませう。(笑

第二部も楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからも雫たちをよろしく~!

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: