埋もれたもの


崩れた家の中に閉じ込められた物を掘り出しに行って来ました。
裏の窓から家の中に入って、服を取るためタンスの前に、当然引き出しも、
扉も開かない、こんなこともあろうかと道具を持っていったので
扉を割ったり、・・タンスをバラバラにしながら服を取りだし・・
ハイ家内の嫁入り道具ですが・・仕方なく・・・
掘り出したかったのは、服、アルバム、息子のお気に入りの緑のコート、
子供が生まれた時に彼(勇)当てに書いた手紙、  
 でも服と一部のアルバムだけ、
それと74年75年物のドイツワインの「アウスレーゼ」
新婚旅行で買ったヘネシーVSOPをしっかりもって帰った。
 次に掘りだしに行ったのは、得意先の人が手伝ってくれると言うので
チェーンソーと共につぶれた家で集合。
得意先の人は、震災直後から長田で救助(掘り出し)をされていたとの事、焼け跡には、骨のかけらも無いくらい全てが灰になってしまっていたと語ってくれた。
言葉に出来ないし、作業としてこなさないとやってられない、
何故なら「悲惨過ぎた」そう言って話してくれました。
 この日チェーンソーで瓦礫を切っていったり、バールで突き破ったりして
思いでのビデオテープ、アルバム、勇への手紙など沢山の無くしたくない、
思い出を取り出す事が出来ました。本当に感謝感謝です。
 お昼は、母親が心をこめて作ったお弁当を一緒に食べました。卵焼き、牛肉の佃煮、お握り、今でもその時の味を思い出します。
 何物にも替える事が出来ない、思いでの品々、それを取り出す事の為、
私は会社を1日休みました。
その事に、上司、先輩は、良い顔をしてくれませんでした。
「あーっ当事者じゃないから・・」その時わかりました。
沢山の無くしたものが在って、でも無くしたくないものをまた、
取り戻せるチャンス、お金を払ってでも手に入れたい、
そんな気持ちもわかってもらえなかった、とっても辛かった、哀しかった、
それまでもそれからも、人一倍仕事をしていたつもりだった、
文句も言ったことは、無かった。
でも、それから少しづつ離れていった心がそこにあったように思います。
 価値観の違いが、はっきりと感じる事が出来た事件でした。

続く



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