としきぴ堂

としきぴ堂

連鎖する憂鬱


「親犯人説」には、統計学的な根拠もあるようで、いちがいにでたらめではないと思います。ただ、「親犯人説」には、困った側面があります。親が犯人であれば、憂鬱な人当人は無実となり、親こそが悔い改めるべき存在となってしまうからです。そうなると肝心の治療が大きく後退しかねません。親が謝れば、憂鬱がはれるとはかぎらないからです。
例として適当ではないかもしれませんが、なんらかの犯罪被害に遭って、犯人が刑務所にはいれば気がはれるでしょうか。謝罪の手紙をもらえば、心の傷は治るのでしょうか。被害者が「時がたったら」というのをテレビや新聞で見かけすことがありますね。時が経過してなお、被害にしがみついていたら、周囲はそれを、被害そのものとは別個の事情だと受け止めるでしょう。

被害者=いい人という独善に陥った憂鬱な人ぐらい、人を憂鬱にさせる存在はないかもしれません。親のしうちが虐待の連鎖ならば、人を憂鬱にさせるこの人のしうちは憂鬱の連鎖といえるかもしれません。

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