ととにっき

ととにっき

病院の売店。


うちの病院の売店は、ガムや飴を陳列してある隣に南京錠がおいてある。

 病院の売店というと、母親が入院していた病院のことを思い出します。
私の母親は10年近く闘病生活を送っていました。当然私もよくお見舞い
最終的には泊り込んでいました。

 母親はずっと転院することなく同じ病院がかかりつけだったのですが、
その病院の一階、待合のソファの端のほうに売店はありました。
ケーキ屋さんのようなショーケース(だったような気がする)の中に
Tシャツとかが陳列してあったり、小さな私には興味のなさそうなお菓子とか
が並んでいました。小学生の頃、母親がくすんだピンク色の半袖の
トレーナ地のTシャツを買ったのをよく覚えています。

 お見舞いに行くと、だいたいこの売店に行って、
ニッキ飴を買っていました。というか買ってきてーとおつかいに
いかされていました。

少し白髪混じりのおじさん(当時の私にはおじさんに見えた)が一人
店にいて、特に愛想もなく接客していました。
ジュースも売っているんだけど、なぜか近くにヤクルトの自販機があったり、
ほかの会社の自販機があったり。不思議な空間。
小学生だった私はそのおじさんを観察しているのは楽しくて
じーっと見ていた記憶があります。

 ある日お見舞いに行ったら、売店は閉まっていました。
お休みなのかなと思っていました。次の週、お見舞いに行ったとき、
売店のスペースがなくなっていました。
売店なくなったんだって と。小さいながらにショックで、
どうしてー?と何回も親に尋ねました。買う人がいなくなってきたから~。
そうなん?私いつもニッキ飴買ってたのに…。

 あのおじさんは売店がなくなった次の日からどこで何をしているんだろう。
たまに思い出します。多分もうおじいさんだよな…。
当たり前と思っていたものがなくなった瞬間は、自分に実感はなくて、
時間がたってからふっと妙に寂しくなったり。

 高校生になって、母の入院が頻繁になってから、
病院に出入りすることが増えた時、夜、待合の自動販売機で飲み物を
よく買っていました。隣の売店がかつてあったスペースを見ながら。
広いと思っていた売店のスペースは、小規模なもので。
誰も、そこに売店があったなんて思わないほどのスペース。

小さい頃の思い出というのは、
自分の頭の中で大きくなっているものなんですね。

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