妖精のいたずら

妖精のいたずら

つれづれ草・・・第十七章・・・。


 なんと言うことはなかった相手だったのに・・・何故か・・・
 あの日以来気になってしょうがない。

  そう・・。 小夜子が旅立った日・・。

 言い知れぬ寂しさに行きつけの店へ誘っただけなのに・・・。
 飲んで・・愚痴って・・八つ当たり・・・と、思う。

 そんな俺を、涙ながらに支えていた幸子・・・。
 いつの間にか抱きしめて、そして、お決まりのコース・・・。

 目覚めた朝・・・。
 コーヒーの香りの中、息子のうれしそうな声に起こされて、そこに、まぶしそうな「幸子」がいる。

  「記憶は残っている・・・でも・・・認めたくない・・・」
 そんな葛藤など気付かない二人の中で、黙ってコーヒーを飲んでいた。

 「おはよう・・親父・・また飲みすぎか?」
  「いい加減にしろよ・・・」「どうなっても知らないぜ」

  「うるさい!!!」「大きなお世話だ!!」

 「おはようございます」まぶしい笑顔が迎えている
 「少し飲みすぎましたね」少しはれた眼がどうしようもないほど痛く突き刺さる・・。
 何も言わず・何も答えず・・・ただ苦いコーヒーを飲み干していく。

 さえない頭で考えてみる・・・。
 あれから、この部屋につれてきたのだろうか?
 そこで抱いたのだろうか?
 子供達には気付かれなかったのだろうか?
 どんな風にお前を抱いたのだろうか?
     涙を流しながら抱かれるお前をどこかで覚えている!
 それでもお前は俺に尽くしてくれたのだろうか?

 もやの中でうごめくような記憶の中でお前の顔だけが鮮明に浮かんでくる
 あの涙は何だったのだろう・・・。

 あの日以来何故か
  俺はギクシャクと・・・お前はいつもにもましてにこやかに・・・
  変わらず・・・そして何処か変わって・・・
  いつもの生活が続いていた。

 手ごわいS社の新製品発表のプレゼンに俺はどうしたことか「幸子」を指名してしまった。
 周りの危惧をよそに何故か必死で俺の持ちうるすべてを「幸子」に教え込んで言ったが・・・。

  今日のこの日・・・。
 子供の発表会のよう・・落ち着けない俺がいた。

  そんな俺を見ながら「幸子」は堂々とこなしていく。
 まるで映画の中のヒロインのように時にはかなく・ときに輝きすべての時間を自分の物にしてしまった。

  そしてエンデイング・・・。

 カーテンコールにもにたこの満足感は何だろう・・?
 そして・・・おれに向けた あの笑顔は 何だろう・・・?

  小夜子のときに感じたあの感覚・・・。
  また、女と言う生き物がわからなくなりそうだ!







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