TRICK PARTY

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during night 7



そこはビルの屋上らしい。

しかも28階!

で、あたしたちは死にそうになりながら階段を上っていた。

「な、なんでこんなこと……」

「時間が止まってるからエレベーターが動かねえんだよ」

「に……したって……これは………キツい」

「急げ!時間がない!」

「時間……って……なによ!」

「いいからいいから!」

「うぅ……死ぬ……」

ナストはあたしの手をひっぱって階段を駆け上がっている。

25………26………27……

そしてついに

ばーん!

……という屋上扉を開く音はしない。ナストいわく

「扉閉まってたら外出れないだろーがよ」

崩れるかのごとく屋上の床に倒れて、あたしは肩で息をしていた。

いや、たぶん肩どころじゃなかっただろうけど

「まー……都合…よく……開いてた……もんね」

「時間を止める前にオレが開けておいたんだ」

ナストは屋上の柵まで行くと、ぜーは-しているあたしを指で呼んだ。

あたしは壊れかけの体に鞭打ち、震える足に活をいれてナストの所まで歩く。

「ほら」

あたしは柵越しに、ナストの指差す方向を見た。

「うわぁ……」

あたしは思わず声を漏らした。

それぐらいキレイだった。

止まった夜景。

めったに見ることのできない景色だった。

全てが止まってる。

つい前までそのことが怖くてたまらなかったのに……。

「ま、お楽しみはまだこれからだけどな」

ナストは唯一動いたままの自分の腕時計を眺めながらカウントした。

「21、20……10……」

「何のカウント?」

ナストは黙ってカウントを続ける。

「5、4、3……」

なんかどっかで見た光景だな……

えーっと、どこだっけ?

「2、1……」

ナストは指であたしの目線を外に向けさせた。

その瞬間

「0!」

あたしはまた息を呑んだ。

全てが動き出した。

いままで止まっていたもの、全て。

車、ネオン、タワー

全ての光が動いた。

「どう?」

「すっごい……キレイ……」

「だろ?」

ナストは得意げに胸をそらした。

「オレだけの穴場スポットだからな。他の人を呼んだのはお前が初めてだ」

「ホント?ありがとっ!」

めったに見れない光景。

こんなところに呼んでくれたナストの気持ちが嬉しかった。

「ホント、ありがとね」

さっきとニュアンスを変えて言う。

「いいっていいって。減るもんじゃないし」

しばらくあたしは固まってその景色を見ていた。

そんなあたしを見て、ナストは告げる。

「じゃ、オレもう帰るわ」

「え?帰る?」

「そ。そろそろ帰らしてもらうぜ」

「えっと……どこに?」

「うーん、“銀世界”かな?」

「ぎんせかい?」

「うん、オレらはそこでリセットされる」

「何を言ってるの……」

「ま、お前とはここでお別れだ」

ナストはあたしの頭をぽんぽんとたたきながら笑った。

その時の微笑みが哀しげに見えたのはあたしの気のせいなのかな?

ナストはあたしとの別れを、少しでも哀しく思ってくれたかな?

「じゃあな」

ナストは屋上の扉に向かって歩き出した。

もう開閉するようになった扉に手をかける。

「ちょっと待って!」

あたしは引きとめずにはいられなかった。

こんなの、急すぎるよ。

でも、ナストを引き止めるのは無理だとわかっていた。

ナストはあたしの言葉に立ち止まったけど、顔をこっちに向けていなかったから。

あたしは迷った。

言っていいのかな……

あたしはこの答えを聞きたいのかな……

もしかしたら、聞かないほうがいいのかもしれない。

でも、気より先に言葉が出ていた。

「来年も……会えるよね?」

目線を上げても、ナストはこっちを向いていない。

屋上に冬の冷たい風が吹き抜ける。

その風に乗って、かろうじて聞こえる声が聞こえてきた。

「オレはその時いるかな……」

「えっ?」

ナストは頭を振って明るい声で言った。

「ま、来年お前が動けるかわかんねんからな」

「そうなの……?」

「そうなんだよ。コレが最後の別れだと思ったほうがいい」

ナストの後姿から白い息が見える。

「じゃあな……」

最後に小さく付け加えるように聞こえたのは、あたしの聞き違いですか?

「……愛美」

今度はあたしの止める間まもなく、ナストは鉄扉の奥へと消えた。

一度も振り返ることなく。

あたしは追いかけなかった。

きっと追いかけても、もういない……

そう思ったから。



あたしはナストのくれた景色を眺めた。

動き続ける夜景。

止まることない景色。

そんな景色が、あたしに安心をくれる。

「来年もまた、会えるよね……」

あたしは夜景に向かって、そっとつぶやいた。


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