TRICK PARTY

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distance night 1



そして、それを恨んでもどうにもならない。

古人は言いました。

『どうにもならない事を恨むのは愚者である』と。




「……って話があるよ?咲希」

「ちょっ!ウチがバカって言ってる?間接的に」

「いや……そんなコトは……」

「言ってるでしょっ!『友納』にはわかんないのよっ!この気持ちはーっ!」

「ねえ?何の話してんの?」

机をはさんで向かい合ってるあたしと咲希に、横から結衣が話しかけてきた。

「いや、咲希殿が自分の苗字を呪っていらっしゃるようで……」

「苗字?『相川』だよね?」

「そうなのよ!あ・い・か・わ!」

「何?相川じゃダメな事でもあるの?」

「ダメも何も!あんたこの苗字の宿命を知らないでしょ!」

「……宿命?」

「そうよ!この苗字を背負ってしまった者の宿命!」

さっぱりわかんないという表情で、結衣があたしの方を向いた。

仕方なくあたしが答えてあげる。

「出席番号が常に1番」

「そう!それよ!」

またもさっぱりわかんないと表情になって、結衣が肩をすくめた。

「それが?」

「今日の出来事を思い返してよ!」

「ゴメン。あたし始業式以降夢の中にいたから、記憶がないんだよね」

「どんだけ寝てたのよ……」

「あの担任!日直と掃除が前回どこまでいったのか忘れたから、出席番号のはじめからやるってのよ!」

咲希の叫びに反して、結衣が吹き出した。

「あっはは!それだけ?」

「それだけって……。出席番号1番は日直やら体育の実技テストやら、絶対的に不利なのよっ!」

「そーんなこと言ったら出席番号後ろの人だって苦悩があるのよ?あたしがそうだけど」

「例えば?」

「ほら、身体測定とか。あれ出席番号の若い方からやってって、終わった人から帰っていい~みたいな感じじゃん?出席番号45番なんか辛いわよ~。友達帰っちゃうし」

「え~!それだけ~?」

「それだけって……。あんたもおんなじ様なもんでしょ!」

「あの~。お二人がた……?」

「1番はいつだって席が最前列になるのよ!先生にもピンポイントで当てられるし!」

「あのぉ……?」

「45番なんて前から配られた自分のテストの点数全員に見られるのよ?」

「あ~のぉ~……」

「何回先生にパシリされたと思ってるのよ!」

「ぉ~ぃ……?」

「何回微妙に傷ついたプリントが回ってきてると思ってるのよ!」

「そんなこと知ったこっちゃないわよ!1番っていうのはね……」

あたしはため息をついた。


『どうにもならないことを……以下略』



と、いうわけで。

冬休みを終えた新学期、高校2年生の第3学期の始まりの日である。

始業式が終わり、あたしたちは担任を待っている。

「てかさ~、ウチらもうすぐ高3なんだよね……」

うっ、なんでそんな暗い話題を……。

「はあ~、来年は受験かぁ……。受験シーズンじゃ彼氏も作れないよ……」

そっちかよ!

「あれ?咲希は冬休みは収穫なし?」

「あったりまえでしょ~。合コンの誘いもなかったし」

「愛美は?」

「え?えーっとぉ……」

あたしの頭に一瞬、一人の少年が映った。

黒装束の、優しい笑顔を持つ少年……。

違う違う!何を考えてんのよ!あたし!

「うん、ないない!ほとんどずっと友達と遊んでたしね~。出会いのチャンスゼロ」

「マジで~。つまんないの」

「いいよね~、彼氏持ち様は~」

「まあねん♪」

咲希や結衣に改めて思い出されてしまった。

そう、あたしはずっと忘れていない。今となっては「去年」の冬休みのクリスマスの出来事を。

あの黒装束の少年を。


いや、むしろ忘れるわけがなかった。

あたしの部屋には彼の忘れ物があったから。

窓辺に未だおいてある、黒の帽子と手袋。

窓辺に移動させたのは、もしかしたら空から彼が見つけてくれるかもしれないという一少女としてのオトメ的発想だったりする。

いつ彼が来てもいいように、ずっとそこに置いてあった。


そして、訪れた。

再会の時が。



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