TRICK PARTY

TRICK PARTY

distance night 2



あたしはその日の夜、どこぞやのパンダのごとく机にへたっていた。

理由はあたしの目の前の紙切れたちにある。

学生の冬休みおとも。

それはプラスではなく、マイナスのもの。

多くの学生はコレで冬休みの後半頭を悩ませる。

ああ、まだるっこしいかな?

まあ冬休みの宿題ってわけなんだけど。

普通なら終わってるのが当たり前なんだが、例によって例のごとく、その冬期休暇課題処理プランはあたしの冬休みという枠の中に収まっていなかった。

「あー!もう!今日はやめた!しゅーちゅーできないっ!」

あたしはシャーペンを放りだすと、ベッドに飛び込んだ。

集中できない日は寝てしまったほうがいい。そうだ、そうに決まってる。

あたしは電気を消すと、目を閉じた。




「こーらぁー!とものぉー!」

「へぁ?」

振り返ると、ものすごい形相で担任の小川が走ってきていた。

「お前まだ宿題終わってないのかぁ~っ!許さん~っ!」

「え?ええぇ?」

なんだか全くわかんないけど、とりあえず逃げることにした。あの形相では捕まったときどうなるか想像したくない。

と、なぜか小川は一つのスイッチを手にしていた。

「よーし決めた!今からこの校舎を爆破する!」

「はぁ!?」

が、それはなぜかマジに見えた。

「ちょっと!冗談じゃないって!」

とりあえず逃げる。長い廊下を走りに走った。小川は不気味に笑って、ボタンを襲うとする。

と、前に光が見えてきた。小川の指がボタンに触れる。

「わーっ!」

決死のダイブ!

後ろで校舎が思いっきり爆破した。

「痛った~」

打ちつけた腕をかばいつつ、あたしは歩き出した。

「どーなってんのよ。全く……」

すると、今度は目の前に片手に白い鳩を連れた、マジシャン風の男が現れた。

「やあ、どうも。ちょっと探し物をしていてね。これを知らないかい?」

その男がひらりとハンカチを振ると、そこに一枚の写真が現れた。

黒い帽子と、黒い手袋。

「これ……?」

男はニッコリと笑った。

「ご存知ですか?どこにあるのでしょう?」

「え……?いやいや!知りませんよ、こんなの」

「あっはは。ご冗談を。あなたはよくご存知のはずです。どこにあるのですか?」

「だから知りませんってば!」

「どこにあるのでしょう?どこにあるですか?どこにある?どこに……」

その声が反響するように大きくなる。

どこにある。どこにある。どこにある……




「……こにあル?どこにあるんでスカ?帽子!手袋!」

頭だけが半起きした状態で、誰かの声を聞いた。誰かがあたしの部屋で叫んでる。

帽子……?手袋……?

まだ眠っているあたしの頭が無意識にイコール回路を構築していく。

帽子=あたしの部屋にある黒いサンタ帽子。

手袋=あたしの部屋にある黒い手袋

それらの持ち主=今あたしに話しかけている人

つまり今あたしの部屋にいる人=……

「ナスト!?」

あたしは思いっきり跳ね起きた。

ナスト?ナストなの?

あたしは部屋の全方向を見渡した。

前!右!左!上!下……はあたしの布団だからあるわけないか。

が、どこにもだれも見当たらない。

おかしいなあ……?

「ちょっト~。苦しいんですケドォ?」

「うわあぁっ!!」

ちょうど見つめていた布団、つまり“下”から声がして、再びあたしは跳ね上がった。

ん?下?

何回も言う通り、下はあたしの布団であり、人が入るスペースはない……はずよね?

「出してくださ~イ……」

「ひゃうっ!」

たしかに自分の布団の中から声がした。

恐る恐る掛け布団をめくってみる。

と、同時にため息のような声が聞こえた。

「うヘ~。苦しかッタ~」

そこには、布製の人形がいた。あたしの太ももにしがみつくようにしている。 たしかに声の持ち主それだった。

人形が、しゃべってる?

……って!!

「どこに触ってんのよ!この変態っ!」

あたしは人形を引っつかんで投げ捨てた。

「うぁ~れェ~!」

とすん。

変な悲鳴をあげながら、人形は壁にぶち当たった。

「ちょット!何するんでスカ!」

「ちょっとじゃないわよ!勝手に人の布団にもぐりこんどいて!エッチ!バカ!変態!」

人形は頭をさすりながらゆっくりと立ち上がった。

「イテテ……。あなたがちっとも起きないからでショウ!布団の上から何度もたたいタノニ、目を開けないからでショウ!それじゃあ布団の中で直接起こすしかないでショウ!」

「勝手に入るなっ!」

「全ク……。これだから人間というのハ……。特に女というものハ……」

人形なにやらぶつぶつ愚痴っている。

何なのよ……。ヘンな夢を見たと思ったら今度はヘンな人形かい。

「あ~、もしかしてまだ夢の中?」

あたしは頭を振った。

と、悪態をついていた人形が顔をあげた。

「いエ。これは夢ではありまセンヨ。相当変な夢を見てたみたいですけど、これはしっかり現実デス」

この人形いつからいたのよ……。

「リアル世界で人形がしゃべるってありえたっけ?」

「いエ。あなたたちの世界ではありえないでショウ。ですが、残念ながら私はあなたたちの世界とはちょっと違った世界の住人でスノデ」

あ~、とうとうあたしおかしくなっちゃったかなあ?

右手で頭のこめかみをおさえながら聞いた。

「で、他の世界とやらから来たお人形さんは何をしにきたわけ?」

「帽子と手袋を返してもらいにきました」

「ええ?」

帽子と手袋って……。

「それは……?」

「ナンバー123118様の帽子と手袋と帽子デス。こっちの世界の、しかもあなたのもとにあるのではないかとのことでス」

「えーっと……ナストのこと……よね?」

「あ、あなたの呼び方はそうでしたッケ?こっちの世界でのナンバー123118、あなたの言うナスト様の帽子と手袋デス。ナンバー123118様が返してほしいとのこトデス」

「あなた!ナストを知ってるの!?」

あたしは人形の(ほとんどない)肩をゆするようにして聞いた。

「知ってるもナニモ……。私をここにつかわした方でスケド?」

「ナストからの伝令なのね?そうなんでしょ?」

「そうデスヨ。というかあんまりゆすらないでくだサイ」

「あ、ごめん……」

「だから帽子と手袋、返してくダサイ」

「ああ……。ああ、はいはい」

あたしは窓辺に寄って、黒い帽子と手袋を取ってきた。

これをここから動かすときが来るとは……。いつか来るとは思っていたけど、意外と早かったわね……。

「てかなんでナスト本人が来ないのよ」

「本人が来てほしかったのでスカ?」

「うぐ……。少なくともベッドにもぐりこむようなことはしないでしょ!」

「もぐりこんだらもぐりこんだで興奮したくせニ……」

「は?なんか言った?」

「いエ。何でもないデスヨ。しかし残念ながらナンバー123118様は今あっちの世界を出る事ができマセン」

「なんで?」

その時、いきなり人形の目が変わったような気がした。色に例えるなら、限りなくクリアな藍色。

ただでさえ棒読みチックな口調がさらに棒読みになった。

「ナンバー123118様はとらえられた場所から出る事ができマセン」

「とらえ……られた?」

どういうこと??

人形の冷たく、醒めた目があたしを見つめる。

次の言葉が怖い。でも聞かなくちゃいけない。

そして、あたしはあの夜以来の衝撃の言葉を聞いた。




「ナンバー123118様はすでに処分される事に決定しましタ」



←Back ↑Home Next→


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: