TRICK PARTY

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distance night 7



「おーい、ルシャ?」

呼ばれた当人が視線だけをこっちに向ける。

ほぼ同時に目を持っている本に戻す。

……早っ!

「よお」

「あのさあ……ひじょーに、とーっても言いづらいんだけど……」

とりあえずまず平身低頭。頼みごとの基本だ。

「お金……貸してくれない?」

「何故?」

「ご飯買うお金がなくて」

「飯?」

「うん、他に頼るアテがなくて……」

横顔のルシャは本の文字を追ったままポケットを探り、取り出す。そしてそれを指で弾いてあたしによこした。

「おっと」

あたしの手中に収まった……金貨?

てか案外簡単に借りれたな……

「あ、ありがとう」

「ん」

とりあえずあたしはその場を離れ、カウンターへ戻った。

「はい、これ」

おばさんがこっちを向き、あたしを見ていかにもうざったそうな顔をした。

「あー、はいはい」

言葉も投げやりだ。

ちょっと何よ?あたしがご飯食べるのがそんなに気に食わないの?

「……はい、どーぞ」

その投げやりな言葉と共に、あたしはつい3秒前の思い込みがおそらく違ったであろう事に気付いた。


どすん


そりゃあそうだ。

……金貨のお釣りとして、袋いっぱいの銀貨で返ってきたのだから。



「ちょっと、ルシャ!?お釣りっぽいのがすんごい事になっちゃってるんですけど??」

またルシャはちらりとこっちに目をやり、今度はあたしの手元を見て言った。

「なんだ、それしか食わないのか」

あたしの手には、お盆の上、パンが2個。

「ブラックホ-ル的発言ね、いろんな意味で」

「人間の食う量は知らん」

「もうちょっと人間の事を学びなさいよ」

「!」

あれ?

なんか一瞬ルシャがおかしくなった?

「……そうだな」

「?」

何か一瞬変な違和感を感じたが、かっさらうように袋取ったルシャを見てなんとなく勘違いのような気もしたので、あたしは黙ってルシャの向かいに座った。

今日のお昼ごはん、中身不明のパン二つ。丸っこいのと、サンドウィッチ系のもの。

何が入ってるかは、食べてからのお楽しみ、か?

「うーむ……」

なんかどっかの罰ゲームのような響きがなくもない……

とりあえずあたしは丸っこい方を手に取った。切りこみが入ってる様子もなく、中身を覗くのもつまらないので、そのままかぶりついてみる。


じャりッ……


……じゃり??

変な、いや妙な、あーというか気持ち悪い?感じが口の中に広がる。

もぐもぐじゃりじゃり……

味は……何だ?ツナっぽいと言えばそうでもあるし、ハムっぽいと言えばそうでもあるか?

もぐもぐじゃりじゃり……

というかなんだこの食感は……!

もぐじゃりもぐじゃり

「ぬぐ……ダメだ。あわない」

命名

“人間世界にはない食感楽しめちゃうよ♪なツナハムパン”!

「なんだそりゃ……」

自分でつけて自分でツッコむ。なかなか空しい。

「何コレ?」

「フォトリキャ。こっちの世界の珍味の一つ」

さりげなくルシャの解説が入る。

「珍味、ね。どうりで……」

毎回のごとく思うが、『珍味』と称されるモノにおいしかったためしがない

「そんじゃあもう一個」

丸いパンを捨て、あたしはサンドウィッチ系の四角い方のパンを取る。今度も中身は見ずに……


はむっ


もぐ

「おっ……!」

もぐもぐ

「おおっ……!」

もぐもぐもぐ

「おおおっ……!」

「……なに同じ文字ばっか6文字もならべてんだ?」

「うん!コレはおいしい!」

何と言うか……トロピカルだ。

バナナとかイチゴとかリンゴとかはサンドウィッチにも合う。それらのおいしいとこが集まった感じだ。甘く、それでいて微妙にあまずっぱかったり。

「これはいい!何て名前?」

「リーンジープ」

「なるほど……」

ちなみにこれまでの会話、一回もルシャは顔を上げていない。

「うん、これおかわりだな~。さっきのはハズレだったし。とーいうわけで」

ずいっ

「……なんだ、その手は」

ルシャがあたしの差し出した手を見て言う。

「お金、貸して♪」

あたしの超絶すま~いる。

「かっ。遠慮がなくなってきやがった」

と、いいつつ今度は銀貨を一枚投げてよこされた。

「さっすが、ありがと♪」

……ルシャって意外といい人かもしんない。

ってこの時初めて思った。



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