「LILIES」(再演)

StudioLife「LILIES」BLANCキャスト
★★★+1/2

於:シアタードラマシティ 2003年9月28日13時10列左ブロック
(東京公演 2003年9月10日~23日 大阪公演 2003年9月27日・28日)

原作戯曲:ミシェル・マーク・ブシャルド 上演台本・演出:倉田淳


出演

ROUGEキャスト
BLANCキャスト
シモン・ドゥセー
大沢健<客演>
高根研一
ヴァリエ・ド・テリー伯爵
姜暢雄
山本芳樹
ジャン・ビロドー
舟見和利
奥田努
マリー・ロール・ド・ティリー伯爵夫人
曽世海児
楢原秀佳
マドモアゼル・リディアンヌ・ド・ロジョ
藤原啓児
甲斐政彦
聖ミシェル神父
石飛幸治
前田倫良
ユー男爵
石飛幸治
大沢健<客演>
ユー男爵夫人
前田倫良
小林浩司
生徒
小林浩司
晩年のシモン/ティモシー・ドゥセー
重松収<客演>
石飛幸治
晩年のビロドー
河内喜一朗
船戸慎士


*

*感想*
 観たのはBLANCキャストのみです。ROUGEは主演の一人が客演、大阪公演では
ソワレのみとあって、主演がみんな劇団員で、マチネのBLANCの方が
いいんじゃないかな?と思って選びました。
チケット予約時はまだ同じ劇を二度以上見るという感覚がなく、何より私には
ゼイタクだと思っていたんですね。

 そしてシモン役の大沢健さんが誰か、というのに気付いてなかったので。
 公演を観る前、BSで阿国歌舞伎の再現(於四条河原町)をやっていました。
大沢さんが主演しており、「こんなに上手くて立派な人なら見ても
よかったな」と思った直後に「あ、この人パスポート新選組のCMとか、浜木綿子の
ドラマに出てた人だ」ってやっと気付いたという。
以前よく映像に出演されてましたよね。時々「あの役者さん上手かったけど
どうしてるんだろう」と思い出してたのに、一致してなかったようです。
BLANCキャストでのユー男爵役も、団員の誰より声も響いて上手くて素敵、
ますます「この人がシモンなら見たかったかも」なんて思いました。
話が佳境に入るにつれ何かと「これは両キャスト見るべきだった」と 強く思いました。

*

 公演は正直、よく感じたところと、そうじゃないところの差を激しく感じました。

 戯曲はとてもよかったです。劇中劇中劇というのも新鮮だし、男性ばかりで
女性役もするという設定が劇団にぴったり。筋は、特に狐狩りのシーンに驚きでした。
「え、こんな話だったんだ?ホントに?うわーん。どうしよう。」と
すごい気分になり、顔がくしゃくしゃになりつつ人目を忍んで涙を
こらえてしまい、呼吸困難になりました(笑)
なぜか?周りで泣いているお客さんがいなくて(他の公演ではたくさん
見たのに、どういう訳かこれだけ)恥ずかしいかと、私も我慢したものの
泣きたい場面は泣いた方がすっきりできますね。
その後ずーんとユウウツになっちゃって、けど感動してて、そんな
混在した気分が戻らず大変でした。

一度観ただけではよく分からないところもあり、その辺りは後から見た
映画で補った感じです。シモンのことも、伯爵夫人のことも映画で初めて
気付いたことが。だけど舞台での説明が足りないとか、そういう風には
思わなかったし映画より舞台の方がすきです。

 よいと思わなかったところは,何より「あんまり上手くない役者もいる」ことでした。
「もし出演者全員が上手かったら、もっともっといい公演になったろうに」
と、とても残念だったんです。
基礎稽古もあんまりしてないのだろうか…、まだ大役は早いのでは…
上手くなる前に舞台にあげてしまうのは、どうだろう…と。

並の役者さんと、すごく惹き込んでくれた役者さんと
「チケット代に見合わない」と言いたくなる役者さんとくっきり分かれてました。
出演者少ないから目立つので、全員最低限上手くあってもらいたかったです。

 それから「トーマの心臓」によって期待していたような「型や音楽の美しさ」が
少なかったのも残念でした。お話自体に余りある強い印象があったものの。

*

 それで「あらら?ちょっと下手な人もいるし…さほど美しい舞台でもない」
と少し期待外れに始まり、けれども、甲斐さんのリディアンヌ
がミュシャの絵みたいでとても美しかったこと、それから伯爵夫人が登場してからは
「魅力的な役、しかも役者さん(楢原さん)何だか上手い…。」と気付いて
段々面白く感じ始めてきました。

楢原さんの繊細な演技は、ホントに感動でした。ささいなしぐさ、わずかな
表情だけでも全て伯爵夫人になりきっていて、上品で凛とした動きが、
とてもきれいでした。

 初めはあまりよい印象のなかった山本さんヴァリエも、シモンへの
手紙を朗読する辺りから段々光り始めて、話が進むにつれ目が離せなくなって
しまいました。最終的には、「ヴァリエできるのはこの人だけでは」とさえ
思えました。それほどにヴァリエ。なぜこんな表情ができるんだろ…
と思った場面は多数。

最終的に「トーマの心臓」より印象強くなったのは、私にとっては戯曲と
お二人によるところが大きかったです。

 そして衣装も素敵でした。観てるうちにどうしても「実は囚人」というのを忘れちゃう
もんで、リディアンヌの服を見て「貧しい伯爵夫人の服とあんまり大差ない」
とか「お洒落なパリジェンヌがなぜいつも同じ服?」と思って後から
「ああ、そうだ囚人だったんだ…」と気付いたり。シモンやヴァリエ、ビロドーの
服もちゃんと学校の制服に見えるけど実は囚人服なんですよね。

 もう2,3回は観たいとかROUGEキャストでも観たかったなどと随分思った
のだけど、先ほど書いたように感動と残念の差がかなり激しく、感想は複雑になり
戸惑ってアンケート書くこともできないで劇場を後にしました。

その後2,3ヶ月は寝ても冷めても「LILIES」のことばかり、という困った病にかかりながら(笑)
ずっと感想の複雑さは変わらず、「結局どう思ったんだろう」というのがなかなか
自分でも分からず、困りました。


<お話の謎めいた点>(映画・舞台ともにネタばれです)

○シモンの罪○

シモンは40年間も独房へ入れられてしまいます。何がどれだけ有罪となったのでしょうか?
映画では「最愛のヴァリエを殺した罪で40年も独房に…」などという台詞がありました。
舞台ではその辺りはっきりしていなかったので思いよらなかったのですが、同じなのでしょうね。
「気球爆破で、そんなに重い罰を?」などと思っていました。
(考えると気球爆破し、その罪を友人になすりつけた人が司祭になってるんですね。)

放火はどうなったのでしょう。これは本当にやっていたため咎められても仕方ないのですが、
劇中劇上ではヴァリエしか気付いていませんでした。しかしあれだけつきまとっていた
ビロドーが知らないはずなかった気もします。

それに当時犯罪扱いだった同性愛。シモンは「本当にあったこと」は言い訳しなかった
のじゃないかな、と思うけれど(それを禁じる法律を責めたとしても)、
何がどれだけシモンの証言からか、ビロドーの嘘の証言からなのか、分からないですよね。
放火、気球爆破、同性愛、ヴァリエ殺しまで重なれば40年もの独房も、ビロドーへの復讐心も
納得いきます。裁判の様子とか父親やリディの反応なども劇にされてたら…どう描かれたんでしょうね。ちょっと見てみたかったです。

○ビロドーの行動○

ビロドーの行動は矛盾に満ちていて、謎が多いです。言うことが二転三転しているので。
最初はシモンを取り戻すために、ヴァリエとの仲を引き裂きたいと思うのですよね。
それでリディと結婚せよとシモンをけしかけたはず。
ところが奔放なリディとくっつけば「ここはテラスだ!」と叫ぶハメになるんで、
今度はヴァリエがリディとシモンの婚約を壊してくれることを期待。
狙いどうりヴァリエが二人の婚約パーティを台無しにすると、ヴァリエに腹を立て
「何もかもぶち壊したんだぞ!」と彼らが無事フランスへ行くのか心配してみせます。
思わず「アンタが仕向けたんじゃないか」とつっこみたくなる瞬間(笑)
内心はシモンをどこへも行かせたくない、しかも1人で汚れなきままいてほしいと
思うビロドー(ならリディとの結婚勧めないでよ、とまたつっこみたい…)何と気球を爆破。
そしてシモンとヴァリエの関係をリディに見せて、完璧に婚約が壊れたことがわかると、
すごい喜びよう。シモンが気球爆破の罪を着せられかけているのに。犯罪は「汚れたこと」に
ならないのかな。シモンへの強い想いとシットに振り回されきってたのでしょうけれど。

実に行動の読みにくい青年です。劇中劇内の混乱した狂言回し、でしょうか。


<初のお花投げとお見送り・・・>

一層混乱させられました(笑)。観後感が狂わされる、というのか。特にこういうシリアスものの
場合はそのギャップ激しく。「撮影可?・・・また持ってきてないわぁ」という哀しみと、
「でもこのサービスは・・・必要?」という愚問・・・疑問で頭ごっちゃ。劇場の人声枯らしてますし。
お見送りというよりお見つめられですかね。折角だし撮影もできないからしっかり
見つめてはおきましたが(笑)。

ほとんどの役者さんがにこやかな笑みで撮影に答えてかあちこち顔を向けていた人も。
特に山本さん、舞台上の悲劇はどこにいったかという笑顔。
大沢さんは驚いたような表情で空中に目線が。少し困られてたのかもしれない(笑)
楢原さんは笑顔ながら1人目線がずーっと床だったのが印象的でした。舞台挨拶の時は
「結構クールな人かも」と思ったんですけど、これで「クールでシャイな人」
という印象に。「シャイな人はこだわりが強い」とかいう言葉も思い出しました。
職人っぽい感じがします。

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