魂の還る場所

魂の還る場所

第九夜   白い御使い

 ずっと祈ってた。
 連れていって。ここじゃない何処かへ。
 私が欲しいのは、こんな場所じゃない。
 触らないで、誰も。目の前が真っ暗になる。
 この願いを叶えて。


 青い闇に月影が落ちる頃も、全てが白さに眩しさを放つ時も、いつもずっと祈り続けた。
 突き刺さるように、世界の視線が存在する。
 痛イノニ、苦シイノニ、消えることはない。現実なのか妄想なのか分かるはずもなかった。
 閉じ籠ることも出来ずに外へ出れば、窒息しそうになる。
 味方なんて一人もいなくて、光の溢れる場所は、受け入れも祝福もしてくれない。
 淋シイ人ハ私ダケ…なんて不公平なことがある訳がない。この世の中で生きる全てに天秤があって、幸せと不幸せの量は同じ量だけ用意されている。幸せの皿より不幸せを感じる皿の方が性能が良いだけのこと。
 …心の中で繰り返しても、乾いた笑みが本心を映し出す。
 幸せと不幸せは同じ量でも、それぞれの大きさが違う。付加された運と不運が、不公平に手を貸しているのだ。 考えているうちに、どんどん悲しくなった。
 書き写すノートの隙間は、塗り潰された言葉で埋まる。何を書いたか忘れてしまっても、空白の時間は同じ言葉を紡ぎ出す。昼の明るさ、友達の笑う声や話す声、街の無邪気さは解放してくれるけど、直ぐに掴まり、思い出して、身体中冷たいものが駆け巡る。
 安穏とした日々に、罪悪感が生まれる。
 遠く離れたくにに同情して…?
 …そう思っただけでもう、何かが終わる。
 偽善が周りを行進して、壊したくなる。

 神様、私を救って下さい。
 思うのは、私だけですか?

 信じているのか分からないのに、こんな時だけ口にする。祈りの言葉は、おまじないの言葉。
 都合が良い。安心したいから、安心できるから、みんな困った時だけ信じているふりをする。
 …連れていって。神様なら出来るはず。
 この世界を創ったのなら、この悪夢の中から連れ出してくれるのは、神様だけ。


 こんな場所に居たくない。
 連れてって私を。
 …もう誰でも良い。


---月の光が白く照らす。
 大きな影と一緒に。


 …今夜、願いは成就する。
 優しい微笑が手を差し伸べ、その手を取れば。


 どうして「天使」が、白い翼なのか解った。
 陽の光や月の光の白さを受けているからだ。
 本当は黒い翼をしているのに…---。  


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