『ワールド・トレード・センター』


2001年9月11日、午前8:40過ぎ。
ニューヨークのシンボルともいえる2つのタワー、
世界貿易センタービルに旅客機が激突。
港湾局警察官のジョン・マクローリンと
ウィル・ヒメノは同僚と現場に急行し、
人命救助のためビル内部へとむかいます。
しかしその時、轟音が鳴り響きビル全体が崩壊を始めたのです。
奇跡的に2人は生き残りましたが、瓦礫の下敷きとなり
身動きがとれなくなっていました・・。
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あの、9・11同時多発テロという
歴史的大惨事の中で奇跡的に生還した
港湾局の警官達(とその家族)が主人公の作品。
世界レベルではなく、個人レベルの部分に
スポットがあてられています。
事件の全貌にも焦点をあてず
テロを引き起こした者達への批判や、政治的含みも全くなく
ただ感動の救出劇になっています。

他に傷ついた人達が何千といるのに、これはなんだ!?
という感想を持った方もいらっしゃるようですが
あえてこの2家族に焦点を絞ったことで
逆にダイレクトにあの悲劇を伝えることが
出来たんじゃないかと思います。
それだけであの恐怖の時間を蘇らせるのには十分だったのでしょう。
アドバイザー&エキストラで参加していた
ジョンとウィル本人達によると
実際には映画の100倍は恐ろしかったらしいですが・・
2人が生き埋めになってからさらに崩壊が進み、
どんどん状態が酷くなっていく様は
我々観客も、思わず目を背けたくなるような
恐怖に襲われます。
あれの100倍だなんて( ̄□ ̄;)・・!

埋もれてからは2人の会話と2人の安否を心配する
それぞれの家族の様子が交互に写し出されていきます。
ジョンとウィルは身体が埋もれている訳ですから
演じているニコラス・ケイジとマイケル・ペーニャは
表情とセリフだけの演技が求められた訳です。
そのシーンが淡々としていてつまらないととるかどうか・・
これは観る人によると思いますが、
微妙な心理状態(少し落ち着いている時や
死にたくなるくらい自暴自棄になったり
恐怖で狂いそうになったり
家族への愛情を再確認したり)
の変化を巧みに表現していて、観ているこちらは
せつなく苦しくなりました。
よりいっそう悲惨さが伝わった箇所でもあります。
淡々と・・という点に関しては
実際の出来事なので、完全なフィクションもののように
ドラマチックな展開が用意されている訳ではないのは
あたりまえです。
なので、映画としてドキドキハラハラするような
スリリングなものを期待する方には
向いていない作品かもしれません。

先に書いたように、テロについて掘り下げた描写がある訳でもなく
この辺りも‘社会派オリバーストーン’に期待する方には
がっかりする要因になるかも。

直接テロを経験したことのない人間にとっては、もう5年。
でもあの時大惨事に巻き込まれた人達にとっては、まだ5年。
傷が癒えることはないのかもしれません。

テロ未経験の人間こそこれを観て、世界で起った(起っている)
事実を知るべきなのではないかと思いました。

この作品には批判もメッセージ的なものも
あまり感じません。
それは観る者に判断を委ねているかのようです。
題材が題材だけに、単純に『感動した』とか
『怖かった』とか言いにくいです。

ただ思ったのは、劇中にも何度か
そんな家族のシーンが出て来ますが
今ある平凡な日々を大切にすること、
例えば他愛ない家族との朝のあいさつも
たまたま交わさなかったその日に
何かの事故に巻き込まれるかもしれないってこと。
(ここで少し、尼崎のJR脱線事故を思い出しました)
自分のささやかな人生を考えさせてくれました。

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