『父親たちの星条旗』


アメリカ・ウィスコンシン州で葬儀屋を営む老人に
最期の時が迫っていました。
彼の名はジョン“ドク”ブラッドリー。
1945年、海軍の衛生兵として太平洋戦争の激戦地となった
硫黄島の戦いに出兵していました。
彼らが勝利のシンボルとして
摺鉢山に星条旗を掲げた写真が
アメリカ国民の士気を高めるために利用され、
たちまち“ドク”達は英雄に祭り上げられるのですが・・
そんな過去を語ろうとしない父(ドク)。
その父の最期を見守る彼の息子が
硫黄島の真実を辿り始めたのです。
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原作はジョン“ドク”ブラッドリーの息子
ジェイムズ・ブラッドリーによって書かれました。

英雄に祭り上げられた生き残り3人のうちの一人で
最期まで何も語ろうとしなかった父の若き日の真実に
息子が迫ったノンフィクションです。
全編通してドラマティックな箇所があまりなく
淡々とした語り口なのが特徴です。

特に有名な俳優が出演している訳でもなく
画面の色彩もほの暗い感じで地味。
でも、あえて無駄を省いたようなその演出で
132分もの長丁場を魅せてくれたのはほんと拍手モノ。

『国のために戦う』って一体どういうことなのでしょう?
帰還後もずっと「人を殺めた」ということに悩まされ続ける悲惨さ。
戦場にいた時だけでなく、
その後の人生すべてに影響を与えてしまうのです。
戦争ってなんだろう?
二部作のもう一本『硫黄島からの手紙』に描かれていましたが
“とにかくアメリカと名の付くものは憎い”
として、言われるがままに戦っている兵士たち。
でも、相手(敵)の何を知っているというのだろう?
どこに暮らしていようが、どんな文化を持っていようが
同じ人間同士が国家のエゴイズムに
踊らされているだけのような気がしてなりませんでした。

戦争というものが過去の話ではなく、
現在も世界のどこかで繰り広げられているのかと思うと恐ろしい・・

父親が唯一語る?ラストシーンは美しくせつなく
何度も繰り返されるピアノの旋律(これがイイ!)に
実をまかせるように穏やかな気持ちで観ていました。
戦争には勝者も敗者もいない。
ましてや英雄なんていない。
まさにその通りでしょう。
「戦場を知らない奴ほど戦争は良くないという。
本当に知っている人間は何も語らない」
冒頭のこの言葉にすべてが集約されていると思います。

あと、エンドロールの写真がすごくイイです。
そしてエンドロール後もまだ少し映像がありますので、
最後まで観るようにっ★


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