南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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 (2)学校探し


《9月―頭の痛い季節》 ~2003年9月の記録

 ∬第2話 学校探し

娘の通う学校の壁に、タイミング良く、ある音楽学校のポスターが貼ってあるのを見つけた。
早速電話して場所を聞き、平日の昼間、ドルムシュを乗り継いで住宅街にあるその学校へ出掛けてみた。
経理事務担当の女性と、その横でレッスンの合間でもあるのか、一人で淡々とコーヒーを飲むピアノの専任教師らしき男性が応対をしてくれた。

娘は7歳(日本式には満6歳)で、今まで別の教室でピアノやテオリーのレッスンを受けていたこと。色々問題が生じて教室を辞めることになったけれど、できればそれを続けさせたいことなどを簡単に伝えた。

私が一番心配なのは、月謝だった。
事務経理担当の女性は、にこやかに「月に200ミリオンです」
「5週ある月にはどうなるのでしょう?」
おや、といった顔で少し残念そうに(実際そう見えたのだが)、
「変わりません。200ミリオンです」
それを聞いて安心した私は、次にレッスン内容について質問した。

「どのようなシステムで教えてくださるのか、まず教えていただけますか?」
ピアノ教師の男性(後でパンフレットを見て校長だと知ったのだが)がそれに答えた。
「ピアノは週に3時間、それ以外にテオリーが1時間、耳のレッスンが・・・」と説明が始まると、驚いて思わず説明を遮ってしまった。
「週に3時間も!?無理です。平日は学校がありますし、遠すぎて・・・」
「私たちの学校では、週のレッスン時間は8時間、月に32時間が基本なんです。普通週に3日と、残りは週末に行います。土曜と日曜にまとめて3時間ずつ6時間取ることもできるでしょうが、残りの2時間は平日には無理なんでしょうか・・・?」

またしても、頭は混乱。今聞いたばかりの数字を頭の中で忙しく整理した。
土日に3時間ずつ。前の教室では、ピアノの個人レッスンを受ければ1時間でも疲れていたのに、テオリーや他のレッスンとの組み合わせだとしても、3時間なんてキツ過ぎるんじゃなかろうか・・・・。
それに、時間帯はどうなる・・・?
「土日に3時間ずつ取るとして、何時から始まりますか?」
「11時からです」
「すると、昼食などはどうしたらいいでしょう・・・?」
「私たちで用意しますよ、子供たちの食べられるものくらい。私たちの食べるものでかまわなければ」

意外な回答に少なからず驚いた私は、学校へ抱いていた不安感が、急に親近感に変わるのを感じていた。
大したものは出ないにしても、200ミリオンの中で食費まで工面していたら、学校経営は大変じゃあないだろうか・・・。
今までの4倍もの授業時間数なのに、月謝は納得のいく範囲。おまけに食事まで面倒を見てくれるという。
学校によって経営がそこまで違うことに、私は正直驚いていた。

私は愚痴半分に、前の教室が時間でレッスンを切り売りしていたこと、月謝が大幅に値上げになったことなどを打ち明けると、苦笑しながらピアノ教師は、こう答えた。
「彼らは商売としてやっていますから。でも私たちは、必要なことを教えるのに週1時間では少なすぎると考えているんです。週1時間では、実際何も身につかないですよ。」

淡々とながら真摯に説明してくれた二人と、学校の経営方針に好印象を持ったものの、様々な条件を考えると、やはり二の足を踏まざるを得ないだろうな、と思った。
自宅から遠く、週何度も通うには不便すぎる。それに時間数が多すぎて、娘の負担になることが十分予想できた。
第一、平日学校が終わってから夕刻に、子供を二人も引き連れドルムシュを乗り換えて通うのは、考えただけで気が重かった。学校が終わると、自宅に帰り着く頃は闇の中。夕食の支度にまで支障が出る。
また、せっかくの貴重な休日に、遊びたい盛りの子供たちを室内で3時間も4時間も閉じ込めるのも、特に姉のレッスンに付き合わされる下の娘には可哀想に思えた。

時間当たりになおせば、ひどく良心的な料金に思えるが、結局、通いきれなくなることを思えば同じことなのかな・・・。
そんなことをつらつら考えながら、ドルムシュに揺られて帰途についたのだった。

 つづく

∬第3話 相談




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