南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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2004/12/01
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ギリシャ映画『花嫁たち』 を紹介して以来、移民に関する記事が多くなったのは気のせいだろうか。
もしかしたら、私の中で「移民」への関心が呼び起こされたことで、以前に比べて目に付くようになっただけなのかもしれないが。

今日ご紹介するのは、第一次世界大戦後に行われたトルコ-ギリシャ間の「住民交換」で「移住」を余儀なくされたトルコ人と、「国土の浄化」という意図の下に住まいを追われたギリシャ人の物語をめぐる話題である。

      - * - * - * - * -

【1】クレタ島へのルーツ探しの旅が始まった

東地中海。エーゲ海の出口に浮かぶエーゲ海最大の島クレタ島は、トルコとギリシャのちょうど中間に位置し、さながらトルコとギリシャの間に置かれた飛び石のように見える。
現在ギリシャに属するこの島は、トルコ語ではギリット(Girit)と呼ばれ、オスマン・トルコ時代にはトルコ領であった。

1923年にトルコとギリシャの間で調印された「住民交換」の結果、クレタ生まれのトルコ人たちは先祖伝来の地クレタ島から放出され、トルコ本土に移り住むことになった。

記憶の中、心の中でだけでなく、言語や料理においても、クレタ人である証拠は生き続けていた。

クレタ人は自らを、ギリシャの他の島々に住む者とも、大陸側に住む者とも常に区別してきた。
プライドの高い人々として知られるクレタ人は、自らを他のギリシャ人とは別の人々として考えてきたのだ。
この自意識は、トルコに住んでいたギリシャ人との間に居住地を交換し、トルコに住むこととなったクレタのトルコ人の中でも生き続けた。
クレタ独特の言語、文化、料理、知性を携えながら、アナトリア各地へと彼らは分散していった。

それから80年が経った。
ここ数年、クレタのトルコ人の第3世代の人たちが、自らのアイデンティティーを求め始めているという。
観光客としてだけではなく、自らのルーツを探すためにクレタ島を訪れるトルコ人の数が急増しているというのだ。
彼らは自ら「家族・親戚の家を見つけに行く旅」「クレタとの邂逅の旅」をオーガナイズもする。
祖父母が暮らし、両親が、伯父伯母が生まれ育った家を見つけ出し、先祖の墓を訪れる。両親の通った学校を見に行き、近所の人から話を聞く。
クレタ人である自らのルーツを確かめるために。


クレタ料理のレストランが誕生し、クレタ料理が、ギリシャ料理あるいはエーゲ海料理とは区別して表現されるようにもなった。
こうして、長い年月をかけてアナトリアの大地に浸透したかに見えた「クレタ」が、今また日の光の下に晒されようとしている。

―第1世代は、新しい環境に慣れるよう努力した。第2世代はそれに成功した。そして第3世代は、ルーツを探しに出始めた―

クレタ島には、特にハニアとレスモ(レティムノン)には、オスマン・トルコ時代に建設された古い邸宅やモスクが今でも数多く残されているという。
                                 (2004年11月28日付『Hurriyet』紙より引用)




またギリシャ人の移民を、しかし別の視点から取り上げた映画が誕生した。
トルコの女性監督イェシム・ウスタオール(Yesim Ustaoglu)による『雲を待つとき(Bulutlari Beklerken)』がそれである。

これもまた、時代は同じ第一次大戦後。
黒海地方にあったギリシャ人の村々が、オスマントルコ軍によって空にされ、これらの地に住んでいたギリシャ人は南への移動を余儀なくされる。
この移動の過程で生まれるさまざまな苦悩、悲嘆・・・を、この映画は描き出す。

イェシム・ウスタオール監督には、前作『太陽への旅(Gunese yolculuk)』という、クルド問題を扱った作品があるが、この作品はトルコ国内でさまざまな議論を呼んだという。
当初トルコ国内での上映が禁止されたが、1999年のベルリン映画祭で「青い天使賞」と「平和賞」を受賞したことで、日の目を見た作品である。
監督は、2年前には同映画祭の審査員にも選ばれている。

脚本は、ロバート・レッドフォードが設立したサンダンス・インスティテュートの主催する、若手・独立系の映画製作者を支援する目的で開催されるサンダンス・フィルム・フェスティヴァルで最優秀脚本賞を獲得し、15万ドルの資金援助を受けた。
また、まだ撮影が開始する以前に、テレビ放映権を買い取ったジャパン・ナショナル・テレビジョン(※NHKか、あるいは日本テレビの間違いか?)も、資金援助を行った機関のひとつに挙げられる。
さまざまな国の、さまざまな機関からの資金援助のもと、撮影を開始したウスタオール監督の映画の完成には、3年間を要した。

撮影は、黒海沿岸の都市で紅茶の名産地、リゼ近郊の小さな村から、さらに3km奥まったヤイラ(高原)や、ケマル・アタチュク生誕の地セラニックで行われた。
映画の出演者には、ベテラン舞台俳優の他は、生まれてこの方一度もカメラの前に立ったことのない近隣住人が選ばれた。

ウスタオール監督はこう語る。

―ロシアの占領下において、オスマン・トルコ政府は西の村々に住んでいたギリシャ人を流罪にした。
そのために人々は大きな苦痛を味わった。
移動の途中に近しい人たちを失くした者もいた。
私はこの事件を、心理ドラマとして描き出す。
これは・・・流刑になる過程で、過去を失った女性のドラマである―

―『太陽への旅』の公開には困難が伴った。
始めは許可されず、公開は遅れた。
しかし今では、物事をずっと楽に進めることの出来る国になった―

映画『雲を待つとき』は、来年1月7日にロードショー公開される。

                                 (2004年12月1日付『Hurriyet』紙より引用)

      - * - * - * - * -


私が、巨額をつぎ込んだハリウッド型の超大作より、こんなマイナーな映画作品にばかり心惹かれるのは、なぜだろうか?
私自身の中に、常にマイノリティへの同情や共感があるのは確かなのだが・・・。






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最終更新日  2005/02/28 12:43:09 AM
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