南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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2006/06/10
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テーマ: 海外生活(7808)



車窓からその校舎が見えた時、そのまま引き返そうかと思ったくらい、ショックを受けた。
これが・・・コレジ?

普通の4階建てのアパルトマンほどしかないそこは、隣にある運動場も猫の額ほどしかなかった。まさにアパルトマンを改造して作られたことが歴然。
夫に「入ってみないの?」と訊かれたが、私は近づくのも嫌で車に残った。
夫に促されて仕方なしに門をくぐり中に入ったが、外から見るよりさらに印象は悪かった。薄暗くて狭い廊下。廊下の向こうに小さいトイレが丸見え。一階分が一ダイレ(フラット)の広さしかない狭い校内。地下に設けられたイェメッキハーネに至っては、天井近くに明かり取りの窓が一つあるきりで暗く、昼間から電灯の下で食事を取ることになる。

校長は、開口一番「うちはビナー(建物)ではなく教育内容を重視してます」と先手を打とうとしたが、それこそが施設の悲惨さを自覚している証拠だった。
家庭的な雰囲気?生徒一人一人の役割分担が大きい?それはひとつの理屈ではあるが、環境が子供の心理に及ぼす影響は大きいはず。日中から電灯を燈さなければいけない薄暗く狭い教室に、走り回ったりふざけることもできない狭い廊下。真っ暗なイェメッキハーネ。何も言う必要のないことだろう。
それで学費の方は、私たちのコレジの今期のそれより1千YTL安い程度である。

その一言を口にした途端、そのアイデアが急に私たちの中で現実味を帯びてきたのである。

私たちは、自宅の周辺地区と、カレイチの事業所周辺地区にあるデヴレット・オクルを、この金曜日に4つまとめて見学して廻った。

カレイチ内にある唯一のデヴレット・オクルは、創立1929年と77年の伝統を持つ古い学校だが、建物の方も相当古く、小さく狭い。最悪なのはトイレで、戸外にあり、頭をぶつけそうなくらい丈の低い古い木の扉で閉ざされた空間には、電灯すらなさそうだった。3つ並んだ扉の前を小蝿がプンプンと飛び回っている。日本でいえば昭和30~40年代の風景だろうか。
4つのデヴレット・オクルの中では最も混雑度が低く、クラスあたりの生徒数45人前後ではあるが、ここに娘たちを通わせることなど、到底考えられなかった。

ふたつめに訪問したデヴレット・オクルは、カレイチから車で2~3分。徒歩なら10分くらいの距離にある、比較的規模の大きい学校で、きちんと管理されている印象を受けた。
しかし、クラスあたりの生徒数も大変なもので、平均50~55人。一番多いクラスになると、68人!である。
今のコレジでは、最大時36人になったことはあるが、大体15~25人という少人数クラスを経験してきた娘たちが、長机ひとつに3人4人とすし詰めで座ることに果たして耐えられるであろうか。その点が大いに不安だった。

3つめのデヴレット・オクルは、自宅とカレイチとの中間地点で閑静な住宅街に位置する。他の3つの学校は、午前・午後の2部制だが、ここは朝から午後3時までの1部制であるのがいい。
ただし、生徒数はやはり50~60人となる。

4つ目のデヴレット・オクルは、自宅の校区内にある学校で、市の中心からは遠ざかる方面にある。近年に建設されたらしく校舎は比較的新しい。
生徒数は45~50人程度。


県外や郡部からの人口流入の激しいアンタルヤの学校不足は顕著。建築ラッシュの続く新興住宅地に国の対策は追いつかず、我が地区をはじめ地区内に1校も存在していないところも少なくなく、近隣区の学校へと押し寄せる結果となるわけである。
その結果、1部制の学校は激減し、多くの学校が2部制へ移行。そしてクラスあたりの生徒数も50人前後かそれ以上というのが平均となってきたようだ。

夫は、コレジが完全に閉鎖になるかどうか、まだ分からないというのに、娘たちをデヴレット・オクルに入れることを早々に決断してしまったようだ。
4つ目の学校を一緒に見学に行き、父親の考えを聞かされたエミは、悲しそうな、憮然としたような、納得がいかないような複雑な表情を浮かべながら、「デヴレット・オクルなんて行きたくない。コレジに残りたい」と訴えた。
娘に弱い夫は、「もちろんコレジが閉鎖にならなければ、そのまま残るだろうけど・・・」と最終決定でないことを匂わせた上で、「1年くらい、デヴレット・オクルも経験してみるのもいいんじゃないの?皆が通ってるんだから、悪いってことないでしょ。子供のうちに色んな経験をするのも大事なことだよ」と説得しにかかった。



それよりなにより、私は娘たちの経験するであろうカルチャー・ショックの方が心配だった。コレジでの生活を通して、学校とはそういうもの、と学んでしまった娘たちが、デヴレット・オクルで出会う風景や人々をことごとく否定的に見て、溶け込もうとしないのではないか、疎外感を感じたりするのではないか、と。
さらには、トイレに神経質なナナは、掃除の行き届いていない、トイレットペーパーの準備のないアラトゥルカ(トルコ式)のトイレに入れなくて、我慢し続けて失敗するかもしれない。人に邪魔されて集中力を失うのが大嫌いなエミが、ひとつの長机に3人4人とくっつきあって座ることに反発するのではないか。そんな余計な心配が、頭に浮かんでは消えた。
子供の適応能力からすれば、あっというまに慣れて、案ずるより産むが易しとなるかもしれないが。

そんな時、また新たな情報が耳に入った。
ナナの担任教師、エミのバドミントンの顧問になる体育教師、リセ(高等部)の英語教師など何人かの教師が異句同音に言うことには、「学校はそんなに簡単には閉鎖できない。最低1年の猶予が与えられなければならないよう決まっている」というものだった。
さらに、イスタンブールはバフチェリエヴレリにあるAコレジと現在話し合いが行われていて、もしかしたらAコレジが買い取って運営する可能性があるという。

そしてさらに衝撃的なこんな話も。
早々にBコレジへのトランスフェルの決まった校長が、副校長やレフベルリッキ・オーレトメン(ガイダンス教師)を含む多数の教師をごっそり、Bコレジに引き連れて行くというのだ。しかも、毎夜毎夜さまざまな父兄を集めて食事会を開き、Bコレジへの勧誘までしているとか。父兄から「学費が高い」の声が出れば、3割の値引きまで約束して勧誘に努めているという。
校長はじめトップ陣が、今やまったく職務を放棄し、必要な連絡事項すら教師に流してくれないので、教師が自分たちで学校を運営しているというのだ。
いったい、校長のそんな職務怠慢、自己保身が許されるだろうか。自分の利益を最優先し、自分の下にいる何百人もの教師、生徒の保護を完全放棄するとは!

今のコレジの存続も、私たちがそこに残れる可能性も、今やはかない夢のような、ぼんやりとした現実味しか帯びていないのを私は感じていた。
イスタンブールのAコレジ?もしAコレジが買い取ったら、今のコレジは校舎や校庭だけ残して消滅し、まったく新たなコレジが生まれるだけである。教師数も生徒数も半減し、規模は縮小。一方、学費は今までのようなわけにはいかない。おそらくイスタンブールの相場に合わせ、またブランド校に習って一気に高くするはずである。現在のような良心的な学費では採算が取れなくなっているのが、最近のアンタルヤのコレジ事情なのだから。

コレジ間の熾烈な競争は激化するばかり。全国展開を狙うブランド校が、トゥリズムを中心に発展を続け、富裕層が急激に拡大しているアンタルヤを、受け入れ土壌も十分と見て、今後も次々と進出してくることが考えられる。小さく名もないコレジは、次第に淘汰されていくことだろう。
そして、より優秀な教師や生徒、より裕福な父兄の争奪合戦。同じアンタルヤ市内で、このような限られたパイの取り合いが行われているのである。教師は給与の高さに、父兄は豪華な施設に惹かれ、我も我もとブランド校へ流れていく。クオリティを保つために当然学費は跳ね上がる。しかし、高すぎては思ったほど生徒は集まらない。今になって、B校が学費を3割、A校が2割下げたのも、すべて熾烈なレカーベット(競争)のためである。

デヴレット・オクルへのナクリ(転入)手続きは、早い学校で8月下旬から、最も遅い学校で新学期の始まる直前である9月第1週、第2週あたりだという。
それまでに、さらにアラシュトゥルマを重ねながら、コレジ間の動向にギリギリまで耳をそばだてていくしかない。猶予はまだある。ギリギリでもどうにかなるのがトルコだから。
デヴレット・オクルであれば、クラスの人数がなるべく少なく、トイレをはじめとした施設が合格点を出せるもので、スポーツ活動や社会参加の機会の多い学校を選びたい。そのためには、もう少し走り回り、聞き込み調査を行わねばならないだろう。

今年の夏も、私たちの日本行きは完璧に不可能となった。










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最終更新日  2006/06/12 06:01:46 AM


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