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2025年10月31日
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カテゴリ: 情報的生活行為



無駄にしたくなかった話 (単行本) [ 水村 美苗 ]
残り四分の一、となる。
この本おいくら?そうか、2300円か。
蔵書に決めようかな?それほど、エッセイとして面白い。

本書中、 「漱石と日本語と日本近代文学と日本」 のタイトル中から以下引用→
(p234  8行目から)
 でも一方で、「恋愛」と言う概念、ことに「恋愛結婚」という概念は、近代という、人類が歴史の中で作って来た時代の産物、しかも後戻りできない時代の産物でもあるのです。

 近代とは、ある日突然始まったわけではありません。でも、その基本倫理、すなわち、他の人間を自分の「手段」としてのみ扱ってはいけないという基本倫理が確立されたのは、十八世紀の西洋の啓蒙主義からだと言えるでしょう。他の人間を自分の「手段」としてのみ扱うというのは、他の人間を「モノ」のように扱うということです。それに対し、近代とは、他の人間を、自分と同じ「人間」とみなし、尊厳をもって扱わねばならないという命題が確立した時代なのです。そして、いざその命題が確立すると、その「他の人間」という中に、今までは「人間」として扱われていなかった人々ーー奴隷、植民地の人、女ーーなどが、「自分も人間です」という形で、時代を追うごとにどんどん入ってくるようになります。
 女も「人間」の中に入ってくるとなると、人間社会は大きく変わらざるをえません。女も「人間」となると、女を性欲を満足させるための手段として見ることができなくなるだけではない。人間社会の基礎を成すのは婚姻制度ですが、それは昔から、どの社会でも、父親、伯父、兄などの男が、男たち同士で、女を「モノ」のように交換する制度だったのです。ところが、その前提が大きく変わって来ざるをえない。長い間どの人間社会でも当然としていた婚姻制度を否定しなくてはならなくなるのです。それは社会に大きな変化をもたらします。それまでは交換される「モノ」だった女が、男と同じ「人間」として、結婚の相手を選ぶ権利があるということになるからです。
←p235 6行目まで。引用ここまで。

恋愛ばかりあげつらって論が展開されているわけではなく、
漱石がいつ生まれ、その当時の日本の、西欧列強との関わりとか、漱石の20年後に生まれている谷崎(潤一郎)の文学論とか、漢語との関わりとか、後世の日本人の、明治時代、というものについての考え方とか、日本語というものの位置とか、いろんな論点が述べられている、著者の講演記録である。

しかもここでは、日本語を母語とする日本人が、当時まかり間違えば、その言葉、失くしてしまうかもしれないという危機!にあったにもかかわらず、、である、ので、
(この点については、内田樹氏の論考参照されたい)

著者は、奇跡、という言葉で表現しているのだが・。

著者本人は、12歳から20歳まで、父親の仕事の都合で、
ニューヨーク在住。
1951年生まれ。





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最終更新日  2025年10月31日 05時34分06秒
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