中年よ、大志を抱け!

中年よ、大志を抱け!

不毛の地に緑を



ダニエル君は29歳。きゃしゃで童顔なので、20歳くらいだろうと思っていたら、へぇ、結構歳なんだって驚いちゃいました。

彼は合気道をやっていて、その先生であるSさんが僕の職場の参事なので、3年前にひょこっと訪ねてきました。それからというもの折々の行事に12時間かけてバスに乗って来ては、黙々と運動会だとか、盆踊り大会だとか、ヤキソバ会だとか、そういう準備を手伝ってくれるわけです。

僕の周りの冗談好きで自己主張が強くて陽気な多くのブラジル人達とは違って、シャイではにかみ屋で控えめで、聖人君子ってのは、彼のことじゃないかって言うほどの人柄なんで、僕はあんまり言葉が通じないことにもどかしさを感じながらも、いろいろ話しかけたくなるわけです。

ここに来てくれてありがたいけど、楽しい?と聞くと、すごく楽しい、とはにかみながら答えるわけです。

そんなわけで、彼は誰にも愛され、尊敬されてるわけです。彼には恋人がいるんですが、その人は活発で冗談好きで、彼とは全く違うタイプの感じなんですが、彼のことを熱烈に尊敬していて、好きでしょうがないという感じで、それもとってもほほえましいわけです。

彼のお父さんは、以前は職業軍人でしたが、その後養蜂業を営み、今は農場を経営してるんだそうで、そのせいかどうか、彼は、「ダニエル君、ちょっと手伝ってくれる?」と聞くと「はい!」と、こちらが恐縮するほど律儀に返事をし、てきぱきと働きます。で、頼んだ仕事が終わると、「次は何をしましょう?」と必ず聞き、見るたびに何か仕事をしてるわけです。

そして、生き物に対してとても優しいのです。知らない人には徹底的にほえまくる番犬がいるんですが、彼はここに来た最初の日から犬達と友達になってしまいました。彼の、人や動物や植物に接する姿は、なんというか、優しさにあふれて、まるで、・・・見たことないですけど、イエス・キリストとかお釈迦さん、って感じな訳です。

で、3年間付き合っていて、昨日初めて聞いたんですが、彼は来年は博士号が取れるかもって言うほどの秀才だったんです。

ほんとか?で、何専攻してるのって聞くと、生物学だそうで・・・。研究のテーマは、化学的に汚れている土地に、緑を蘇らせる、というものだそうで、日ごろの彼を見ている僕としては、それを聞いたとき、不覚にもチラッと涙が出るくらい感動してしまいました。なぜって、あまりにも彼のイメージにぴったり過ぎてたからです。

人間が汚した土地ですから、人間が責任を取らなければいけないと思うんです・・・と語る彼の目に、、、、しびれてしまいました。

おおおおおお、って思わず抱きしめたくなるほどでしたが、さすがにそこまでは出来ず、握手だけしました。

しかし、彼の夢がかないますように、って心から思ったわけです。













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