ちょっといい女

ちょっといい女

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乾いた心をソファに横たえ、幾度となく深い溜息を繰り返していた。

―――もう、彼女は来ないだろう。―――

―――たとえ来たとしても、僕はもう会わないだろう。―――


堅く閉ざされたドアをぼんやり見つめていた。

部屋の空気は冷たく、微風さえ入ってこない窓からは

闇々とした景色が覗いているばかりだった。

薄暗い部屋に明かりさえもつけずにいた。


―――彼女には失望した。彼女に僕の夢を託すことはできない。―――

そもそも、他人に夢を託すなんていう事は無理なのかも知れない。

人は皆、価値観も違っていれば、思い描くビジョンも異なるものだから。


その頃、彼女は悔しさに打ちのめされていた。

―――現実を踏まえた上でないと、ビジョンではなく単なる夢想に過ぎないでしょう。―――

―――私は、今はその時期ではない、今は安定志向で乗り切る方が賢明だと思うからよ。―――

安っぽいプライドが邪魔をして、そんな言葉さえも伝えられずにいた。

彼の辛辣な言葉に対しても、何も返す事もできず、

彼女は

彼のアドレスを削除した。

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