全39件 (39件中 1-39件目)
1
深夜、俺たちは四人で廃病院に忍び込んだ。地元では有名な心霊スポットで、噂では「決して見つからない霊安室」があると言われている。最初は単なる肝試しのノリだった。懐中電灯の明かりで廊下を進み、落ちているカルテや錆びたストレッチャーを見つけては笑って騒いでいた。しかし2階に上がったあたりから妙な違和感が出てきた。自分たちの足音とは別に後ろから「コツ、コツ」と靴音がついてくる。でも振り返っても誰もいない。「気のせいだろ」と強がったけど、全員が同じ音をたしかに聞いていた。恐らく病院のほとんどを回っただろう。でも噂の霊安室は見当たらなかった。そろそろ帰ろうかという話になり出口に向かっていると、仲間の一人が言った。「おい、これってもしかして...」何度も通ったところだがこんなところに扉は無かったはず。でもたしかに「霊安室」と書かれたプレートが掲げられた鉄扉があった。「え、ここ何度も通ったけど絶対こんな部屋なかったよな...?」誰かがつぶやいた。でもその通りだった。扉の取っ手を引くと、重い音を立てて扉は開いた。すると鼻をつんざくような線香のにおいが一気に流れ込んできた。「うわっ!」思わず声が出てしまった。まるでさっきまで線香を焚いていたようなほど鮮明な臭いだったのだ。室内を覗くとそこには古びた遺体安置用の引き出しが並んでいた。そのいくつかが半分開いていて、闇の中から冷たい空気が漏れている。そのとき――背後で、ガサリ、と衣擦れの音がした。振り返ると、長い髪の女の後ろ姿が、廊下の奥に立っていた。顔は見えない。ただ静かにこちらを向きかけている。「やばい、出よう!」誰かが叫んだ瞬間、線香のにおいがさらに強まり、視界がぐにゃりと歪んだ。俺たちは我先にと階段を駆け下りた。背後では「コツ、コツ」と、確実に追ってくる足音。出口が見えてきたところで耳元でハッキリと声がした。「……新しいご遺体ですね。安置しますのでじっとしていてください」外に出た瞬間、線香のにおいも足音も消えていた。後ろを振り返ると....窓のところで白衣姿の女がこちらを見ていた。🔥他の記事🔥・教室の隅の男・史上最悪の老人ホーム・放課後の廊下で・2階女子トイレの噂
2025.10.21
コメント(1)
🔥まとめスレ🔥【水道管破裂したんだが】【海で釣りしてたんだけど何かめちゃでかいのかかって全然上がらなくて怖くなったから糸切った】【先生たちが職員室でこっくりさんを始めたら怖いことになった話】うちの近所には「救急車おじさん」と呼ばれている人がいる。救急病院が近くにあって昼夜を問わずサイレンが鳴るのだが、そのたびにおじさんが家から飛び出してくる。「救急車!救急車!救急車ぁぁぁぁ!!!」真っ赤にして必死の形相で走っていく。子どもたちは面白がって“救急車おじさんだ!”と笑っていたが正直大人たちは笑えなかった。ある夜、遅くまで起きていたときサイレンの音が聞こえた。ピーポーピーポー……窓の外を見るとやっぱりおじさんが飛び出してくる。寝巻きのまま裸足で全力で。通りの角を曲がり救急車を追って闇に消えていった。私は何気なくその方向を見つめていた。しばらくしてサイレンの音が遠ざかっていく。それと一緒におじさんの声も聞こえた。「救急車ぁぁぁ……まって……!」小さくかすれてそれでも必死な声。それが夜風に流されて消えていった。――その翌朝おじさんの家の前に人だかりができていた。警察と救急車が来ていて誰かが運ばれていた。近所の人の話では昨夜、おじさんが道路脇で倒れていたらしい。心臓発作だったという。おじさんが運ばれていく救急車の赤い光がまだ朝の薄暗い通りをちらちらと照らしていた。野次馬の間から見えるストレッチャーには白い布がかけられていて顔は見えなかった。誰かが小声で言った。「……自分が追いかけてた救急車に、乗ることになっちゃったのかね」....面白くて少し笑ってしまった。🔥他の記事🔥【ミニ四駆に取り憑かれた大人。公民館を震撼させた“暴走レース”】【病院の怖い話。ありがちって思うでしょ?でも実際に起きたら普通に怖いよ】【とある田舎の学校の噂。放課後、もし廊下の向こうから白装束の女が来たら絶対にすれ違うな】
2025.10.10
コメント(0)
🔥まとめ記事🔥引っ越し終わったけどなんか押し入れの奥にお札貼ってあったwwwwwうちのじいちゃん呆けて洗濯機に何でも入れるんだけどさ実際、富士山って噴火したらどうなんの?毎日、夢を見る。すごく怖い夢だ。真っ暗な闇。果てしなく広がる巨大な闇。その闇は生き物のようにうねり、僕に襲いかかってくる。正体は見えない。顔も、形もない。ただ強大で圧倒的ですべてを飲み込もうとしてくる。僕は必死に抵抗した。くじけそうになったけどどれだけ怖くても諦めなかった。起きているときもその夢のことばかり考えていた。どんなに嬉しいことや楽しいことがあっても必ずその夢を見る。その夢を見ればすべてがかき消されてしまうから。毎晩、戦った。毎晩、闇に向かって叫び、抵抗し、逃げずに立ち向かった。そしてある日、とうとう勝った。闇が消えた。「勝ったんだ...僕はやっと勝てたんだ...!!!」その瞬間、目が覚めた。そして何故か僕は病院の部屋にいた。お母さんが泣きわめいていた。「あなた、ずっと意識がなかったのよ……!」……え?僕は毎日起きて怖い夢を見ていると思っていた。でも、本当は違ったのだ。ずっと眠っていたのは僕の方だった。起きていると思っていた時間もすべて夢の中だったのだ。🔥他の記事🔥カードショップにやばい奴おったwwwww近所のじいさんがずっと草むしりしてるんだけどお前らって遺棄された死体とかって見たことある?
2025.10.05
コメント(0)
🔥怖い話まとめ記事🔥【カードショップにやばい奴おったwwwww】【近所のじいさんがずっと草むしりしてるんだけど】【肝試し行こうと思っとるんやがどこかおすすめある?】俺にはどうしようもなくバカな友達がいた。名前は康介(こうすけ)。YouTubeの再生数稼ぎに命をかけるタイプで、心霊スポットや廃墟に行くと必ず「何か過激なこと」をやらずにいられない。俺はいつも止めるんだけど彼は笑いながら俺を振り切る。ある日、彼は地元で有名な廃病院に行くと言い出した。「ここ、マジでヤバいって噂だぞ。俺、一人で動画撮ってくるわ!」俺は止めた。でも彼は笑って言った。「怖がるなよ。俺が全部面白くしてやるから」その廃病院、窓ガラスはほとんど割れてて壁はカビと汚れで真っ黒だった。廊下には古い手術台や車椅子が散乱し、空気は重く淀んでいる。康介は一人で突入してライブ配信を始めた。最初はふざけて叫んだり壁に落書きをしたりしていた。でも段々様子がおかしくなった。背後から微かな足音が聞こえると言い出した。風でもないのに金属の擦れるような音。彼は画面越しに笑った。「誰かいるのか? ハハ、マジで面白え」その後、康介は勝手に奥の手術室に入った。カメラは彼を追うが電気はほとんどなく暗闇の中で手術台がぎしぎしと音を立てる。彼は叫び声を上げるが笑い声と混ざっていてどちらが本気なのか分からなかった。そして、突然ライブ配信が途切れた。コメント欄は一気に騒然となった。「大丈夫か?」「誰か助けに行け!」…しかし誰も入れない。廃病院には長い廊下が迷路のように続き外から見ても中の様子は全く分からない。翌日、警察が入った。廃病院の奥、崩れた天井の下で康介は見つかった。映像では見えなかったが、どうやら彼は何かに触れてしまったらしい。手は石や壁の汚れで変形し、足は異様に曲がって倒れていた。目は開いたままで虚ろだった。現場には彼が配信中に叫んでいた声が何度も反響するかのように残っていた。警察は言った。「廃墟の中には…何か映らないものがある」俺はその映像を消せなかった。再生ボタンを押すたびに暗闇の奥で康介が振り向く瞬間が見える気がする。あの日、あの廃病院で彼は自分で呼んだものに捕まったのだ。もう二度と誰もその廃墟に近づかない。しかし、時々夜中に通知音が鳴る。康介のライブ配信アカウントから…「助けて」とだけ書かれたコメントが一瞬だけ上がるのだ。⭐他の記事も見る⭐・山で行方不明になった友達を見た気がする・カラスって葬式するってマジ?・ワイ都会民。田舎の怖さを教えてくれメンス
2025.10.04
コメント(0)
★怖い話まとめ記事★・山で行方不明になった友達を見た気がする・カラスって葬式するってマジ?・ワイ都会民。田舎の怖さを教えてくれメンス駅前にいつからか「唐揚げおじさん」と呼ばれる男が現れるようになった。見るからに中年で汚れたコートを着て油染みのついた紙袋を抱えている。彼は道行く人に向かって無言で唐揚げを投げつけるのだ。最初はただの奇行だと思われていた。「またあのおじさんか」と笑いながら避ける人もいたし、SNSに「唐揚げ投げられたw」と投稿する者もいた。噂が徐々に広がり駅前には唐揚げを求めてホームレス達が集まるようになった。最初は一人、次に二人、やがて十人以上。おじさんが唐揚げを投げると彼らは黙ってそれを拾いむさぼるように食べる。普通の通行人はもちろん避ける。でもホームレスたちは争うように唐揚げを奪い合い目がギラギラと光らせる。最初は小競り合い程度だったが次第に争いが激しくなり、拳や棒が飛び交い血の匂いが混ざるようになった。ある日、ついに死傷者が出た。駅前の通行人は騒然となり救急車が何台も駆けつけた。しかし唐揚げおじさんは何事もなかったかのように紙袋を開けてどっさりと唐揚げを取り出していた。紙袋の中にはどういうわけか常に大量の唐揚げが残っており誰もその全てを確認できなかった。唐揚げおじさんは無言で立ち去る。唐揚げおじさんが現れてから変な噂が出るようになった。あの近辺でホームレスが行方不明になるという噂。「唐揚げおじさんが来ると誰かが消える」唐揚げおじさんは一体何のために唐揚げを投げているのだろう。そして何故ホームレスが行方不明になるのか理由はわからない。👉他の記事もぜひ読んでみてね!・【ヤバすぎ】廃墟に住みついてたホームレスと殴り合いになった・結局、最恐の心霊スポットってどこよ・【恐怖】秩父の吊り橋行ったんだけどやばかった【深夜】・夜コンビニ行ったんだけどさ。何かめちゃくちゃ照明が暗くて怖かった
2025.10.02
コメント(0)
【未発見の生物ってまだいるのかな】【海洋恐怖症ってどうやったら治せる?】【俺ってサイコパスの資質ある?教えてほしい】猫は可愛い……そう思っている人は多いのではないか。でも実際は違う。猫は脅威だ。僕の住む町では猫の縄張り争いが異常に激しい。夜になると路地裏のあちこちで低い唸り声と甲高い鳴き声が響き渡る。姿を現した猫たちは互いに飛びかかり爪を立て、牙をむき、毛を散らしながら渦のように入り乱れる。数匹、時には十数匹が絡み合い地面を削るほどの勢いでグルグルと回転する。「猫竜巻」――人々はそう呼ぶ。一度巻き込まれるとただでは済まない。近所のおばあちゃんは不運にもその渦に足を取られ転倒。無数の爪で切り裂かれ二十針を縫う大怪我を負った。それからは杖が手放せなくなった。猫竜巻は止めようがない。大声を上げても物を投げても奴らは止まらない。ただただ回転し怒号を撒き散らし血の匂いと毛を残して散っていく。可愛いだなんてとんでもない。猫は人間の生活圏を平然と荒らし時に襲いかかり傷つける存在だ。あの竜巻を見た人間は二度と「猫は可愛い」なんて言えなくなる。猫は脅威だ――そのことを町の住人達は嫌というほど知っている。👉他の記事もぜひ読んでみてね!・【ヤバすぎ】廃墟に住みついてたホームレスと殴り合いになった・結局、最恐の心霊スポットってどこよ・【恐怖】秩父の吊り橋行ったんだけどやばかった【深夜】・夜コンビニ行ったんだけどさ。何かめちゃくちゃ照明が暗くて怖かった
2025.10.01
コメント(0)

その夜、私は夢を見た。暗い海の底で、巨大なマグロやカツオの群れがうごめいている。彼らは怒りに震えていた。――なぜだ。――なぜ俺たちが「シーチキン」などと呼ばれねばならんのだ。怒号のような声が海を震わせる。「シー(海)チキン(鶏肉)? ふざけるな!」「俺たちは鶏じゃない! 海を駆け抜ける王者だ!」その群れはやがて渦を巻き、海面から飛び出した。目を覚ますとテレビのニュースが流れていた。「各地の港で異常事態。大量のマグロとカツオが人々を襲撃し…」映像には跳ね上がった魚が観光客を弾き飛ばし、建物を突き破る様子が映っていた。魚たちは目を爛々と輝かせ叫んでいる。「我らを侮辱するな! シーチキンなどと変な名前を付けやがって!」その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍った。毎日のように食べていたあの缶詰が彼らの怒りを増幅させていたのだ。数日後、スーパーからシーチキンが消えた。メーカーは緊急声明を発表した。「今後、製品名を改めます。新しい名称は――『オーシャンキング』です」だがもう遅かった。魚たちは人類への逆襲を止めなかった。そして最後に残ったニュースのテロップにはこう表示されていた。――「人類が『シーチキン』と呼んだ代償をいま支払わされている」と。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.25
コメント(0)

放課後、教室から妙なざわめきが聞こえた。カタカタとコインの音、紙を叩く指先の音。私は足を止め、そっと教室の扉を開けた数人の生徒が机を囲んで"こっくりさん"をやっていた。「何をやってるんだ。ダメだ、こんなことして…!」と生徒たちに注意し紙とコインを没収し直ちに下校させた。職員室に戻ると、没収したこっくりさんの紙を手に同僚の先生たちが集まった。「懐かしいなぁ…」一人がにやりと笑う。「昔、私もやったことあるよ」「じゃあ、やってみる?」最初は冗談半分だった。しかし紙にコインを置き指を触れると不思議な緊張感が職員室に漂った。「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」最初の数回は誰も動きを感じなかった。だが次第に紙のコインがかすかに揺れ始める。誰も触っていないのに微かに指を押すような感覚。先生たちはざわつき、息を飲む。「え…今、動いた?」「…あれ、違う、もっと…」やがて職員室の蛍光灯がチカチカと瞬き、窓の外から風もないのにカーテンが揺れた。冗談のつもりだったはずがいつの間にか何か見えない存在がそこにいるような気配が漂う。「やっぱり…やりすぎたかな…」誰かが呟く。その瞬間だった「ガタガタ…ガタッ!!!!ガタガタガタガタっ!!!!!!!!」職員室の扉がガタガタと揺れた。そして扉がゆっくりと開くと・・・なんと校長先生がいた。「先生方。いい大人たちが何をやっているんですか...」...と校長先生はそう言いながら呆れた顔をしていたが、驚いて絶句している私たちを見てニヤケ顔を隠しきれていなかった。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.25
コメント(0)

私はゴキブリが嫌いだ。一匹でも出れば体中が震え血の気が引く。だからゴキブリが家に出たときは容赦なく徹底的に抹殺しようと決めていた。ある夏の夜、キッチンでゴキブリを発見してしまった。ついに出たかと...小さく黒光りするその姿に怒りと恐怖が一気に湧き上がった。「絶対に逃がさない」私はスプレーを手に取り追い詰めた。ゴキブリはすばしっこくて机の下や冷蔵庫の陰へ逃げ込む。焦った私はさらに火を使って駆除しようとした。スプレーを吹きながらライターで炙り火炎放射のようにゴキブリを追いかけた。しかし火はすぐに制御不能になった。油断した隙にキッチンの布巾やゴミ箱に燃え広がり、あっという間に家全体に火が回った。「まさか…」と呟く間もなく炎は壁をなめるように広がり煙と熱気が家を支配した。外に逃げると隣人が驚いた顔で叫んでいた。「家が…家が燃えてる!」消防が駆けつけ、鎮火までに数時間。家は跡形もなく焼け落ち、残ったのは焦げた梁と屋根の穴から漏れる夜空だけだった。私はゴキブリを追い詰めとうとう駆除することができた。しかし勝利の代償はあまりにも大きかった。家も、思い出も、何もかも――私は小さな生き物を滅ぼすことに成功した代わりに大切なものをすべて失ったのだ。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.24
コメント(0)

あれは大学時代、知り合いの紹介で地方の古い剣道場に出入りしていた頃のことだ。武道好きの仲間と稽古を見学したり、道場主の話を聞いたりするのが楽しみで何度か通っていた。ある日、稽古の後に年配の門下生が低い声でこう言った。「……今度、決闘がある」最初は冗談だと思った。現代日本で、しかも真剣での決闘なんてありえないだろうと。だが、その場にいた者たちは誰一人笑わなかった。目は真剣で空気は重く沈んでいた。後から聞いた話では、決闘に臨む二人は同じ流派に属していたが長年の確執があった。稽古試合での因縁、指導者の後継を巡る争い、そして個人的な侮辱。それらが積み重なりついに「言葉ではなく刀で決着をつける」とまでなったのだという。もちろん現代にそんなことをすれば警察沙汰だ。だから人目を避け、限られた者だけで行う。そういう事情だった。決闘が行われたのは夏の夜、道場の裏手の広場だった。照明はなく、月明かりと懐中電灯の弱い光だけが頼りだった。集まったのは十数人。皆が口を閉ざし固唾を呑んで見守っていた。二人は袴に真剣を差して向かい合った。互いに名乗りもなく合図もない。ただ静かに間合いを詰めていく。その時点で冗談ではないことを思い知らされた。彼らの目には迷いがなく、稽古の延長ではなく「殺し合い」を前提にしていた。最初の音は刀が抜かれる「シャッ」という金属の擦れる音だった。次の瞬間、鋭い一閃。空気が裂ける音が耳を打つ。二人は数合打ち合い刃と刃が火花を散らすように響いた。そして決着はあっけなかった。片方の肩口に鋭い一撃が入り、鮮血が飛んだ。倒れた男は呻き声を上げ地面に崩れ落ちる。もう一方はすぐに刀を収め背を向けて歩き去った。残された者たちは慌ただしく動き、倒れた男を抱え上げてどこかへ運んでいった。誰も「勝敗」や「正しさ」について口にしなかった。そこにあったのはただ言葉では説明できない緊張と血の匂いだけだった。私はただ立ち尽くし震えながら思った。――本当に人はまだこんな形で争うのか。あの夜のことを誰かに話したことはほとんどない。信じてもらえるとは思わないし、話すだけで自分まで関わったと誤解されるだろうからだ。だが、あの刀の音と血の匂いだけは今でも忘れられない。真剣同士の決闘は確かにこの目で見た。そしてもう二度と見たくはない。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.23
コメント(0)

静かな山寺に参拝客がちらほら訪れる穏やかな昼下がり。僧侶たちは掃除や読経に勤しんでいた。…はずだった。静寂に怒号が響き渡った。「その座布団、俺の場所だろ!」突然、本堂の奥から怒声が響いた。年長の和尚が若い和尚に座布団の位置を巡って文句を言っていたのだ。若い和尚も負けじと顔をしかめる。「そんなに怒らなくても…!」その瞬間、何かの拍子に手がぶつかり、そして――ドンッ!パチッ!白い袈裟が宙を舞い、畳が踏み鳴らされる音。二人の和尚はまるでプロレスのように殴り合いを始めてしまった。参拝客たちは唖然。お年寄りは杖で制止し、子どもは悲鳴を上げ、外国人観光客はスマホで動画を回し始める始末だった。「や、やめてください!」「本堂で殴り合いなんて!」しかし、和尚たちはまるで聞こえていない。手がぶつかるたび袈裟がふわりと舞い、茶器や花瓶が危うく倒れそうになる。やっと若い和尚が息を切らして立ち止まり、年長の和尚も荒い呼吸を整える。両者は汗と埃にまみれ、畳の上の座布団と茶器を見つめて無言に。参拝客たちは互いに顔を見合わせ、肩をすくめて言った。「あの…これ、日常ですか…?」年長の和尚がぽつりとつぶやいた。「…些細なことでも譲れぬ時があるのだよ。」若い和尚も苦笑いしながら散乱した座布団を整える。参拝客たちはドン引きしていた。その日以来、山寺にはこんなうわさが立った。「この寺、座布団ひとつで和尚が殴り合いを始めるらしい」――と。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.21
コメント(0)

最愛の人が亡くなった。家の中は静まり返り、家具も空気もすべてがその喪失を物語っていた。家族はその事実を受け入れられず、毎日亡くなった人の部屋に通った。夜が訪れると家族はろうそくを灯し降霊術の本を開いた。「戻ってきて……お願いだから」震える声で呟きながら魂を呼び戻す儀式を続ける。すると遺体の手足が微かに動いたように感じ、目を開ける気配があったように感じた。遺族は歓喜した。「やっぱり、まだ帰ってきてくれるんだ」と。しかし次第に、その行動は奇行化していった。夜ごとろうそくの光の下、遺体に話しかけ食べ物を口元に運ぶ。腐敗の匂いが部屋に立ち込め、壁や床に液体が染み出しても遺族は目を逸らさなかった。隣人は徐々に異変に気付いた。深夜に聞こえる奇妙な声、廊下に漂う腐敗臭。最初は気のせいだと思ったが、日に日に匂いは強まり窓の隙間という隙間から虫が湧いていたことが決定的となった。近所の人は警察に通報した。駆けつけた警察と消防は恐る恐る家の中に入った。そこには、ろうそくの光に照らされた腐敗した遺体とそれを抱きしめ泣きじゃくる遺族の姿があった。遺族は何も悪びれることなく、ただ「戻ってきてくれたんです」と笑顔で語った。愛する者を取り戻そうとする執念は命と理性を越え、静かな狂気となって日常を蝕むのだと。腐敗の匂いは家の外まで漏れ、街は静かに震えた。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.19
コメント(0)

うちの町には、とにかく“子供の悪戯を全力でやるおじさん”がいる。年は50代後半くらいで見た目は普通のおじさん。でも行動はまるで小学生そのものだ。ある日、夜中に家の電話が鳴った。知らない番号。出ると「もしもし……あのさ……」と、聞き覚えのある低い声がする。そして「クスクス」と電話越しに笑い声が聞こえガチャッと電話が切れた。そしてその瞬間、玄関のチャイムが鳴った。恐る恐るカーテンの隙間から外を見ると、年季の入ったジャンパーを着たおじさんが全力で走って逃げていく姿があった。別の日には、近所の人が道を歩いていると突然「パンッ!パンッ!パンッ!!!」と乾いた破裂音が鳴り響いた。近所の人は驚いて尻もちをついた。おじさんが爆竹を足元に投げ込んだのだ。通りすがりの猫も逃げ惑っていた。近所の子供たちは最初怖がっていたが、次第に「また来た!」と楽しみにするようになった。しかし町の人たちは呆れる半面、少しワクワクもしている。一体次は何をしでかすんだろうか・・・と。ある日、近所の人が言っていた。「いい年してあそこまで全力で悪戯する人、見たことないよ……ある意味、尊敬するわ」おじさんの悪戯は時に迷惑だが、町にちょっとした刺激と笑いを届ける、ある意味“町の変わり者ヒーロー”なのかもしれない。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.19
コメント(0)

「痛い!!!!痛い...手が…手が燃えてる!!!」水泳の授業中、プールの水面で突然叫び声が響いた。生徒たちが指を指す先には、紫色の漂流物が浮かんでいた。何人かが触れた瞬間、激しい痛みとしびれに襲われ手足に水ぶくれが広がっていった。「助けて!足が…動かない!」「目が、目がチカチカする!」教師たちは慌てて生徒達を引き上げるが、数名は意識を失い、そのうち一人は心肺停止状態となり後に亡くなった。調査の結果、なんと原因はカツオノエボシという猛毒を持つクラゲとのことだった。搬送された生徒の証言によると「なんか青い袋みたいなものがあったから手に取ってみたら手が燃えるように熱くなって...」と。調べてみるとプールには信じられないほど大量のカツオノエボシの死骸が浮かんでいたのだ。誰かが意図的に集めて投入したものであることは間違いないと明らかになった。学校の塀や監視カメラ周辺には夜間に不審者が侵入した痕跡が残っており、外部犯による計画的な行為と見られている。学校側は即座にプールを閉鎖し、水面の死骸の回収と安全確認を徹底。保護者には緊急連絡が入り児童の健康状態や救急搬送の経過について報告が行われた。地域社会には衝撃が走り、事件当日の学校周辺は警察官や保健所職員で封鎖される事態となった。事件後、学校では外部からの侵入を防ぐための対策が強化された。塀の補強、夜間監視カメラの増設、警備の強化などが行われ生徒の安全確保に努めることになった。しかし亡くなった生徒の家族や同級生たちの心には深い悲しみと恐怖が残り、プールの授業はしばらく行われなかった。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.17
コメント(0)

しめやかなはずの葬儀場に、怒号が響き渡った。前列の親族同士が言い争いを始め、次第に掴み合いに発展する。押し倒す、押し返す。花瓶が割れ、香炉の灰が舞う。誰かが棺を押し倒した。木の蓋が床に叩きつけられ中の白い布に包まれた遺体がちらりと見える。空気が一瞬凍った。それでも争いは止まらない。言葉は怒号に手は拳に変わり、親族たちは互いを押し合いながら叫び続ける。そのとき坊さんがブチギれた。木魚の棒を握りしめ目を見開いたまま当事者たちの頭をフルスイングする。ドンッ、ドンッ、ドンッ。怒号は止まり、争っていた人々は崩れ落ちたように静まり返った。葬儀場にはただ坊さんの呼吸だけが響く。しばらくの沈黙のあと誰かがぽつりと呟いた。「あーあー、棺追加だよこりゃぁ…」静まり返った葬儀場に乾いた笑いにも似た空気が漂った。まさに現実とは思えない瞬間だった。怖い話まとめサイト開設しました!ぜひご覧いただければ幸いです(^^♪👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.15
コメント(0)

トンネルの奥に長い黒髪の女が立っていた。白いワンピースに顔を隠すほどの髪。同行していた若者たちは「出た!」と叫んで逃げようとした。だが、その中にひとりだけ逆に前へ歩み出る男がいた。散髪屋の息子・田辺。手には愛用のはさみを握っている。「ずっと思ってたんだ……。怪談に出る女幽霊って何でみんな髪長いんだ?切ればいいだろ」仲間たちは止めた。「やめろ!殺されるぞ!」しかし田辺は震える足で幽霊に近づいていく。女の幽霊は、低い声で「近づくな……」と唸った。だが田辺は構わず、しゃがんでその髪をつまんだ。「枝毛ひどいな。ちゃんとトリートメントしろよ」そう言って、ジョキリ――と鋏を入れた。髪が切られる瞬間、女の顔がぎょっと歪んだ。洞窟に絶叫が響く。「やめろおおおおおお!!!」切り落とされた髪は地面に落ちた瞬間、ドロドロと黒い液体に溶けていった。幽霊は頭を押さえ苦しみもがく。「髪は……わたしの……命……」田辺は恐怖に震えながらも、さらに鋏を入れた。「命とか言ってるけどな……前髪ぱっつん似合うと思うぜ!」バサッ、バサッ――。最後に残ったのはショートカットになった幽霊。その瞬間、女の顔は蒼白なままふっと消えた。残されたのは黒い髪の束とまだ震える鋏だけ。……田辺は言う。「幽霊も髪型変えると成仏すんのかもしれないな」👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.15
コメント(0)

葬式というのは、本来しめやかに進むものだ。だが、その日の葬儀は、開始からして波乱含みだった。棺の前で、まず最初に揉めたのは席順だ。「俺は長男なんだ、前に座るのは当然だ!」「は?最後に世話したのは私だぞ?あんた何してた?」静まり返る会場に、親族の怒鳴り声が響く。次に火種となったのは香典の額。「え?一万円だけ?親父にそれで済ます気か!」「うるさい!こっちだって生活あるんだ!」焼香の順番を待つ参列者が、居心地悪そうに目を伏せる。さらに極めつけは、誰が一番故人を大事にしたか論争だ。「看病に通ったのは私!」「いや、毎月仕送りしてたのは俺だ!」「仕送り?あんな小遣い程度で偉そうに!」僧侶が読経を続ける中、親族たちは互いに声を荒げ、ついには立ち上がって睨み合った。棺の前で罵声が飛び交う。まるでここが戦場のようだ。しかしそのとき、ポツリと参列者の一人がつぶやいた。「……あの人も、空の上で笑ってるだろうな」場が一瞬、静まった。本当にそうだ。故人なら、こんな光景を見て腹を抱えて笑っているに違いない。泣き笑いが広がり、罵声の中にも苦笑が混じり始めた。結局、葬式は最後まで喧嘩混じりで終わった。だが、不思議と後味は悪くなかった。故人はたぶん、あの世でこう言っている。――「いいから仲良くしろよ、お前ら」👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.14
コメント(0)

ある村に一人、評判の悪い男がいた。昼間から酒に酔い、近所の神社の鳥居に落書きをし、石碑を蹴飛ばす。「神様なんかいねぇんだよ!」と笑いながら、供え物を盗んでは酒の肴にしていた。最初のうちは、周りの人も呆れて黙っていた。だが、度が過ぎた。祭りの準備をしている神主を「カネ儲けだろう」と罵倒し、子どもたちが神輿を担ぐ練習をしていると「バカ騒ぎしてんじゃねぇ」と怒鳴り散らした。村人たちの我慢は限界に達した。ある晩、男は泥酔して神社に乱入し、供えられた米俵に放尿した。それを目撃した数人の若者が黙ってはいなかった。誰が先に手を出したかは分からない。だが気づけば男は地面に叩きつけられ、顔を腫らし、歯を何本も折っていた。翌日、男は交番に駆け込み「襲われた!」と訴えた。だが、村中の人々が口を揃えて言った。「それは自業自得だ」「散々我慢してきたんだよ」警察も動かなかった。事件として扱うにはあまりに男の行動が常軌を逸していたからだ。しかし男はそれでも反省するどころか、むしろ憤慨したのだった。「人間ごときに何ができる! 神も人も全部俺が踏み潰してやる!」数日後、男はさらに狂気じみた行動に出た。墓地に忍び込み、墓石を次々と倒し、卒塔婆を踏み割った。神社のご神木には斧を振り下ろし、血走った目で叫んだ。「祟れるもんなら祟ってみろ!」その夜のことだった。「お祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りお祭りぃぃぃぃ!!!!」意味不明な男の叫び声が、町中に響き渡った。村人たちが何事かと外に出ると恐ろしい光景が広がっていた。ご神木を中心に男のものと思われる肉片が辺り一面に飛び散り血しぶきが咲いていた。村人の1人がこう言った。「こりゃあ確かに祭りだ....」と。その一言で村人たちがドッと笑った。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.13
コメント(0)

最初の被害は静かな住宅街で起きた。会社帰りの女性が突然「目が見えない!」と叫び、救急搬送された。診断は網膜損傷。火傷のような跡が残っていた。同じ週、別の町で男子高校生が片目を失った。続いて通勤途中のサラリーマン、買い物中の主婦…。「一瞬、赤い点を見た気がした」という証言以外、共通点はなかった。事件は連続し、街全体が恐怖に包まれた。警察がようやく犯人を突き止めたのは駅前ビルの屋上だった。そこには三脚に固定された奇妙な装置。そしてその横にやつれた男が座り込んでいた。「やっと…来たか」逮捕の瞬間、男は笑っていた。調べにより、その装置は市販の赤外線レーザーを改造したものであることが判明した。肉眼では見えないが、出力は非常に高く人の視力を一瞬で奪う威力を持っていた。取り調べで男はこう語った。「人は“見えないもの”を恐れる。 だからこそ、見えない光で支配できると知ったんだ」「ただ驚く顔が見たかった? 違う。 人が“突然盲目になる瞬間”――あの絶望の表情が欲しかったんだよ」「俺は神だ。 光を与えるのも奪うのも俺だ」警察官が「なぜ失明させる必要があった」と問うと男は声を低くして笑った。「見えない光はな、誰も逃げられないんだ。 君だってもう浴びてるかもしれない」報道では「赤外線レーザーの悪用による連続傷害事件」として処理された。だが噂は消えなかった。「捕まったのは一人に過ぎない」「今も別の場所で赤い点を見たら最後――」夜の街でふと視界に浮かぶ光。それが本物かどうか誰にも分からない。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.12
コメント(0)

うちの家族は、父・母・姉。そして私の四人でした。ずっとそれが当たり前だと思っていました。……けれど、ある日から「一人増えていた」のです。最初に気づいたのは夕食の時でした。食卓に並ぶ五人分の茶碗。そして私の隣に当たり前のように座っている“誰か”。顔を見れば知っているような気もするし、まったく知らないような気もする。不思議なことに、どう説明しても思い出せないのです。年齢も性別もはっきりと浮かんでこない。ただ確実にそこにいて、家族の一員として会話をしている。「今日の魚、焼き加減ちょうどいいね」その人が笑うと、父も母も姉も頷いて会話を続ける。誰も不思議がらない。「……私の家族って四人じゃなかったっけ?」そう思って口を開きかけても声が出ませんでした。みんなが自然にその人を受け入れている空気の中で、ただ一人自分がおかしいのかもしれないという不安に押しつぶされてしまったのです。部屋に戻り、古いアルバムを開いてみました。そこには最初から「五人」で写っている写真。運動会、旅行、誕生日。どのページにも、その人は当然のように写り込んでいる。頭がおかしくなりそうでした。次の日、学校で友達に「うちって家族何人だと思う?」と聞いてみました。するとみんな一様に「五人でしょ?」と答えるのです。笑いながら「なに当たり前のこと言ってんの」と。夜、布団に入って眠れずにいたとき。耳元で囁く声がしました。「気づいてるの、君だけなんだよね」体が硬直しました。ゆっくりと振り向くと、暗闇の中すぐ隣に“その人”が横たわっていました。こちらを見てにやりと笑っています。瞬きをした瞬間姿は消えていました。でも、今も耳の奥であの声が繰り返されています。「気づいてるの、君だけなんだよね」――そして今夜もまた、食卓には五人分の箸が並んでいるのです。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.11
コメント(0)

杉原という男は、猫が好きだった。だが一般的な「かわいいから好き」とは少し違う。彼にとって猫は、人間と同等の存在――いや、それ以上の敬意を払うべき“野生の獣”だった。なのに、世間はどうだ。テレビでは「癒し系」と笑いながら子猫を抱き上げ、SNSでは「うちの子」とか「天使ちゃん」と言って飼い猫を赤ちゃん扱い。挙げ句の果てに「可哀そうだから避妊しましょう」「捨て猫を助けましょう」と、恩着せがましい善意を振りかざす。――ふざけるな。杉原の怒りは日に日に膨らんだ。猫は哀れな存在ではない。小鳥を狩り、蛇に挑み、雨の夜に自らの身体を震わせながら生き抜いてきた。人間ごときが「守ってあげる」と口にするなど、傲慢の極みだ。ある夜、彼は公園で猫を見つけた。薄汚れた野良猫がベンチの下からこちらをじっと見ている。通りかかったカップルが「かわいそう、痩せちゃってる」とコンビニの唐揚げを差し出した。杉原の中で何かが切れた。「勝手に哀れむなッ!!」彼は怒鳴り、カップルを押しのけると、唐揚げを地面に叩きつけた。驚いて逃げ出す猫。「おい!何すんだよ!」と怒鳴る男を無視し、杉原は血走った目で言い放った。「猫は、お前らのペットじゃねぇ! 弱者でもねぇ! 猫は――獣だ!!」その姿は完全に狂人だった。警察が駆けつけ、彼は暴行と器物損壊で連行された。ニュースには「動物愛護をこじらせた男」として小さく載ったが、ネットでは「猫キチの末路」と笑いものにされた。だが杉原の心には、ただ一つの確信だけが残っていた。――人間は、猫を舐めすぎている。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.09
コメント(0)

良い歳をしたおじさんには、誰にも言えない趣味があった。それは―― 警察官を相手に鬼ごっこをすること。おじさんは毎日のように町を歩き回り、制服警官を探した。見つければ、わざと怪しそうに振る舞う。ポケットをいじったり、キョロキョロしたり、やけに大きな袋を持ち歩いたり。そして警官と目が合うや否や――「やべぇッ!」と叫んで、全力で走り出す。当然、警官は追いかけてくる。「待てッ!」おじさんの胸は高鳴った。――来た!この瞬間のために生きている!ただの鬼ごっこ。何もやましいことはない。だが警察からすれば、そんなわけがない。捕まるたびに、警官は真顔で問い詰める。「何を逃げた!」おじさんはケロリと答える。「いやぁ……追いかけてくるかなって思って!」しばらくすれば釈放され、また同じことを繰り返した。だがある夜のことだった。いつものように「怪しい素振り」をして、警官と目が合った瞬間に走り出した。背後から「待て!」の声。心臓は破裂しそうだったが、それすら快感に変わっていた。角を曲がったとき――前からもう一人の警官が飛び出してきた。「捕まえた!」おじさんは勢い余って押さえつけられ、地面に叩きつけられた。腕をねじ上げられ、背中に膝を乗せられる。「がっ……!」その瞬間、胸の奥でブチッと音がした。心臓発作。必死に声を出そうとしたが、誰も信じなかった。「またふざけてるんだろう」「大げさな芝居はもう通用しないぞ」結局、おじさんはその場で息絶えた。翌日の新聞の片隅に、小さな記事が載った。『挙動不審な男、警察に取り押さえられ死亡』その見出しに、おじさんの“趣味”が書かれることはなかった。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.09
コメント(0)

佐藤幸男。彼はサバゲーの腕前もさることながら、どこかズレた「リアル至上主義」で知られていた。サバゲーフィールドに集まる仲間達の間で今日は少し異常な空気が漂っていた。「今日はちょっと、いつもと違うプレイをしてやるよ」と言っていた佐藤が、バッグから何やら物を取り出した時、仲間たちは最初、彼がまた変なガジェットでも持ってきたのだと思っていた。だが、佐藤が取り出したその物体は、明らかに普通のサバゲー用のエアガンではなかった。それは、見た目が本物に近い実銃――しかも、銃口に消音器がついている。佐藤はまるで子どものように目を輝かせながら、「これが本物の戦場だ!」とニヤリと笑った。周囲はしばらくその銃を見つめた後、全員が声を上げた。「おい、ふざけんな! それ本物だろ!?」「待て、やめろって! ゲームと現実を一緒にするな!」だが、佐藤は全く動じなかった。仲間たちが必死に止めようとする中、彼はその銃を片手に軽く構え、撃つ素振りを見せた。「ちょっと待てって! それはダメだろ!」と田中が叫ぶ。だが、佐藤はただの遊びだと思っていたのか、無視してガチャッと引き金を引いた。「バン!」その瞬間、誰もが凍りついた。最初の音は明らかにエアガンのものではない。音がリアルすぎる、そしてその銃声の響きがあまりにも恐ろしかった。一瞬、フィールド全体が静まり返った。プレイヤーたちは全員、その音を理解していた。佐藤が撃ったのは、エアソフトガンではなく、実際の銃だということを。「おい、マジで危ないだろ!」と叫ぶ声が飛び交ったが、すでに佐藤は「撃っちゃった」という感じで、次々と撃つ構えをしていた。だが、弾が飛び交う前に、警告の声が次々に響く。「やめろ! 本当に撃つなよ!」その時、近くにいた松本が少し動いた瞬間――。「バン!!!」再び実銃の音が鳴り響いた。今度は不幸にも松本がその弾を受けてしまった。左肩にかすった弾が激痛を伴い、彼はその場に倒れ込んだ。「うおおおお!」と絶叫する松本。「おいおい、冗談じゃないぞ!」と井上が必死に叫ぶ。周囲は一気にパニック状態となった。佐藤は撃ったことに驚いているものの、すぐには後悔しない。むしろ、彼の目はさらに輝いているようにも見えた。「これがリアルだろ! 俺の目指すサバゲーはこれだ!」「リアルもクソもない! ふざけんな!」と、今度は他のメンバーが佐藤を取り押さえようとするが、その瞬間、フィールドの端から警察のサイレンが聞こえ始めた。「いや、まじでマジで通報されてる!」と一人が叫ぶ。佐藤は一瞬困惑し、「え、ちょっと待てよ…」と声を漏らす。しかし、その場の空気はすぐに変わる。警察の車がフィールドに到着する頃には、佐藤はすでに周りから引き離され、エアガンとは異なる「本物の銃」を握ったまま、警察に取り囲まれていた。その後、松本は軽傷で済んだものの、彼はしばらく病院で手当てを受ける羽目になり、佐藤は逮捕されることに。警察からは「武器の持ち込みは禁止」と厳しく警告され、サバゲーのフィールドはその後、実銃を持ち込むことに対して非常に厳しく取り締まられることとなった。そして、その日の出来事は、サバゲー界で「リアルサバゲーマスター」として語り継がれることになり、佐藤は「史上最もアホな行動をした男」として伝説の一部となった。その後、誰もが笑いながらも、どこか恐怖を感じるような「あの事件」の話を繰り返すことになるのだった。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.08
コメント(0)

彼の名はA(仮名)昭和の終わりに地方都市で生まれ、両親と妹の4人家族で育った。成績は中の下、運動も普通。目立たず、いじめられるわけでもなく、ただ「存在感が薄い」少年だった。高校を卒業後、大学受験には失敗。浪人もせず、フリーターをするわけでもなく、「まあそのうち」と言って自室にこもった。最初は誰も本気にしていなかった。父親は「働け」と怒鳴り、母親は「就職活動しなさい」と泣き、妹は軽蔑した。しかし彼は動かなかった。理由は単純――外に出るのが怖かったのだ。最初はゲームや漫画、深夜アニメで時間を潰す。生活リズムは夜型に崩れ、朝日はカーテン越しにしか見なくなった。気づけば同年代は大学へ進み、社会に出て、恋愛や結婚をしていく。同窓会の連絡が来ても無視。携帯電話の契約はいつの間にか切れ、友達とも疎遠になった。20代の終わり、父親が病気で倒れた。親戚は「Aを働かせろ」と言ったが、母は「この子は弱いから」と庇った。その「庇い」が決定打となり、彼はますます外の世界から遠ざかった。30代に入るとネット通販と母の買い物で生活が回る。家計は父の年金と、母が内職でつなぐ。Aは一切収入を得ないまま、食費も光熱費も当然のように消費し続けた。「いつか俺だって」という言葉は、すでに口癖のようになっていたが、行動に移ることはなかった。40代。父は亡くなり、母は老け込んだ。妹は結婚して家を出た。家にはAと母の二人だけ。母は「この子を残して死ねない」と言いながら、体を壊しながらも働き続けた。50代。母が亡くなった。葬儀の日、親戚たちは冷たい目でAを見た。「もう50にもなって働いたことがないのか」「生活保護しかないだろう」だが彼は手続きすらできず、しばらく家で飢えに近い生活を送った。やがて役所に事情が伝わり、ケースワーカーが訪れた。生活保護を受け、最低限の暮らしは保障された。しかし仕事の斡旋や就労支援はすべて拒否。「俺には無理だ」と言って布団に潜るだけ。60代、70代。近所でも「変な家の人」として知られ、姿を見かけるのはゴミ出しの数分だけ。人生の大半を閉め切った部屋で過ごし、カレンダーは埃をかぶったまま。外の世界は常に「怖いもの」であり続けた。そして80代。誰に看取られることもなく、布団の上で静かに息を引き取った。葬儀を出す親族もなく、自治体が簡易的に火葬を済ませた。残された部屋には、古びたゲーム機と、色あせたアニメのポスター。日記も手紙もなく、ただ「生涯ニート」という事実だけが彼の人生を語っていた。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.07
コメント(0)

近頃、ニュースを開けば熊の被害ばかりだ。畑を荒らされた、登山者が襲われた、街に出てきた。行政の人間は捕獲だの駆除だの言うが、結局いつも後手に回っている。画面を見つめるたび、青年は胸の奥がざわめいた。「なぜ誰も本気でやらないんだ。俺ならやれる」彼は登山とロッククライミングを趣味にしていた。アンカーを打ち込み、岩肌に鉄の杭を食い込ませ、命を預ける行為に慣れていた。頭の中でひとつの“作戦”が形を取った。熊は冬、巣穴に籠る。ならばその入り口を鉄柵で塞いでしまえばいい。完全に閉じ込めれば、春になっても出てこられず害はなくなる。人々は救われる。俺がやらねばならない。青年は道具を揃えた。登山具、電動ドリル、アンカー、金属柵。作業着姿のまま山奥へと向かう。巣穴を見つけたのは、雪の残る渓谷だった。岩陰の奥に黒々とした穴。かすかな獣臭が漂う。心臓が早鐘を打つ。「ここだ……俺の使命の場所だ」彼は夢中で作業を始めた。岩肌にドリルで穴を開け、アンカーを打ち込み、鉄の棒を組んでいく。ガン、ガン、と金属音が谷に響いた。穴の奥から、低いうなり声が返ってきた。青年は耳を塞がず、むしろ笑った。「出られるもんなら出てみろ。お前はここで終わるんだ」柵が形を成していく。外から押してもびくともしない堅牢な檻。やがて、穴の奥からずしん、と地響きがした。黒い影が揺れ、光る二つの眼が浮かび上がる。柵越しに熊が突進した。鉄がしなり、岩が震える。青年は震えながらも、声を張り上げた。「無駄だ! お前は人間を脅かせない!」熊は吠え、鉄柵に爪を叩きつけた。血が滲み、唾が飛び、目は炎のように燃えていた。だが柵は耐えた。青年は膝をつき、笑い、涙を流した。「これで人は守られる……俺が救ったんだ……」その夜、山は静まり返った。だが翌朝、巡視に来た猟友会の男たちは、柵の前で呆然と立ち尽くした。柵の外に転がっていたのは、青年の登山靴。内側には、肉をむしられた骨が散らばっていた。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.06
コメント(0)

俺が新宿の地下道で寝るようになって、もう五年になる。冬は段ボールと毛布、夏は蚊に耐えるだけ。施しの炊き出しは助かるが、いつも人が多くて、並んでも食えない日もある。「もう俺たち、ここにいても先はないな」そう思い始めたのは、一昨年の冬だった。凍えながら眠っていた仲間のひとりが、朝には冷たくなっていた。誰も泣きはしなかった。ただ、無言で警察を呼んだ。“次は自分かもしれない”という思いが、骨の奥まで沁みた。ある晩、缶酒を飲んでいたとき、偶然隣にいた老人が言った。「山のほうに、廃村があるらしい。電気はないが、家が残ってる。雨風はしのげる」俺はその言葉を忘れられなかった。都会じゃ俺たちは“居てはいけないもの”扱いだ。警備員に追われ、行政に排除され、ただ転がっているだけの石ころだ。けど山なら――俺たちの居場所が作れるかもしれない。次の日から俺は仲間に声をかけた。「一緒に来ないか? 山だ。屋根がある。畑もできる」馬鹿にする奴もいた。「そんなの無理だ、死ぬだけだ」って。けど、目に光を宿す奴もいた。酒に疲れた中年の哲夫、長年現場仕事で体を壊した三上、そして若い女の加奈。最初は五人だった。俺たちは少しずつ金をため、荷物をまとめ、夜明け前に街を出た。リュックには鍋、刃物、少しの食料。バスを乗り継ぎ、最後は歩いた。舗装の途切れた道を越えた先に、それはあった。崩れかけた屋根の家々。草に埋もれた石垣。鳥も鳴かぬ静けさ。だが確かに、家は残っていた。「ここが……俺たちの村だ」最初の一週間は地獄だった。水を引くのに苦労し、食料も底をつき、山菜や川魚でなんとかしのいだ。夜は闇が濃く、都会の光に慣れた目には恐怖でしかなかった。けど、不思議なもんだ。朝日で目覚め、土を掘り、薪を割り、火を囲んで飯を食う。そんな暮らしを続けるうちに、誰も「戻ろう」とは言わなくなった。街では俺たちは“見えない存在”だった。けどここでは、皆で作った畑から芽が出るたびに歓声があがる。一匹の魚を分け合うだけで宴になる。誰も俺たちを追い立てない。時々、不安になる。冬を越せるのか、病気になったらどうするのか。けれど俺は思う。「ここで死ぬなら、それでいい」と。生まれて初めて、俺は“生きている”と思えた。都会で凍え死ぬより、山で仲間と暮らし、土の上で果てるほうが、ずっとましだ。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.06
コメント(0)

夏の終わり、俺たちは二人で北の山に登った。大学のサークル仲間であり、気の合う友人でもある 拓也 と俺。普段はヘラヘラしてるくせに自然のこととなるとやけに真面目なやつだった。目的は山頂の向こうにある湖。人がほとんど立ち入らないという“幻の湖”だ。拓也が地図と衛星写真で見つけてしつこく誘ってきた。「遭難なんかしないって。GPSあるし、予備バッテリーも三つ用意したからな!」その言葉を信じて俺は軽い気持ちでついていった。けれど——あの夜からすべてが変わった。下山途中に夕立が来た。雷鳴が山肌を揺らし、道は泥に飲まれ木々は風で軋んでいた。必死に進むうちにいつの間にかルートを外れていた。気づいたときには完全に迷っていた。GPSは圏外。防水だと思っていた機器も雨に打たれて沈黙した。最初の夜は濡れた枝で小さな焚き火を作り、「明日には道が見つかるさ」と笑い合った。けれど楽観はすぐに削られていった。三日目には食料が尽き、五日目には水を探して沢を彷徨った。それでも拓也は最後まで冷静だった。「こういうときはパニックになったら死ぬ。動くのは最小限、日中は陰で休め」俺は彼に支えられていた。彼がいなければもっと早く心が折れていただろう。七日目。拓也が足を滑らせ崖から落ちた。数メートル下で奇跡的に止まったが足は不自然に曲がっていた。「……おい。痛ぇ……マジで動かねぇ。ごめん……」その顔はいつもの軽口を叩く彼ではなかった。俺は必死で背負おうとした。だが自分の足でさえもう限界だった。「水だけでいい。俺はここに残る。お前が助けを呼んで戻ってきたら……二人とも助かる」弱々しい声なのになぜか俺を安心させる響きがあった。泣きながら首を振ったが、結局彼の言葉に従うしかなかった。背を向けて歩き出すとき拓也が言った。「なあ……助かったらさ。もう一回あの湖に行こうぜ」振り返る勇気はなかった。二日後、登山道で偶然通りかかった登山者に発見された。救助隊に保護され俺は命を繋いだ。けれど拓也が見つかったのはさらに三日後。すでに冷たくなっていた。死因は低体温と脱水。俺が助けを呼びに向かったその翌日には息を引き取っていたらしい。彼のリュックには濡れて歪んだメモ帳があった。滲んだ字でこう書かれていた。「〇〇(俺の名前)が助かったらそれでいい。生きて帰れ。それだけで俺はうれしいから。」俺は今でもあの湖には行けない。拓也の最後の言葉が背中を押すようで同時に鎖のように絡みつくからだ。だから毎年夏の終わりになると山のふもとに立ち寄る。そして静かに手を合わせる。「ありがとう」って。少しだけ泣きながら。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.06
コメント(0)

駅前のロータリー段ボールハウスに暮らす一人のホームレスがいた。誰も名前を知らない。だが街の若者は彼をこう呼んだ。――「最強のホームレス」彼はただの浮浪者ではなかった。段ボールの内側には鉄板を仕込み、防弾仕様。買い物カートは、廃工場から拾ったチェーンと鉄パイプで改造され、まるで装甲車のようになっていた。噂では、酔っ払いが「どけよジジイ!」と蹴りを入れた瞬間、彼はカートを押し込みそのまま数メートル吹き飛ばしたらしい。またある時、中学生が面白半分で石を投げてきた。次の瞬間、ホームレスはゴミ袋の中から巨大なパチンコを取り出し、パチンコ玉を秒速で飛ばした。パチンコ玉は路面をえぐり、コンクリに火花を散らす。「お前ら、命を張る覚悟はあるか?」子供たちは青ざめて逃げ去った。彼の武勇伝は止まらない。夜な夜な段ボールハウスの上で腕立て伏せをし、雨水を貯めたバケツで冷水シャワーを浴びる。筋肉は岩のように硬く、ベンチプレスの代わりに、近所の自販機を揺さぶっていた。地元のチンピラが「小銭よこせ」と囲んだ時のこと。彼は静かに立ち上がり、ジャージのポケットから釘バットを取り出した。次の瞬間、チンピラのバイクを一撃で粉砕。その場にいた全員が、黙って退散したという。人々は囁く。「軍隊経験があるらしい」「いや、元格闘家だ」「CIAに追われているスパイだ」真実は誰も知らない。ただ一つ確かなのは――駅前のベンチで眠るその男に、誰も手を出さなくなったこと。そして今日もまた、空き缶を片手に、街を睨みつけながら彼は呟く。「…この街は俺が守る」👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.05
コメント(0)

深夜、俺たちは四人で廃病院に忍び込んだ。地元では有名な心霊スポットで、噂では「決して見つからない霊安室」があるらしい。最初は肝試しのノリだった。懐中電灯の明かりで廊下を進み、落ちているカルテや錆びたストレッチャーを見つけては笑っていた。しかし、2階に上がったあたりから妙な違和感が出てきた。俺たちの足音とは別に、後ろで「コツ、コツ」と靴音がついてくる。振り返っても誰もいない。「気のせいだろ」と強がったけど、全員が同じ音を聞いていた。しばらくして、廊下の突き当たりに見慣れない鉄扉が現れた。最初に回った時には確かになかった場所だ。「……霊安室?」誰かがつぶやいた。扉の取っ手を引くと、重い音を立てて開いた瞬間――鼻をつんざくような線香のにおいが一気に流れ込んできた。「うわっ!」思わず鼻を押さえた。線香なんてこの廃墟にあるはずがない。室内を覗くと、そこには古びた遺体安置用の引き出しが並んでいた。そのいくつかが半分開いていて、闇の中から冷たい空気が漏れている。そのとき――背後で、ガサリ、と衣擦れの音がした。振り返ると、長い髪の女の後ろ姿が、廊下の奥に立っていた。顔は見えない。ただ静かにこちらを向きかけている。「やばい、出よう!」誰かが叫んだ瞬間、線香のにおいがさらに強まり、視界がぐにゃりと歪んだ。俺たちは我先にと階段を駆け下りた。背後では「コツ、コツ」と、確実に追ってくる足音。出口まで走り抜けたとき、耳元でハッキリと声がした。「……誰を運ぶ?」外に出た瞬間、においも足音も消えていた。振り返ると、窓ガラスの奥に、白衣姿の誰かが立ってこちらを見ていた。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.05
コメント(0)

30代の日本人男性。彼は会社を辞め、語学を磨くためにアメリカへ渡りました。しかし、用意していたシェアハウスは詐欺まがいで消え、手元の貯金も大幅に減少。残された資金で借りられるのは「街で最安のアパート」だけでした。レンガ造りの外壁は崩れ、窓には鉄格子。共用廊下には小便の臭いが染みつき、不動産屋はこう警告しました。「ここで暮らすなら…夜は絶対に出歩かないことだ」入居初日。買い物袋を下げて歩いていると、黒人の少年たちが指をさして笑いました。「Yo! Look, Chinese! Hey, Jackie Chan!」彼は苦笑して通り過ぎました。(違う…日本人だ)そう心の中で呟きながらも、反論はできません。その日から毎日のように「チャイナ!」と囃し立てられ、精神はすり減っていきました。夜になると、廊下からは大麻の匂い。隣室からは口論と皿が割れる音、天井からは靴音。まともに眠れない日々が続きました。買い物の帰りには、路地で囲まれることも。「Money! Money, Japanese boy!」財布を奪われそうになり、とっさに小銭を投げて必死に逃げました。ある夜、突然ドアが蹴られました。銃を持った男が叫びます。「Yo! You hide him here!?」必死に「No! Nobody!」と叫ぶと、男は睨んで去っていきました。しかしドアノブはしばらくガチャガチャと動き続け、心臓は凍りつきました。路地でまた少年たちに囲まれていた時、ひとりの中年黒人が声をかけてきました。「Hey, leave him alone. He’s not your toy.」少年たちは舌打ちし、散っていきました。彼の名はマーカス。地元ギャングの幹部と噂される男でした。「お前、日本人か?こんなとこで暮らすなんてクレイジーだな」マーカスは気さくで、時に食料を分けてくれることもありました。荒んだ生活の中で、唯一心を許せる相手――それがマーカスだったのです。しかし生活はますます苦しくなっていきます。スーパーでは店員にまで「Bruce Lee!」と笑われ、帰り道は常に尾けられる。ある夜は、フードを被った男がドアを叩き続けました。「Open!! Motherfucker!!」耳を塞ぎ、声を殺して朝を待つしかありませんでした。胃は痛み、笑顔は消え、ただ怯える毎日。(俺は…なんでこんなところに来たんだろう)ある晩、マーカスが缶ビールを片手に訪れました。「Listen…近いうちにデカい抗争が始まる。街が火を吹くぞ」彼の目は冗談ではありませんでした。「お前は部外者だ。ここにいたら死ぬ」そう言って、くしゃくしゃの札束を渡してきたのです。「今すぐ出ろ。俺らの世界に関わるな」彼はただ頷くしかありませんでした。夜明け前。荷物を置き去りにし、札束を握りしめてアパートを出ました。背後から「チャイニーズ!」と声が飛びますが、振り返りません。バスに飛び乗り、窓から遠ざかるスラム街を見つめました。落書きだらけの壁、鉄格子、薬を売る少年たち。そして路地に立つマーカスの姿。――マーカスがいなければ、俺はここで死んでいただろう。数日後、ニュースで「黒人街で大規模なギャング抗争が発生」と報じられました。銃撃戦、火の手、死者多数。そこにマーカスの名前があったのかどうかは、誰にもわかりません。ただ彼は画面を見つめ、声にならない祈りを捧げました。二度と戻らない。だが、あの人のことは一生忘れない。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.04
コメント(0)

田島は自称「プロの殺し屋」だった。だが実際には、裏社会からも相手にされない落ちこぼれ。銃もナイフも扱いは下手、計画性もゼロ。それでも本人は一流気取りで「俺に任せろ」と胸を張る。今回のターゲットは、とある企業幹部。依頼主からの情報は「スーツを着た中年男」「駅前の喫茶店で毎朝モーニングを食べている」というものだった。田島は駅前に立ち、周囲を眺めた。その瞬間、視線が止まった。スーツ姿の中年男性――だがそれはターゲットではなく、ただのサラリーマンだった。「間違いねぇ…こいつだ」ちゃんと確認もせずポケットからナイフを取り出す。背後から襲いかかり、狙ったはずの心臓を外し、肩を刺すだけ。サラリーマンは悲鳴をあげて逃げ出し、周囲は大騒ぎに。当然のように警察が駆けつけ、田島はその場で取り押さえられた。取り調べで田島は平然と言った。「情報が曖昧だったから間違えただけだ」「次はちゃんとやる」だが、刑事が突きつけた証拠写真を見て青ざめる。本物のターゲットは別の店で朝食をとっており、依頼主はすでに警察に通報していたのだ。つまり田島は雇い主にすら裏切られていた。「お前…プロどころかただの馬鹿じゃないか」刑事が吐き捨てるように言うと、田島は黙り込むしかなかった。こうして「最悪に頭の悪い殺し屋」は、殺しを一度も成功させないまま逮捕された。裏社会でも相手にされず、社会からも爪弾き。彼の名前が表に出ることは二度となかったが、刑務所の中でいまだに自分を「伝説のヒットマン」と思い込んでいるという。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.04
コメント(0)

男は郊外のアパートの一室で黙々と作業を繰り返していた。机の上には、カラフルな風船、安物のビニールひも、そして無数の石。石は近くの河川敷で拾ったもので、大きさは卵から握り拳程度。ひもでしっかり結び、試しに持ち上げると、風船はかろうじて浮力を保つ。「このくらいなら落ちてきても死ぬな…もっと重いのがいい」男はニヤリと笑い、さらに大きめの石を選んで結んでいった。最初の実験は真夜中だった。人けのない駐車場から数個の風船を放つ。静かな夜空へ吸い込まれるように昇っていく風船。数分後、遠くで「ガシャン!」という音が響いた。翌日、住宅街の屋根瓦が割れているのを確認し、男は確信した。「いける。これなら大事故を起こせる」風船は数十個、いや百個以上。男はホームセンターで購入したヘリウムボンベを使い、部屋いっぱいに風船を膨らませた。風船の表面には太陽光を反射させる銀色のコーティング。遠目には祭りの余興のようにしか見えない。放出のタイミングも綿密に計算していた。気象庁のサイトで風向きと風速を調べ、午後6時ごろ、街の中心部へと流れることを確認。男は小高い丘の上で風船の束を解き放った。夕暮れの空に舞い上がる光景は、一見すると美しくすらあった。最初に被害が出たのは、国道沿いの交差点だった。走行中のトラックのフロントガラスに石が直撃し、ガラスが粉々に砕けた。運転手は必死にハンドルを握りしめ、奇跡的に大事故にはならなかったが、道路は大渋滞となった。次に、駅前広場に落下。買い物客のすぐ横に石が落ち、悲鳴が上がる。「爆発物か!?」「テロじゃないか!?」とパニック状態に陥る群衆。警察はすぐに動いた。落下物の調査から「石と風船の組み合わせ」という異常な仕掛けが判明。さらに風船の破片には、特定のネットショップでしか販売されていない特殊な銀色コーティング材が残っていた。購入記録をたどることで、男の名前が浮上する。家宅捜索で見つかったのは、詳細に書き込まれた気象データと、落下予測図。彼は捕まった後も淡々と語った。「俺はただ風船を飛ばしただけ。空に上げるのは自由だろう?」しかし、検察は明確に「危険物による殺人未遂」と断じた。男は社会を震撼させた“風船サイコパス”として報道され、長い刑期を科されることになった。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.03
コメント(0)

ある町で若者に人気のドネルケバブ屋台で「ある事件」が発覚した。この店の看板メニューは「ミックススペシャル」。通常のチキンやビーフとは違う、ここでしか味わえない“特別な味”として多くの常連客に愛されていた。「一度食べたら忘れられない」「他の肉じゃ物足りない」そんな声がSNSに溢れ、深夜でも行列ができるほどの盛況を見せていた。しかし同じ時期、渋谷周辺では不自然な行方不明者が相次いでいた。いずれも20代から40代の男女。最後に目撃された場所のひとつが問題のケバブ屋付近だった。警察が内偵を進めた結果、決定的な証拠が見つかる。店主が屋台の裏で真夜中に大きな袋を運び込んでいる姿を張り込み中の刑事が確認したのだ。その袋から滴り落ちる赤黒い液体――。後日、店の冷凍庫を家宅捜索した警察は戦慄した。袋詰めにされた大量の肉片。それらは通常の食肉ではなく、DNA鑑定の結果、すべて人間のものであることが判明した。店主は近隣で襲った人間を解体し、それをチキンやビーフと“ブレンド”して「ミックススペシャル」として販売していたのだ。しかも味を誤魔化すため、大量のスパイスと油で加工していたため客はまったく疑うことなく食べ続けていた。ニュースが流れると、SNSは騒然となった。「私、あのケバブ何度も食べた…」「まさかあの味が……」「もう二度と肉が食べられない」食べた経験がある者たちは恐怖と吐き気に襲われ、病院に駆け込む者まで出た。事件は瞬く間に「人肉ケバブ事件」と呼ばれ、戦後最大級の食品犯罪として報じられた。逮捕されたのは中東出身の40代の男。取り調べに対し彼はこう供述した。「人肉こそが究極の肉だ。日本人は誰も気づかなかった。あの“ミックススペシャル”が一番人気だったことが、何よりの証拠だ」その異常な言葉に報道陣も凍りついた。事件後、屋台は撤去され、現場は花束で埋め尽くされた。だが今も渋谷の一部では恐る恐る囁かれるという。「本当はまだ、あの店主に弟子がいたらしい」「“ミックススペシャル”の味が忘れられないって客もいる」そしてふと考えてしまう。――あなたが食べたあのケバブ。本当に「チキン」だったと、言い切れるだろうか?👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.02
コメント(0)

有明湾の干潟には、胸ビレを使って泥の上を器用に動き回るムツゴロウが生息している。彼らはエラだけでなく皮膚や口腔内でも呼吸ができるため、一定時間であれば陸上で生きられる。だが、その耐久時間は長くても数時間。しかも陸上では体がすぐに乾燥し、体温も上がるため、常に水分を失わない工夫が必要だった。202X年夏、有明湾の干潟から一匹のムツゴロウが道路に出てきた。潮のタイミングを間違えたのか、あるいは本能的な移動欲求だったのか。彼は胸ビレを使い、ぴょんぴょんとアスファルトの上を進み始めた。通行人は最初、ただの魚の死骸かと思った。しかし近づくとピクリと動く。「まだ生きてるぞ!」そう気づいた一人が、持っていたペットボトルの水をかけると、ムツゴロウは息を吹き返したように体を跳ねさせた。福岡までの距離はおよそ数十キロ。本来なら到底不可能な距離だが、奇跡ともいえる偶然が重なった。自転車に乗っていた高校生が、部活帰りのスポーツドリンクを惜しげもなくかけてやった。散歩中の主婦が、日傘でしばらく影を作ってやった。トラック運転手が道路脇の水たまりまでわざわざ寄せて置いてやった。そのたびに干からびかけたムツゴロウは体を震わせなんとか前進を続けた。数日をかけ、なんとムツゴロウは奇跡的に福岡市内の那珂川までたどり着くことが出来たのだ。体表は傷だらけで泥のぬめりも失われ、かつての艶やかさはなかった。そしてなにより――有明湾にいた頃の優しく愛嬌のある顔つきは消えていた。表情は険しく、眼はギラギラと光り、まるで獲物を狙う野生の獣のようだった。最後の力を振り絞り、水辺に身を投げ出した。川の水が体を覆った瞬間、ムツゴロウはピクリと動き再び呼吸を取り戻した。のちにSNSで「道路を歩いていた魚を助けた」という報告が相次ぎ話題となった。研究者が現場に駆けつけたが、川に入ったムツゴロウはすでに見つからなかった。それが本当に有明湾から歩いてきた一匹だったのか、あるいはただ迷い込んだ個体だったのか、今も真相はわからない。ただひとつ確かなのは――人々の小さな行動が一匹の命を福岡まで導いた…ということだけである。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.02
コメント(0)

町のカードショップには必ず一人は「常連」がいるものだ。その日もバトル大会が開かれ和やかに進んでいたが、ひときわ異様な存在感を放つプレイヤーが現れた。黒いコートにサングラス、髪はぼさぼさ。デッキを握る手は震えているのに、その目だけは異様に爛々と輝いていた。「ウヘヘヘ……お前のライフを、削り尽くすぞォ……」会場の空気が一瞬で凍りつく。彼はカードを一枚出すたびに身を震わせ、まるで戦場にいる兵士のように叫んでいた。カードを場に置くだけでなく、召喚されたモンスターの声を真似し、時には椅子から立ち上がって攻撃モーションを再現する。「これが!魂の一撃だァ!!」周囲の子ども達は怯え、保護者たちは目を逸らした。だが本人は完全に別の世界に入り込んでいた。「カードは……現実よりも現実だ。ここで勝つことが、俺の……存在理由……ウヘヘヘッ!」彼は連勝を重ねるたびに興奮を増し、最後には机を叩き割らんばかりに叫んだ。「俺の勝利ィィィィッ!!」その瞬間、彼は笑い声をあげながら天井を仰ぎ、ふらりと後ろへ倒れ込んだ。床に落ちたカードを拾った人が言うには、そこには血が滲んでいたという。以降、彼の姿は大会で見かけられなくなった。ただ、深夜のカードショップで「誰もいないのにシャッフルの音がする」という噂が広まり時折「ウヘヘヘ……ドローだ……」と不気味な声が聞こえることがあるそうだ。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.01
コメント(0)

“思い出してくれる人がいるなら幸せでした”――彼女の最後の言葉高校のクラスに、ひとりの女の子がいました。名前はここでは出しませんが、仮に「佐藤さん」とします。彼女はいつも教室の隅に座っていて、授業中は静かにノートをとり、休み時間は本を読んでいるような子でした。明るい子たちの輪に混ざることはなく、体育のペアを決めるときや、文化祭のグループを作るときには、最後まで余ってしまうことが多かった。それでも、彼女は不満を口にすることはなく、笑うことも泣くこともなく、淡々と学校に通い続けていました。私はといえば、特別仲良くもなく、遠くから見ているだけ。ただ、席が近かったから、ノートを見せてあげたり、消しゴムを貸したりすることがあった程度でした。そのときに「ありがとう」と彼女が小さく微笑む顔は、今でも忘れられません。卒業の日3月の卒業式。教室は笑い声や涙であふれていて、写真を撮る子、制服に寄せ書きをお願いする子、廊下で抱き合って泣く子。そんな中で、佐藤さんはいつも通り静かでした。黒い制服のまま、窓際に座って外を眺めていて、誰かに声をかけられることもほとんどなかった。私も、気になりながらも友達と写真を撮る方に夢中になってしまった。最後に彼女を見たのは、そのときの横顔でした。それが――本当に「最後」になってしまうとは思いもしなかったのです。訃報卒業から数日後、同級生のグループLINEで「佐藤さんが亡くなったらしい」という噂が流れました。最初は誰も信じられなくて、「デマでしょ」「そんなわけない」と送り合っていたけれど、やがて本当だと分かりました。詳細は家族もあまり語らず、学校にも正式な説明はありませんでした。ただ、彼女の部屋から見つかった一枚の置き手紙だけが、周囲に伝えられました。一枚の手紙白い便箋に、震えるような文字でこう書かれていたそうです。「私のことを、一度でも思い出してくれる人がいるなら、私は幸せでした」たったそれだけ。長い説明も、誰かへの恨み言もなく。その一文が、すべてでした。残された後悔私は、その言葉を聞いて心が張り裂けそうになりました。たしかに私は、佐藤さんのことを「ただのクラスメイト」としか見ていなかった。困っているときに話しかけることも、彼女が一人でいるときに一緒にいてあげることもなかった。でももし――あの卒業式の日に、「一緒に写真を撮ろうよ」って声をかけていたら。「卒業おめでとう」って笑いかけていたら。彼女は、自分が“誰にも思い出されない存在”だなんて思わずに済んだのかもしれません。今でも時々、机に向かうと、隣で小さく本を読んでいた彼女の姿を思い出します。あの静かな横顔を、あの小さな「ありがとう」の笑顔を。私は、彼女が望んでいた「思い出す人」になれているのだろうか。それとも、後悔を埋めるために都合よく思い出しているだけなのか。答えは分かりません。ただ一つ言えるのは――彼女を忘れない限り、私は彼女に“幸せ”を届け続けられるのだろう、ということ。そして、その小さな責任を私は一生背負っていくのだと思います。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.01
コメント(0)

今日はちょっと変わった話をしたいと思います。懐かしいオモチャ「ビーダマン」。子どもの頃に遊んだことがある方も多いですよね。でも、もしそのビーダマンが“人を傷つける道具”に変わっていたら――?そんな事件が、昔あったのをご存じでしょうか。最初の犠牲者は、夜の川沿いを歩いていた会社員の男性でした。男性は胸を撃ち抜かれて即死。現場に銃弾はなく、残されていたのは 粉々になったビー玉の破片 だけ。数日後、また別の路地で同じような遺体。警察は「不可解な事故」として処理しようとしましたが、続く3件目でようやく気づいたのです。――これは連続殺人だ。捜査線上に浮かんだのは、元おもちゃ工場勤務の男、加藤信一(仮名)。彼のアパートを家宅捜索した警察官が見たのは、壁一面に並ぶビーダマン。どれも、子どもの遊び道具ではなく、金属とガス管で改造された“兵器”でした。「どうしてこんなことをした」刑事が問い詰めると、加藤は笑いながらこう言ったそうです。「俺が作ったものが、やっと人に届いたんだ」さらに彼は続けます。「昔から、子どもたちがビーダマンを打ち合って喜ぶのを見てた。でも俺の作った試作品は“危険すぎる”って理由で廃棄されたんだ。俺の努力はゴミになった」「だから俺は証明したかったんだ。あの玩具には、世界を変える力があるって」刑事が「それはただの殺人だ」と告げると、加藤は首を振り、呟きました。「違う……これは進化だ。俺はただ、ビー玉を未来にしただけだ」驚くべきことに、加藤は仕掛けたビーダマンの位置を「ランダムに設置した」と自供しました。川沿い、公園、バス停。まるで子どもの頃に宝物を隠すように、彼は無差別に置いていったのです。「誰が踏むか、誰に当たるか分からない。偶然が選んだ相手こそ“真のプレイヤー”だ」彼にとって殺人は“遊び”でしかありませんでした。加藤は逮捕されましたが、警察は押収した改造ビーダマンの数を公表していません。噂では「一部はまだ街に残っている」という声もあります。そしていまも、夜の公園でビー玉が転がる音を聞いたという報告が絶えません。それがただの子どもの遊びなのか。それともまだ作動していない“殺人ビーダマン”なのか。……誰にも分からないのです。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.09.01
コメント(0)

8月31日。 この日になると、私は決まってあの部屋を思い出す。 駅から15分、坂道を登った先にある古いアパートの一室。 風通しのいい和室の窓際に、いつも君は座っていた。 風鈴が、ちりん、と鳴るたびに 君の笑い声もどこかで重なって聞こえるような気がして。 大学1年の夏。 同じサークルで出会った君とは、なぜか自然に打ち解けて 気がつけば、ほとんど毎日君の部屋に入り浸っていた。 特別な言葉はなかったけど、 あの時間が「特別」だったことは、きっとお互いわかっていたと思う。 でも、夏が終わる頃── 君は急に地元に戻ることを決めた。 「また来年、夏になったら帰ってくるよ」 そう言って、少し寂しそうに笑った。 それが、君の最後の言葉だった。 その後、私は毎年夏が来るたびに、君のことを思い出す。 あの部屋、あの風鈴、そして君の笑顔。 何気ない日常が、どうしてこんなにも大切に思えるのだろう。 何度も、君に会いたいと思った。 今日、久しぶりに君からの手紙が届いた。 「元気でやってる? 地元の風景、なかなかいいところだよ。」 「でも、やっぱり君の作る抹茶の味が恋しい。いつかまた、一緒に飲みたいな。」 手紙の最後には、君があの部屋の風鈴を見つけて、また一緒に鳴らしたいと言っていた。 ちりん── その音が、まるで「元気でね」と言ってくれているようで。 さよならは言わなかったけど。 きっと、またいつか。 風鈴が鳴る夏に、君に会える気がする。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.08.31
コメント(0)

毎年8月の終わりが近づくと決まって心がざわつく。 蝉の鳴き声が少し遠くなって、夜風がどこか涼しくなる頃。 ふと、あの子のことを思い出してしまう。 高校2年の夏。 クラスで一番静かだった「君」とは、なぜか不思議と気が合って、毎日一緒に下校していた。 ある日、突然転校することになった「君」は、 「8月31日の夜、電話していい?」とだけ言って学校を去った。 そして迎えた、あの日の夜。 私はずっと電話の前で待っていたけど…… 結局、その電話が鳴ることはなかった。 ──翌日、君が交通事故で亡くなったと友達から聞かされた。 しばらく私は、電話のベル音を聞くたびに胸が締めつけられていた。 鳴らなかった電話。届かなかった言葉。 あの夜、何を話そうとしてたの? それから10年が過ぎた今年の夏。 実家の整理をしていた母が、昔の黒いコードレス電話を見つけてくれた。 なんとなく電源を入れてみた。 充電なんて切れてるはずなのに── 一瞬、画面が光って、留守番メッセージのアイコンが点滅した。 再生ボタンを押すと、 「……もしもし、○○ちゃん? 〇〇だよ。 今、電車の中。ちゃんと、8月31日、電話できたよ。 ちゃんと伝えたくて…ありがとう。 一緒にいた時間……ほんとに楽しかった。 いつかまた会えたらいいな──」 ノイズ混じりの懐かしい声だった。 録音された日付を見ると、 2013年8月31日 23:58 あの日、君はちゃんと電話してくれてたんだ。 なのに私は、受話器を握る手が震えて何も言えなかった。 涙で顔がぐちゃぐちゃになった。 ずっと探していた「さよなら」が、ようやく届いた気がした。 ──夏の終わりに、10年前の声が、私を救ってくれた。👉怖い話まとめサイト開設しました!
2025.08.31
コメント(0)
全39件 (39件中 1-39件目)
1

![]()