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2025.08.31
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テーマ: 小説(1398)
カテゴリ: 切ない話

毎年8月の終わりが近づくと決まって心がざわつく。



蝉の鳴き声が少し遠くなって、夜風がどこか涼しくなる頃。

ふと、あの子のことを思い出してしまう。





高校2年の夏。

クラスで一番静かだった「君」とは、なぜか不思議と気が合って、毎日一緒に下校していた。



ある日、突然転校することになった「君」は、

「8月31日の夜、電話していい?」とだけ言って学校を去った。





そして迎えた、あの日の夜。

私はずっと電話の前で待っていたけど……



結局、その電話が鳴ることはなかった。



──翌日、君が交通事故で亡くなったと友達から聞かされた。





しばらく私は、電話のベル音を聞くたびに胸が締めつけられていた。

鳴らなかった電話。届かなかった言葉。

あの夜、何を話そうとしてたの?





それから10年が過ぎた今年の夏。

実家の整理をしていた母が、昔の黒いコードレス電話を見つけてくれた。



なんとなく電源を入れてみた。

充電なんて切れてるはずなのに──



一瞬、画面が光って、留守番メッセージのアイコンが点滅した。





再生ボタンを押すと、




「……もしもし、○○ちゃん? 〇〇だよ。

今、電車の中。ちゃんと、8月31日、電話できたよ。

ちゃんと伝えたくて…ありがとう。

一緒にいた時間……ほんとに楽しかった。

いつかまた会えたらいいな──」




ノイズ混じりの懐かしい声だった。



録音された日付を見ると、

2013年8月31日 23:58





あの日、君はちゃんと電話してくれてたんだ。



なのに私は、受話器を握る手が震えて何も言えなかった。

涙で顔がぐちゃぐちゃになった。



ずっと探していた「さよなら」が、ようやく届いた気がした。





──夏の終わりに、10年前の声が、私を救ってくれた。



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最終更新日  2025.09.17 15:47:23
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