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2025.09.01
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カテゴリ: 後味の悪い話
“思い出してくれる人がいるなら幸せでした”――彼女の最後の言葉


高校のクラスに、ひとりの女の子がいました。

名前はここでは出しませんが、仮に「佐藤さん」とします。



彼女はいつも教室の隅に座っていて、授業中は静かにノートをとり、休み時間は本を読んでいるような子でした。

明るい子たちの輪に混ざることはなく、体育のペアを決めるときや、文化祭のグループを作るときには、最後まで余ってしまうことが多かった。



それでも、彼女は不満を口にすることはなく、笑うことも泣くこともなく、淡々と学校に通い続けていました。



私はといえば、特別仲良くもなく、遠くから見ているだけ。

ただ、席が近かったから、ノートを見せてあげたり、消しゴムを貸したりすることがあった程度でした。

そのときに「ありがとう」と彼女が小さく微笑む顔は、今でも忘れられません。


卒業の日




教室は笑い声や涙であふれていて、写真を撮る子、制服に寄せ書きをお願いする子、廊下で抱き合って泣く子。

そんな中で、佐藤さんはいつも通り静かでした。



黒い制服のまま、窓際に座って外を眺めていて、誰かに声をかけられることもほとんどなかった。

私も、気になりながらも友達と写真を撮る方に夢中になってしまった。

最後に彼女を見たのは、そのときの横顔でした。



それが――本当に「最後」になってしまうとは思いもしなかったのです。



訃報


卒業から数日後、同級生のグループLINEで「佐藤さんが亡くなったらしい」という噂が流れました。

最初は誰も信じられなくて、「デマでしょ」「そんなわけない」と送り合っていたけれど、やがて本当だと分かりました。



詳細は家族もあまり語らず、学校にも正式な説明はありませんでした。

ただ、彼女の部屋から見つかった一枚の置き手紙だけが、周囲に伝えられました。






白い便箋に、震えるような文字でこう書かれていたそうです。



「私のことを、一度でも思い出してくれる人がいるなら、私は幸せでした」



たったそれだけ。

長い説明も、誰かへの恨み言もなく。

その一文が、すべてでした。



残された後悔



私は、その言葉を聞いて心が張り裂けそうになりました。

たしかに私は、佐藤さんのことを「ただのクラスメイト」としか見ていなかった。

困っているときに話しかけることも、彼女が一人でいるときに一緒にいてあげることもなかった。



でももし――あの卒業式の日に、

「一緒に写真を撮ろうよ」って声をかけていたら。

「卒業おめでとう」って笑いかけていたら。



彼女は、自分が“誰にも思い出されない存在”だなんて思わずに済んだのかもしれません。



今でも時々、机に向かうと、隣で小さく本を読んでいた彼女の姿を思い出します。

あの静かな横顔を、あの小さな「ありがとう」の笑顔を。



私は、彼女が望んでいた「思い出す人」になれているのだろうか。

それとも、後悔を埋めるために都合よく思い出しているだけなのか。



答えは分かりません。

ただ一つ言えるのは――



彼女を忘れない限り、私は彼女に“幸せ”を届け続けられるのだろう、ということ。



そして、その小さな責任を私は一生背負っていくのだと思います。

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最終更新日  2025.09.17 15:45:33
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