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2025.09.06
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カテゴリ: 切ない話
夏の終わり、俺たちは二人で北の山に登った。

大学のサークル仲間であり、気の合う友人でもある 拓也 と俺。



普段はヘラヘラしてるくせに自然のこととなるとやけに真面目なやつだった。



目的は山頂の向こうにある湖。

人がほとんど立ち入らないという“幻の湖”だ。

拓也が地図と衛星写真で見つけてしつこく誘ってきた。





「遭難なんかしないって。GPSあるし、予備バッテリーも三つ用意したからな!」





その言葉を信じて俺は軽い気持ちでついていった。



けれど——あの夜からすべてが変わった。










雷鳴が山肌を揺らし、道は泥に飲まれ木々は風で軋んでいた。

必死に進むうちにいつの間にかルートを外れていた。



気づいたときには完全に迷っていた。

GPSは圏外。防水だと思っていた機器も雨に打たれて沈黙した。



最初の夜は濡れた枝で小さな焚き火を作り、

「明日には道が見つかるさ」と笑い合った。

けれど楽観はすぐに削られていった。







三日目には食料が尽き、

五日目には水を探して沢を彷徨った。



それでも拓也は最後まで冷静だった。



「こういうときはパニックになったら死ぬ。





俺は彼に支えられていた。

彼がいなければもっと早く心が折れていただろう。







七日目。

拓也が足を滑らせ崖から落ちた。



数メートル下で奇跡的に止まったが足は不自然に曲がっていた。











その顔はいつもの軽口を叩く彼ではなかった。



俺は必死で背負おうとした。

だが自分の足でさえもう限界だった。





「水だけでいい。俺はここに残る。

お前が助けを呼んで戻ってきたら……二人とも助かる」





弱々しい声なのになぜか俺を安心させる響きがあった。

泣きながら首を振ったが、結局彼の言葉に従うしかなかった。



背を向けて歩き出すとき拓也が言った。





「なあ……助かったらさ。
もう一回あの湖に行こうぜ」





振り返る勇気はなかった。







二日後、登山道で偶然通りかかった登山者に発見された。

救助隊に保護され俺は命を繋いだ。



けれど拓也が見つかったのはさらに三日後。

すでに冷たくなっていた。



死因は低体温と脱水。

俺が助けを呼びに向かったその翌日には息を引き取っていたらしい。



彼のリュックには濡れて歪んだメモ帳があった。

滲んだ字でこう書かれていた。





「〇〇(俺の名前)が助かったらそれでいい。

生きて帰れ。

それだけで俺はうれしいから。」





俺は今でもあの湖には行けない。

拓也の最後の言葉が背中を押すようで同時に鎖のように絡みつくからだ。



だから毎年夏の終わりになると山のふもとに立ち寄る。

そして静かに手を合わせる。



「ありがとう」って。

少しだけ泣きながら。

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最終更新日  2025.09.17 15:41:02
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