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2025.09.23
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カテゴリ: 怖い話



武道好きの仲間と稽古を見学したり、道場主の話を聞いたりするのが楽しみで何度か通っていた。



ある日、稽古の後に年配の門下生が低い声でこう言った。


「……今度、決闘がある」


最初は冗談だと思った。現代日本で、しかも真剣での決闘なんてありえないだろうと。

だが、その場にいた者たちは誰一人笑わなかった。目は真剣で空気は重く沈んでいた。



後から聞いた話では、決闘に臨む二人は同じ流派に属していたが長年の確執があった。

稽古試合での因縁、指導者の後継を巡る争い、そして個人的な侮辱。

それらが積み重なりついに「言葉ではなく刀で決着をつける」とまでなったのだという。



もちろん現代にそんなことをすれば警察沙汰だ。





決闘が行われたのは夏の夜、道場の裏手の広場だった。

照明はなく、月明かりと懐中電灯の弱い光だけが頼りだった。

集まったのは十数人。皆が口を閉ざし固唾を呑んで見守っていた。



二人は袴に真剣を差して向かい合った。
互いに名乗りもなく合図もない。ただ静かに間合いを詰めていく。

その時点で冗談ではないことを思い知らされた。
彼らの目には迷いがなく、稽古の延長ではなく「殺し合い」を前提にしていた。



最初の音は刀が抜かれる「シャッ」という金属の擦れる音だった。
次の瞬間、鋭い一閃。
空気が裂ける音が耳を打つ。
二人は数合打ち合い刃と刃が火花を散らすように響いた。




片方の肩口に鋭い一撃が入り、鮮血が飛んだ。
倒れた男は呻き声を上げ地面に崩れ落ちる。
もう一方はすぐに刀を収め背を向けて歩き去った。



残された者たちは慌ただしく動き、倒れた男を抱え上げてどこかへ運んでいった。

誰も「勝敗」や「正しさ」について口にしなかった。





私はただ立ち尽くし震えながら思った。
――本当に人はまだこんな形で争うのか。


あの夜のことを誰かに話したことはほとんどない。
信じてもらえるとは思わないし、話すだけで自分まで関わったと誤解されるだろうからだ。


だが、あの刀の音と血の匂いだけは今でも忘れられない。
真剣同士の決闘は確かにこの目で見た。
そしてもう二度と見たくはない。

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最終更新日  2025.09.23 15:39:36 コメントを書く


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