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地元では有名な心霊スポットで、噂では「決して見つからない霊安室」があると言われている。
最初は単なる肝試しのノリだった。
懐中電灯の明かりで廊下を進み、落ちているカルテや錆びたストレッチャーを見つけては笑って騒いでいた。
しかし2階に上がったあたりから妙な違和感が出てきた。
自分たちの足音とは別に後ろから「コツ、コツ」と靴音がついてくる。
でも振り返っても誰もいない。
「気のせいだろ」と強がったけど、全員が同じ音をたしかに聞いていた。
恐らく病院のほとんどを回っただろう。
でも噂の霊安室は見当たらなかった。
そろそろ帰ろうかという話になり出口に向かっていると、
仲間の一人が言った。
「おい、これってもしかして...」
何度も通ったところだがこんなところに扉は無かったはず。
でもたしかに「霊安室」と書かれたプレートが掲げられた鉄扉があった。
「え、ここ何度も通ったけど絶対こんな部屋なかったよな...?」
誰かがつぶやいた。でもその通りだった。
扉の取っ手を引くと、重い音を立てて扉は開いた。
すると鼻をつんざくような線香のにおいが一気に流れ込んできた。
「うわっ!」
思わず声が出てしまった。
まるでさっきまで線香を焚いていたようなほど鮮明な臭いだったのだ。
室内を覗くとそこには古びた遺体安置用の引き出しが並んでいた。
そのいくつかが半分開いていて、闇の中から冷たい空気が漏れている。
そのとき――
背後で、ガサリ、と衣擦れの音がした。
振り返ると、長い髪の女の後ろ姿が、廊下の奥に立っていた。
顔は見えない。
ただ静かにこちらを向きかけている。
「やばい、出よう!」
誰かが叫んだ瞬間、線香のにおいがさらに強まり、視界がぐにゃりと歪んだ。
俺たちは我先にと階段を駆け下りた。
背後では「コツ、コツ」と、確実に追ってくる足音。
出口が見えてきたところで耳元でハッキリと声がした。
「……新しいご遺体ですね。
外に出た瞬間、線香のにおいも足音も消えていた。
後ろを振り返ると....
窓のところで白衣姿の女がこちらを見ていた。
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