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【商品の「役割」を理解することが、戦略の精度を決める】
商品を売るという行為は、単に「良いものを作れば勝手に売れる」という単純な話ではありません。現代のように情報が溢れ、選択肢が無限に広がる市場においては、たとえ魅力的な商品であっても、適切に伝え、届けなければ売れません。そして、限られたリソース──たとえばお金や時間、人的体力の中で、どの商品にどれだけの「宣伝コスト」を割り振るかは、経営・マーケティングにおける極めて重要な意思決定です。
この意思決定の精度を高めるために、まずやるべきことがあります。それは、自分が扱っているすべての商品やサービスに対して、「この商品は、自分のビジネスにおいてどんな役割を担っているのか?」という視点で整理し直すことです。売れる・売れないといった短絡的な評価だけで商品を見てしまうと、ビジネスの全体像がぼやけてしまいます。重要なのは、「売れるかどうか」ではなく、「その商品が果たすべき役割は何か」という視点です。
例えば、手元に3種類の商品があるとしましょう。それぞれに異なる売れ行きや特性があるかもしれませんが、実はどれも意味のある存在であり、戦略上の必要なピースになり得ます。ここで大切なのは、それぞれの商品が売上を構成する“役者”として、どの舞台に立ち、どんなセリフを語るべきかを理解しておくことです。そうすることで、宣伝活動や販売戦略の精度が大きく変わってきます。
商品には、おおまかに言って三つのタイプがあります。ひとつは「売れる商品」。これは市場に受け入れられており、積極的に紹介することで高い確率で売上を生んでくれる商品です。もうひとつは「あまり売れない商品」。一見、無駄に見えるかもしれませんが、実は他の商品を売るための「補助線」として極めて重要な機能を持っています。そして三つ目が「売らなければならない商品」。これは直接的な売上にはつながらないかもしれませんが、将来的に大きな意味を持つ「機会創出型」の商品です。
このように分類することで、宣伝や営業の現場で「どの商品を、どの順番で、どの程度アピールすべきか」が見えてきます。たとえば短期的にキャッシュが必要な状況ならば、売れる商品に集中することが合理的です。一方で、ブランドの中長期的な成長を視野に入れるなら、売れにくい商品や、まだ市場に浸透していない商品にも一定のリソースを振り分ける必要があるかもしれません。
特に、あまり売れない商品の価値は過小評価されがちです。しかし、消費者心理を理解すれば、その価値は明らかになります。人は選択の際に、極端な選択肢を避け、真ん中を選びやすいという性質があります。この心理傾向は「ゴルディロックス効果(松竹梅の法則)」と呼ばれています。三段階の選択肢を提示した際、人は真ん中を“安全な選択”と感じ、そこに安心して着地しようとするのです。
また「ジャム理論」と呼ばれる心理実験では、選択肢が多すぎると人はかえって選べなくなり、購入行動に至りにくくなることが分かっています。逆に選択肢が少なすぎても不安が生じ、「これしか選べないのか?」という心理が働きます。つまり、選択肢の「調整」が購買における重要な要素であり、売れにくい商品はその調整役、いわば“見せ球”として機能するのです。
実際、どんなに売れる商品であっても、それ単体だけでは購買に至らないケースもあります。ユーザーは他の選択肢と比較し、納得して選びたいと思っているのです。その比較対象として「売れにくい商品」が置かれることで、「なるほど、この商品が一番バランスが良い」と判断され、結果として売れる商品の魅力が増すのです。つまり、売れにくい商品は、売れる商品を“さらに売れる商品”に変える重要な存在なのです。
そして、最後に「売らなければならない商品」についてですが、これは即効性のある成果を求めてはいけません。むしろ、ブランドの未来を切り開く“布石”として機能します。たとえば、新しいジャンルの商品や、新規顧客との接点を生むコンテンツがこれに該当します。売れる見込みが薄くても、それを知ってもらうことで、「あ、このブランドはこういうこともしてるんだ」と認識してもらえる。その一回の接触が、数ヶ月後、あるいは数年後の信頼やファン化につながることもあるのです。
こうした商品は、単なる売上の数字では測れない価値を持ちます。それは「機会の創出力」です。この機会とは、新しい市場に進出するチャンスや、まだ接点のなかった顧客との縁のきっかけであり、事業の未来の可能性そのものです。だからこそ、短期的に結果が出なくても、戦略的に扱い続ける必要があります。
つまり、商品とは単なる「モノ」ではなく、それぞれに固有の「戦略的役割」が与えられている存在です。目先の売上にとらわれすぎず、それぞれの商品が自分のビジネスにとってどんな意味を持ち、どの時間軸で効果を発揮するのかを見極めることが求められます。
商品を戦略の中で活かすとは、こうした全体設計を把握した上で、有限な宣伝コスト──時間、体力、資金、発信機会──をいかに配分するかという意思決定の連続なのです。目の前にある商品を、単なる“売るためのモノ”として扱うのではなく、“戦略のピース”として正しく配置していく。それが、成果を最大化し、長く続くビジネスを築くための本質だと僕は考えています。
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