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2011.01.23
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昨年12月、水資源、領土、貿易不均衡など難問山積の中印関係を観察する貴重な現場に立ち会った。シンクタンク国家基本問題研究所(国基研)とインドのシンクタンク、インド世界問題評議会(ICWA)との意見交換のためにニューデリーを訪れたのだ。私たちの訪問は、中国の温家宝首相のインド訪問と時期が重なり、ざわめくような状況で進行した中印外交の一端を、巧まずして見聞することになった。

ICWAは1943年、ネルー首相の肝煎りで設立されたインドで最も権威あるシンクタンクだ。数百人を収容出来る講堂があり、地下全体が広い図書館となっている。正面の階段も玄関も大理石造りの如何にも歴史を感じさせる建物だった。

12月16日15時半、小柄な温首相は背筋をピンと伸ばし、顎を上げ気味にして姿を現わした。会場のそこここで、長身で屈強な男たちが目を光らせる。その光景には、どこか見覚えがあった。すぐにわかった。北京五輪の聖火リレーで、聖火ランナーを取り囲んで走っていた青服の男たちだ。どのガードも一様に髪を短く刈り込み、身長180~190センチの屈強な男たちは、漢民族で共産党員であろう。

20分余の温首相の演説への拍手はまばらだった。会見後、人々はすぐにガヤガヤと感想を語り始めた。私は前日に、意見交換したばかりの元インド外務次官のカンワル・シバル氏を見つけて早速、意見を尋ねた。

「前向きな要素は何もありません。過去半年間に国連安保理の常任理事国首脳の全てがわが国を訪問しましたが、温首相の訪問は最も実り少なかったと思います。こんな実りのない会談しか出来ないのなら、なぜ、ショートノーティス(限界ギリギリでの要請)で温首相の方から望んで来訪したのでしょうか」
シバル氏は反問するように語った。


パキスタンに肩入れ!

前の月の11月にオバマ大統領がインドを訪れ、インドの国連安保理常任理事国入りを明確に支持したこともあって、米印関係は大幅に前進する様相を呈している。ブッシュ前大統領は米印両国を最も古い民主主義の国と最も大きな民主主義の国と呼んだ。共通の価値観でしっかり結ばれる米印両国の関係緊密化で、中国が取り残されないために手を打つのが、温首相訪印の目的だと見るインドの人々は多かった。だが、それにしては温首相は国連でより大きな役割を果たしたいというインドの切望にも応えず、ただ紋切り型の対応をしただけだった。

印中貿易についての合意も実りはなかったとシバル氏は語る。



両国間には大別して、1、インドの国連安保理常任理事国入り、2、インドの核の承認、3、ジャム・カシミール(JK)州やアルナチャル・プラデシュ(AP)州の領土、の3つの問題がある。

どの点についても、中国は溝を埋める意思を見せず、成果の余りの乏しさに、シバル氏は、インドは中国の思惑やインド観を読み取ることが出来ていなかったのかと、思わず自問すると論評した。中国はインドをまともな相手とさえ考えていないのではないかと疑う温首相の訪問だったのだ。

インドの都市ムンバイは2008年11月26日、連続テロに襲われ、166人もが犠牲になった。このテロについて、他の常任理事国の首脳は皆、哀悼の意を表し、或いは、パキスタンは犯人を罰すべきだと指弾した首脳もいた。その中で、温首相のみが一言も同件に触れなかった。中国は、インドに対抗するためにパキスタンに肩入れをしてきた。そのパキスタン由来のテロだからこそ、温首相からは慰めの言葉さえなかったと、インドの多くの人が感じていた。

中国がパキスタンに核とミサイルを与えたのは、インドをパキスタン問題で煩わし続け、中国問題に十分な力を割けないようにするためだと、インドの専門家らは見る。インド洋の覇権を狙う中国に対して、インドが十分な海軍力を整備することも対抗することも困難にするために、パキスタン問題に縛り続けるとの分析だ。
確かにパキスタン問題はインドの大きな負担だが、中国は国境の領土問題でもインドに挑戦する。シンクタンク政策研究センター所長のブラーマ・チェラニー氏が説明した。

「温首相がニューデリー入りした当日、中国側はAP州近くのチベット東部のトンネル開通のニュースを報じました。印中間に有事が発生した場合、このトンネルを通って中国軍は即座にAP州に侵入出来ます」

同地域は水源地でもあり、中国はインドに流入する川の上流にダムを建設する計画だ。


軍事占領の可能性!

チェラニー氏がこんなことを語る。

「インド訪問に際して、中国首脳は常にインドの喉元に剣を突きつけるような不吉な問題を持ち込むのです。2006年の胡錦濤国家主席訪問のときは、中国が長年言及しなかったAP州の領有権主張を突然復活させました。同州は台湾の2倍以上もあるインド北東部の州です。今回、温首相は、訪印に先立ってJK州領有についてのカードを切ってきました」

いまやインドは2つの州の領有権問題を突きつけられているわけだ。その実態は非常に厳しいとチェラニー氏が続ける。



次にインドが支配する地域では狡猾な方法を用い始めました。ここをインド領と認めないために、同地区の住民が中国を訪れるときには、パスポートとは別の紙にビザ発給の判を押して、ホチキスでパスポートにとめ始めたのです。中国領の住民にビザは不要だという意思表明です。

第3に印中国境地帯の広範な土地を中国領に組み入れ、慣習上の国境線を大幅に短くしてしまいました」

こうした状況を作り出したうえで、温首相はICWAでの講演で語った。

「領土問題は解決にかなり長い時間がかかる。いま解決を急ぐより、将来の世代にこの問題を委ねよう」

尖閣を略奪しにきた手法と同じである。中国の狡猾さに、もう、どの国も騙されてはならない。





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Last updated  2011.01.23 16:49:37
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