emeraldsea

御伽噺


「御伽噺」  2008.03.09日記








生まれて始めて絵本を読んだのは幼稚園に入る前のこと。
「不思議な国のアリス」と、もうひとつ、タイトルを覚えていない謎めいた絵本のふたつ。
どちらを先に読んだのかは定かではないが、どちらも強烈な絵本だった。
「不思議な国のアリス」は当時に家にあったもので、薄いレコードでの音声による物語のついた絵本だった。
タイトルを覚えていない謎めいた絵本と出会ったのは近所の図書館でのことだった。

今日に思い出したのは、そのタイトルの覚えていない絵本の方。
雪男風な毛むくじゃらな何かの存在と小さな少女の物語を描いた絵本、細かい内容は覚えていない。
日本の女性が書いた絵本であったが、どこかしら無国籍風であり時代性もあまり関係ないというか兎に角不思議な物語であった。
雪男風な生き物が主人公だったからかもしれないが、僕は最初その絵本が怖くて仕方が無かった。
怖いけれど何故か惹かれ、つい頁を開いてしまう。
そして、また怖くなって頁を閉じる。
だから何日も何日もかかって、開いたり閉じたりを繰り返した挙句に、ようやくその絵本を読み終えることが出来た。

今でも、時折、その絵本を思い出すことがある。




今日にTUTAYAで借りてきた新作映画「インランド・エンパイア」。
監督はデイヴィッド・リンチ。
怖い映画だ。
悪夢のような映画。
だけど、美しい映画。

深夜に窓辺から覗く月夜の様相に、得体の知れない不気味さと西洋のゴシックな御伽噺のような不思議な奇形さを感じて戸惑うことがある。
だけど、そんな夜に限って何故か惹き込まれてしまったりもする。
「インランド・エンパイア」。
この映画は、そんな奇形な夜に浮かび上がる三日月のお月様のような映画のように思える。


インランド・エンパイア
『インランド・エンパイア』
http://item.rakuten.co.jp/guruguru2/daba-511/



『インランド・エンパイア』という名の悪夢の物語。
デイヴィッド・リンチという名の悪夢の人生。
我々の、悪夢。

そういえば、生まれて初めて読んだ絵本にも、
お月様が描かれていたことを思い出す。
三日月のお月様だったように記憶している。









窓辺からは星ひとつ見えない。
こんな夜には、ポール・マッカートニーのファースト・アルバムを聴きたくなる。
『インランド・エンパイア』をいう名の悪夢を見た後では、尚更だ。

ポール・マッカートニー
「ポール・マッカートニー/ポール・マッカートニー」
http://item.rakuten.co.jp/sumiya/tocp3124/

僕の知りうる限り最も美しいアルバムのひとつ。
しかし三日月のような美しさではない。
だから心落ち着きながら聴いていられる。そういう意味の「美しさ」がこのアルバムにはある。

僕がこのアルバムの中で一番好きな歌は、12曲目に収録された歌。
「Maybe I'm Amazed」
そんなタイトルの歌。
「恋することのもどかしさ」なんて邦題がつけられているけど、Maybe I'm Amazedのままが最もフィットする。
6曲目の「ジャンク」も素晴らしい。
兎にも角にも素晴らしいアルバムだ。











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