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玲子2~出会い~


部署の上司が「久賀君には瀬川の補佐も勤めてもらうから、よろしく頼むよ」と私を紹介する。
「はじめまして、久賀です。よろしくお願いします。」私が笑顔で挨拶すると
「瀬川です。こちらこそよろしく。」と、右手を出してきた。屈託のない笑顔。
その瞳の奥に、女を一目で値踏みする、男のいやらしさが浮かんでいるのを私は見逃さなかった。
そして私も・・・まあ、第一印象は合格かしらね。

何から何までわからないことばかりで、私はなにかと慎司を頼りにした。
「あ、その資料なら、このファイルの中に入ってるから、ここをクリックして・・・」
そう言って、私のPCを覗きこむ慎司。肩と肩が、触れた。
私の好物の匂いがする・・・付けているオーデコロンの香りだけじゃない、
女を常に抱いている男特有の匂いだ。
あぁ・・・私は気付かれないように、息を吸う。
なんていい匂いなのかしら・・・たまらない・・・

「久賀さんって、」慎司がこちらに顔を向ける。
私は一瞬、悟られたような気がした。
「下の名前・・・玲子さんっていうんだ」私の胸の社員証を見て言う。
「いい名前だね。」
「そうですか?ありがとうございます。」私は愛想よく微笑む。
「それに・・・」ちょっと意味ありげに間をおいて、慎司は小声でささやいた。
「いい匂いがするね」
「ふふ・・・」私は、誘いをかけるように視線を送る。

いい匂いでしょう?抱きしめて、思い切り嗅ぎたいと思わない?
私もアナタの匂いを、もっと近くで感じたい。

慎司には、奥さんがいる。結婚2年目。社内結婚で退職して、専業主婦をしているらしい。
そして、愛人もいる。時々慎司宛に電話をしてくる、取引先の女という噂だ。
そういうネタを得意げに話してくれる噂好きな女は、どこにでもいるものだ。
「ほんと、瀬川さんには気をつけたほうがいいですよぉ~。久賀さんキレイだし、
瀬川さんに狙われちゃいそう!」
「まあ、キレイだなんて言ってくれるの、石井さんだけよ。石井さんこそ可愛くって、
瀬川さんに狙われてるんじゃないかしら?瀬川さんって、そんなにやり手なの?」
私は、さっそく探りを入れる。
「私なんて、相手にされませんよぉ~。子供だっていつも、からかわれてるだけ~。
ああ、そういえば瀬川さん、企画部の遠山さんとも結婚前に噂があったんですよ~。
でね、奥さんと当時、三角関係だったらしいです!」
なんでもよくしゃべってくれる子ね。ありがと。
「そう・・・遠山さんって、独身?」
「はい、いまだに・・・。瀬川さんのこと忘れられないのかもね~」
彼女は楽しそうにその後も話していた。そういう話が大好きらしい。

相手の身辺調査、済ませとかなくっちゃね。
実行に移す前に・・・


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