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玲子15~エレメント1~


アタシは女だから、よくわかる。
アタシの父親も、バカな男だった。
2度も女に騙された。

1度目は、アタシの母親だ。
母は当時、父よりも10も年下の会社の部下だった。他の男と不倫のあげく捨てられ、
上司である父に相談した。不憫に思った父は、相談にのってやるうちに男と女の関係になった。
まあ、よくある話だ。
そして2人は結婚し、アタシが生まれた。
でも、母親は「女」を捨てられなかった。
というか、もともと父親に惚れてなんかいなかったのだ。
乳飲み子のアタシと父親を捨てて、若い男と駆け落ちした。
だからアタシは、母親の顔を知らない。
今でも父親は「おまえは母さんに似て、色白で美人だ」などど、まったく呆れることを口にする。
いい加減懲りたかと思っていたのに、同じ過ちを父親は繰り返した。
ほんとうに頭の悪い男だ。
アタシが中学に通う頃、キャバクラ嬢に夢中になった。話も合わないほど自分より若いその女には、
別れた亭主との子供がいた。それが、司だ。
司を連れて女が家に転がり込んできた時、アタシは猛反対した。
司はまだ小学校に入ったばかりで、見慣れないアタシに興味を抱いた。
「可哀相な人なんだ」そういって父親はアタシを説得した。
だけど、それ見たことか!半年もしないうちにその女は、司を置いて逃げた。
父親は失望した。アタシも父親に失望した。
かわいそうなのは、司だった。血のつながらない家族とともに、生活していくしかない。
すがるしかないのだ。アタシたち親子も、司を見捨てることはできなかった。
司は、アタシに良くなついた。「玲ちゃん、玲ちゃん」と後をついてくる。
はじめは戸惑っていたアタシも、司におんなじ身の上を感じて、いつも2人で寄り添っているようになった。

年頃になっても、司だけを見ていた。
司も、アタシだけを想っていた。

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