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玲子31~玩具~


はぁ・・・
口の中で、ため息を飲み込む。
声を出しては、だめ。
慎司の指は、優しくアタシのスリットを縦に撫でてゆく。何度も何度も。
んんっ・・・
鳥肌が立つほど、感じてゆく。膝がぴくんっと、動く。
じっとりと、蜜が流れてゆくのがわかる。ますますアタシの中心は熱くなる。
慎司がバーテンダーに、なにか話しかけている。
アタシは会話も耳に入らないほど、快感に身を委ねたくなってしまっている。

「ね、玲子。聞いてる?」慎司に話しかけられて、我に返る。
それでも慎司は、くちゅくちゅと指を動かしている。そ知らぬ顔で。
「バーボンのロックを召し上がるなんて、お強いんですね。フォアローゼズの他には
どんな銘柄がお好みなんですか?」バーテンダーに話しかけられる。
「・・・そうね・・・ワイルドターキーとか、ブラントンとか。」
アタシは適当に答える。アタシのすべての感覚は、慎司の指の動きに囚われている。
慎司が、中指をアタシの中に入れてくる。ああっ!
アタシの中を、ゆっくりと掻き回す。すごく、いい・・・
バーテンダーに、ばれてないかしら・・・ああ、だめ・・・あんっ・・・
アタシは、目を閉じて、感じる。
「眠くなっちゃった?出る?」慎司が優しく、聞く。
アタシは頷く。
早く、したい。お願い・・・このままじゃ、おかしくなりそう・・・
アタシの潤んだ瞳を見て、慎司は勝ち誇ったような顔になる。
「ごちそうさま」バーテンダーに挨拶をして、席を立った。
アタシは、スカートを気にしながら、それでも変に思われないように堂々と歩いた。
気持ちは高ぶっていた。

店の階段を上がって通りに出ると、慎司が急にこちらを振り返って言った。
「北山と、付き合ってるの?」
「え?」
「この前、2人で仲良さそうに食事をしてたって、他部署のヤツが言ってたよ。
店で見かけたって」
北山とは、あれから何度か一緒に食事に行ったりしていた。誰かに見られていたなんて。
それが慎司の耳に入ったのだ。
「もう、寝たの?玲子さんのことだから、やってるよなぁ」慎司は歪んだ笑い顔になる。
「寝てないわ」私は、声を強めていった。
「まあ、寝ようが寝まいが、オレには関係ないけどさ。オレは玲子と愉しめればいいの」
私は、黙っていた。慎司をじっと見ていた。この男は、嫉妬しているのだろうか。
「今夜はこれで帰るよ。充分愉しませてもらったし。悪いけど、自分でタクシー拾って帰って」
慎司は、冷たく言い放った。
「ああ、そうだ、いいものプレゼントするよ。これ、帰ったら使えよ。じゃあ」
そう言って、包みに入った箱を鞄から取り出して私に手渡すと、慎司はタクシーを拾った。
私は後を追わなかった。

部屋に戻って慎司から渡された箱を開けてみると、中にはローターが入っていた。
オトナのオモチャというやつだった。
私は、そっとテーブルに置いて、それを眺めた。
急に虚しさが込み上げて来た。
不思議と怒りの感情は現れない。ただ、虚しいだけ。

アタシは
慎司に愛されることを望んでいるわけではない。
なのに、こんな仕打ちを受けて、玩具のように扱われると
虚しさが溢れてくる。

アタシの心は「かたわ」だ。人を愛せない。愛し方がわからない。
こんなアタシだから、歳をとってこの身体が老化したら、きっと誰にも見向きもされなくなるだろう。
いつかそんな日が訪れる。
こんなアタシなんて、誰にも必要とされない。
この身体が価値を失ったら、なにも残らない。
だから、この仕打ちは当然のことなのかもしれない。
アタシには「男の性的な玩具」という価値しかない。それでいい。仕方ない。

しんと静まり返った部屋に、突然携帯電話の着信音が響いた。
慎司からだった。
「もしもし」
「もう戻ってた?」慎司の声は、優しかった。
「うん。さっき」
「何してたの?」慎司が聞く。
「あげたやつ、使ってた?」
「うん。慎司のこと想いながら、使ってた」私が静かに答えると
「北山じゃなくて、オレなの?」慎司はくすっと笑って聞いた。
「そうよ」
少しの間、沈黙が続いた。
「車で、玲子の家の近くまで来てるんだ。逢いたいんだ、玲子に・・・」
私は黙っていた。
「やっぱり、玲子がほしいよ。今すぐ欲しくてたまらない」震えるような慎司の声に、
私の胸の奥が、きゅっ、と疼いた。この感覚を、人は何と呼ぶのだろう。

「私もよ」そう答えるのが精一杯だった。

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