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玲子51~エピローグ~


私の口が、勝手に動く。
「一緒になんて、なれない」
「なんで?どうしてだよ!」慎司が、強く問いかける。
「私、北山さんと結婚するの」自分でも驚いた。そんなこと、考えてもいなかったのに。
今、はっきりと口に出している。こんな時に、冷酷にも慎司に突きつけた。
「・・・・嘘だろ?」慎司の声が震える。
「本当よ。もう、決めたの」
慎司は、何も言うことができないでいる。
「でも、あなたとは別れない。これからも、このまま。」
そうよ、あなたと別れる気なんてない。
慎司は、同僚の妻になった私を、これからも抱き続ける。
きっとその罪の意識によって、私たちは、より深く繋がる。
「だから、あなたも尚子さんと、このままうまくやって。それがいいのよ。
あなたにとっても、私にとっても」
私に慎司は救えない。たぶん慎司も、私を救えない。
私に、尚子の代わりはできない。

私は、
司と、北山と、慎司の間を、これからも浮遊する。
どれも、私には必要なのだ。
ゆらり、ふわりと行き来して、
そしていつか、私は空に舞っていく。
その日が来るまで、自由に泳ぐ。
私は、特別なんかじゃない。どこにでもいる女だ。

狭い部屋の窓を開け、雲ひとつない空を仰いだ。
冷たく、清々しい真冬の空気を、胸に大きく吸い込んで、
そして、訳もなく、微笑んだ。

ー了ー

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