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SENPAI 3


「だって、したことないもん。H(笑)」
今日もカナコと私は、どうしたらHがうまくなるかについて討論していた。

「やっぱさ~、場数じゃん?」バージニアスリムの煙を糸のように細く吐きながら
髪をかきあげ、カナコはキッパリと言った。
「こうやって見てるとさぁ、したことないなんて信じられないんですけどぉ~(笑)
カナコネーサン!」
「失礼ね~。操を守り通して、はや19年だよ」偉そうに言ってるし。
「あはは。でもさ、場数って・・・先輩好みの女になるために他でヤリまくるの??」
「本末転倒だな(笑)」カナコは、あははは!と大笑いした。
なんのためにヤバイ場面を、いままで切り抜けてきたのか。
すべてはこれから出会う、本当に惚れた男のため。そうだよね、カナコ。

先輩の黒目がちな瞳の奥は、いつもキラキラしているように見えた。
そんなこと口にしたら倒れそうに恥ずかしいので、誰にも言ってないけど(笑)
それから、右目の下の「泣きぼくろ」。そこに、キスしたい。
ああ、いつからこんなに好きになっちゃったのかな。
キモチは口に出した瞬間から、大きくなっていく。
カナコに白状してから、どんどん膨らんでしまったのだ。
自分の男にしたいような、したくないような。
ちょっと離れた場所から、見ていたいだけ。
(ほんとうにそれでいいの?カナコのものになってもいいの?
他の子に持っていかれちゃってもいいの?)
わからない。怖いのかもしれない。これ以上のキモチは、私には未体験だから。


「あ、K先輩、タバコ変えたんすかぁ~?」
その声に目をやると、先輩はいつもの吸い方で、ラッキーストライクを吸っていた。
「うん。ちょっとな。」
なんかあったのかな?こころが、ざわつく。
こんな些細なことにも。
先輩のすべてを知りたい。
どうやって、コトを進めればいいのか。
数少ない自分の引き出しを開けて考える。
頭の中でシュミレーションする。
失敗はできない。これからも顔を合わせるんだし。だめなら仲のいい後輩になる・・・
ううん、そんなポジションなら、いらない気がした。
ぎゅって、抱きしめてほしい
もう一度、耳を噛んでほしい
それから、それから・・・
私のキモチは、はち切れそうになっていた。
でも、そうなればなるほど、そんなキモチを悟られないように
意識して知らん顔を決めこんじゃうのが私なんだよね。
カナコはその逆で、何かにつけてアピールしていける女だ。
私の知らないところで、もしかしたら差をつけられているかもしれない。
だからといって、フライングは禁物。

私は、タイミングを計りかねていた。


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