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SENPAI　8

入ってすぐ左にキッチンと、奥にベッドのある洋間。右にはユニットバスがあった。
キッチンには、大小の鍋と、小さなプライパン、ボールなどが置いてあるが、
使われているような形跡はなかった。やたらと大きな冷蔵庫が目に付いた。
床の隅に缶ビールの空き缶がたくさん並んでいる。飲みかけのバーボンのボトルが３本。
ユニットバスの中の洗面所が見える。ハブラシは、確かに１本（笑）
洋間に通された私は、この前寝かされていたベッドに目をやる。
そう大きくはない、ごく普通サイズのシングルベッドだった。
部屋の隅には、大きな観葉植物の鉢が置いてあった。
電話機の子機が床の上に転がっている。ブリキのおもちゃの車が飾ってあるだけで
他になにもない、殺風景な部屋だった。

「座ってて」そう言って先輩は冷蔵庫へ向かった。
「ビールでも飲む？」
なにか飲まないと緊張するかな。そう思って
「うん」と、答えた。
先輩とテーブルに並んで、ビールを飲んだ。
「ぐびっ」という音が気になった。静かだから、なんか落ち着かない。
「静かだね」
「あ、音楽聴く？」そう言って先輩はボサノヴァをかけた。
「こういう音楽、聴くんだ」
「これ、ね。後輩が置いてったＣＤなんだ。流しておくには耳ざわりいいでしょ」
「うん」
「オレさ、初めての子って、したことないんだ」
いきなり本題に入られ、ちょっと緊張・・・
「だから、がんばる♪」ニコっと笑う先輩。
いや、がんばらなくていいし・・・。手抜きも困るけど（笑）
ってか、がんばる場合と、がんばらない場合って、なにがどう違うの？
そっちの方が知りたいよ（笑）
「ちょっと待っててね。先に風呂、入ってもいいかなぁ」と聞いて、準備態勢に入る先輩。
急にどきどきしてきちゃったよ。
「あ、はい」なんて、今、私、声、うわずってなかった？？（汗）
足を崩すこともできずに、先輩がお風呂から出るのをまんじりともせず待つ。

シャワーの音が聞こえてきた。
「Young and free I’m just a happy man～　アスピリン片手のジェットマシーン♪
そんなに乱れて honey 何を企んでるのか、tell me tell me～♪」
鼻歌、歌わないでクダサイ・・・オネガイ！
あ～あ、なんか軽いなぁ・・・私がこんなに緊張してるの、わかんないかなぁ・・・

ビールを冷蔵庫からもう一本取り出し、プシュっと開けて、先輩が戻ってきた。
「っぷはぁ～！うめえ！あ、シャワー浴びてきたら？」
「うん」そう言って先輩の用意したバスタオルを受け取った。
シャワーを浴びながら考える。
髪は洗うべきか？それともカラダだけ？そんなことも、どうしたらいいかわからない。
いままで誰にも聞いたことなかったし、誰も教えてくれなかった。
出たら服ってもう一度全部着るの？それとも・・・ああ！神様！！
先輩に、かっこ悪い私を見られるのが、死ぬほど怖かった。

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