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ヒトヅマ☆娼婦 6


「おもしろそう」ホントはそれだけじゃない。
きっとあたしは、この人に興味があるんだ。
どんな人なんだろう。
あたしはこの人から目が離せないでいた。

休日だというのに、この人は今日もスーツ。
車の中は私物らしいものもなく、まるでレンタカーのように味気ない。
このシートは革張りかな。
なんていう車だろう。左ハンドルだから外車?

メガネのフレームが前と違う。
細身だけど、筋肉はありそうな体つき。
背はそんなに高くない。
すっきりと鼻筋が通っている。
幾つなのかな。40は、いってる?
あたしは隣にいるこの人をじっと見つめていた。

「名前言ってなかったね」
そう言いながら、東京湾のそばの倉庫の脇に車を停めた。
知らないうちに、こんなところまで来ていた。
あたしったら、この人ばかり見つめていて、外の景色をまるで気にしていなかった。
日が翳りだして、空の雲が紫色に染まってる。

「水島です。君は?」
この人があたしをまっすぐに見る。
また、どきどきしてきた。
「あ、、、しの、です」
「しの?どういう字を書くの?」
「詩を書く、の詩。『の』は、林の下に土です」
「詩埜。珍しいね。でもとてもいい」

水島さんが、なにげなく顔を近付ける。
あたしの唇に、唇を重ねようとする。
思わず、目をつぶる。

音も立てず、そっと触れた唇を
あたしが味わう間もなく、水島さんは顔を離した。

「詩埜。顔の産毛を剃りなさい」








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