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ヒトヅマ☆娼婦34


タクシーがホテルの入り口に到着した。
「そうだな、君のだんなさんをあんなふうにしたのは、君のせいだ。
君がだんなさんをだめにした。君がそばにいたら、だんなさんはもっとだめになる。わかるか?」
水島さんは怖い顔であたしにきっぱりと言った。そして強引にタクシーから降ろした。

水島さんに引っ張られるようにして、ホテルの部屋に入る。
あたしの頭の中ではずっと、さっきの水島さんの言葉がぐるぐる回っていた。

あたしのせい。あたしが、やっちゃんをだめにした。一緒にいたら、やっちゃんがだめになる。
あたし、どうしたらいいの・・・。
ぼろぼろ涙がこぼれた。

水島さんは、あたしのバッグをテーブルに置いて、あたしに座るように促し、自分も腰を下ろした。
「詩埜、わかるだろ?僕の言ってること、わかるな?僕は君のだんなさんを心配してるんじゃない。君を心配してるんだ。どんなにだんなさんのためと思って君ががんばっても、それが裏目に出てしまうんだよ。
彼は君に甘えきっている。そして君に報いようとしない。だから他の女性のところに行っているんだよ。そうだろ?目をそらさずに受け止めるんだ。」
水島さんが言葉に力を込める。
「でも、でも、あたしは・・・あたしはやっちゃんのそばにいたい。やっちゃんがいい。」
あたしは泣きじゃくりながら答えた。
東京にひとりで出てきて、友達もできずに寂しくて辛かったとき、やっちゃんに偶然再会して、それからずっとそばにいてくれた。いつもいつでもやさしかったやっちゃん。
離れるなんて、考えられない。
あたしはやっちゃんがいい。やっちゃんじゃなきゃだめなの。

水島さんはしばらく黙っていた。そしてゆっくりと立ち上がった。
「それならそれでいい。もう何も言わない。そのかわり、今夜の仕事はきちんとやれ」
水島さんはスーツの上着を脱いでベッドに放り投げ、ネクタイを緩めた。






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