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ヒトヅマ☆娼婦39


「橋の上で泣いてた。俺を裏切って申し訳ない、死にたいって言って橋から飛び降りようとした。でも結局飛び降りられなかった。口ばっかりなんだ。だから俺があいつの足を抱き上げて落としてやったんだ」
なに?やっちゃん、何を言ってるの?
「あいつのことが大事だったから体を求めなかったのに、あいつは他の男とセックスをして妊娠した。気持ちだけで繋がるなんて無理だったんだ。しのちゃんもそうなんだろ?口では俺を好きだなんて言ってても、結局奴のところに行くんだろ?セックスしたいんだろ?」
「ち、ちがうよ、やっちゃん」
そう言い終えるか終えないかで、やっちゃんはあたしをフェンスに押し付けた。
「きゃああ!!」
「でも、今度は俺も一緒だよ。だから心配しないで。ひとりじゃないよ」
やっちゃんが微笑む。そしてあたしの首を絞めようとしてきた。
「やめて!やっちゃん、やだ!!」
「大丈夫だよ、一緒だから。俺も行くから」
「やめて!離して!!」
あたしは必死にもがいた。やっちゃんの手があたしの首を掴む。
「くっ!!ぐうぅ・・・」
つかんだ手に力をこめて、やっちゃんはあたしを突き落とそうとする。
どん、どんどんどん!
部屋のドアを叩く音がする。誰かが叫んでいる。そして部屋のドアが開いて、スーツを着たホテルの従業員とベルボーイらしき男性が走ってくる。
それを見てやっちゃんはあたしから手を離し、ふわりとフェンスをまたいだ。
「やめろ!」「あぶない!」
男性の制止も聞こえないかのように、フェンスにつかまったやっちゃんはあたしに振り向いて、笑顔で言った。
「しのちゃん、ばいばい」
そして、やっちゃんの姿が、消えた。
「きゃああああああ!!」


「詩埜、朝だよ」
疲れた顔をした眼鏡のおじさんが、カーテンを開けてあたしを起こす。
光がまぶしくて、あたしは顔を歪める。
この人は誰なんだろう。わからない。
看護師が体温計を渡すので、脇にそれをはさむ。
「先生が強度のPTSDだと言っていた。でも大丈夫だ。僕がずっと君の世話をするからね。
きっと治してみせるからね」
おじさんはゆっくりとあたしの体を起こして、朝食をベッドにおいた。
「今日は天気がいいから少し散歩しようか。その前にご飯だよ。ちょっとでも食べないとだめだよ」


毎日、同じ夢を見る。
優しげに微笑む男の人。手を振っている。
待って、待って。
あたしはそう叫ぶけど、その人はすぐに消えてしまう。
誰なのか思い出せない。
だけどあたしは無性に
そのひとに、会いたい。






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