2013年07月26日
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レオン
LEON
1994年 フランス・アメリカ 110分

■監督 リュック・ベッソン
■出演者
ジャン・レノ、 ナタリー・ポートマン、 ゲイリー・オールドマン




-STORY-

殺し屋の裏の顔を持つ孤独な男レオン (ジャン・レノ)は

父親の麻薬がらみのトラブルから一家惨殺された
同じアパートに住むマチルダ(ナタリー・ポートマン)をかくまった事から

二人は奇妙で それでいて お互いに心安らぐ様な 同居生活を始める


- 解説 -
オシャレなラブコメか 小難しい文芸作のイメージしか無かった
フランス映画の印象を根底から覆し
世界に巨大な旋風を巻き起こした リュック・ベッソン監督の

アメリカ映画進出 大ヒット作映画です

フランス映画の新たな旗手で
ベッソン映画の常連俳優 ジャン・レノ を世界的にしたのも 本作です

又『スター・ウォーズ・エピソード1・ファントム・メナス』で
パドメ・アミダラ を演じた
子役時代の ナタリー・ポートマン の出世作でもあります


強いヒロインを常に描いて来た ベッソン監督が、
『ソウル・メイト』 という言葉がまだ一般的では無かった90年台に

子供ながら 智謀と駆け引きに優れた少女と
一流の殺しの技術以外 何の学も持た無い中年の男との
歳の差を越えた 魂の繋がりを描いた、

純愛映画としての側面を持つ サスペンス・アクション映画として
当時は話題になった作品です


ジャン・レノ演じる 主人公レオンと ナタリー・ポートマン演じる
マチルダとの日常を瑞々しく描きつつ
ハリウッド・アクション映画の様式をしっかりと抑えた 派手な演出が共存する

リュック・ベッソン監督の 新境地を開いた
新世代のアクション映画でもあります


それまで、スタイリッシュなバイオレンス・アクション映画を撮ってきたベッソン監督が
いつもの トリッキーなカメラワークを抑えて

ドン・シーゲル監督 作品に代表される、 ハリウッドアクション映画の様な

都会の裏社会に生きる 土臭い アンチ・ヒーローを描いたのは
あるいは アメリカ映画への オマージュ的意味合いが大きかった様に思います


■□
完全装備で武装するマフィアの手下達を 一掃し 音も立てずボスの背後に忍び寄る
最高のプロの技術を持つ 冷徹な殺し屋でありながら
映画館でジーン・ケリーのミュージカルを目を輝かせて観る 少年の様な面を持つ男
レオンと

朝にはアニメを観る 人並みの子供で
裏社会を渡り歩く智謀を備えた強さと大人の様な面を合わせ持つ
少女 マチルダと

ほとんど良心の欠片も無い ギャングのボスにしか見えない
狂犬の様な刑事でありながら
ユーモアのセンスを持つ複雑な人物の スタンスフィールド

この相反するタイプの 三人のキャラクターは
これまでのハリウッド映画の ヒット作の要素である
『三つ巴の異なる芝居の妙』 を踏襲しながら

非常に極端な程に容姿と情緒がかけ離れているキャラクター達を描いた作品でもあり
それは『心の闇』 が深い事を意味する事からでも

一見異なる様に見えるキャラクター達は
実は根底の所で共通点があり

映画のテーマが ある焦燥感を持った主人公達の
心の旅と戦いを描いた 魂の物語 である点は

出資者が変わり、幾分アメリカナイズされた作品ではあっても
これまで通りの ベッソン映画であると言えるのでしょう


【ハリウッド進出の橋頭堡を確立した作品】

『96時間』 の大ヒットなど
ハリウッドのキャストを使ったフランス発 ノンストップ・アクション映画を
次々と企画して来た リュック・ベッソン監督の
初 ハリウッド上陸作品が本作でした

元々 ハリウッド進出にあたって、『フィフス・エレメント』 の資金確保の為の
制作だったと聞いておりますが

後作の 『フィフス・エレメント』 よりも 大きなヒットとなり
『フィフス・エレメント』 の方は制作費に対して
大した成功を収めなかったのは皮肉と言うより 他ありません


【アメリカ映画へのオマージュ】

本作には アメリカ映画へのオマージュと思われるシーンが多々確認出来ます

リュック・ベッソンが スタンリー・キューブリック 監督の
大ファンという話は有名で

ゲイリー・オールドマン が怪演する スタンスフィールド刑事が
マチルダの家を襲撃する時に見せる、 狂気に満ちた無邪気さや

マチルダの父親に ベートヴェンについて語る所、
レオンが映画館で観ていた 踊る ジーン・ケリー など

キューブリックの代表作
『時計じかけのオレンジ』 をイメージしたシーンが観られます


この様に、明らかに分かり安いオマージュ・シーンもあれば、

警察の機動隊が レオンの部屋を襲撃するシーンで
マチルダを逃がすため
レオンが換気口を壊す時の 斧の動きを追う激しいカメラワークが

『シャイニング』 で ジャック・ニコルソン が
ドアを斧で壊す時の場面のカメラワークと全く同じだったという様な

ネットでも 全く語られていない
撮影テクニックを拝借した、マニアックなオマージュもありましたw


又、ベッソンが製作総指揮をした
ジョン・マルコヴィッチ 主演作 『アイ・アム・キューブリック』 という

キューブリック監督 成りすまし事件を 描いた作品では
自身のキューブリック好きが高じたと制作 という理由だけでは無く

実際に、ブライアン・クック、アンソニー・フレウィン、の様な
キューブリック監督のスタッフだった人物を起用して制作した所が

究極の キューブリック・マニアぶりを発揮した作品だと 言えるでしょう



【怪演俳優 ゲイリー・オールドマン】

近年は ハリー・ポッター の シリウス・ブラック
バットマンシリーズ の ゴードン警部補など
主人公寄りの正義感の強い人物を演じる事が多くなった
ゲイリー・オールドマンですが

それまでは (1982) 『シド・アンド・ナンシー』 の怪演で注目され
キレた演技をすれば当代随一と評判の性格俳優として 名が通っておりました


元々は、奨学金を獲得してカレッジに入学し、俳優の学士号を取った秀才で
その後 舞台俳優として活躍し、数々の新人俳優賞を受賞する

輝かしい実績を持つ様な人物でした

悪役のイメージが定着した事を悩んでいた時期があったそうで
特に 子供に見せられない様な役柄を演じていたことに 気を病んでいたとか

そんな ゲイリー・オールドマンが 映画のプロモーションで来日した時は
映画のイメージを鵜呑みにした 怯えたインタビュアーに

冒頭で切れてみせる サービスを忘れませんでした



【レオン完全版】

初公開から一年経った1996年に
22分の未公開シーンを加えた 上映時間133分の完全版が公開されました

レオンとマチルダの 仕事のシーンが増え
麻薬の売人の場面と レストランでのシーン
レオンの過去が語られるシーン

などが 加えられました


これについて ベッソン監督は 予告編の中に


『 観客の皆さんが より長い時間、
レオンとマチルダと 過ごせるように描かれています

二人のゲームを

さらに分かり合うことで、彼らの情熱を 目の当たりにし
愛の交流を さらに深く感じることが 出来るのです 』


と、おかしな文法で フランス語でも訳し間違えたのかと思う様な
微妙なニュアンスのコメントを書いておりますが


児童保護の規制が厳しいアメリカ社会に置いて
当時まだ 12歳のナタリー・ポートマンに

レストランで飲酒して酔っ払う演技や

レオンの過去が語られるシーンで レオンにベッドを共にする様
誘っている事を匂わせる演技をさせている事などが

関係していると思います


良くアメリカで公開出来たと思いますが、良く映画を観てみると

マチルダは自称 18歳 と言い続けておりますし
映画の中でも、ハッキリと歳に言及したセリフはありません

又、問題の 『誘っている』 場面にしても
あくまで 単に会話の中で 『尋ねている』 ダケであり

内容も今夜の事というよりは この先 大人になった時の
過程未来の話をしている様に捉える事が出来るので

『ゲーム』 やら 『情熱』 などという言葉は、
その辺りのグレー・ゾーンをクリアさせようと言う

大人の事情が含まれた 配給側の配慮が含まれた言葉に思いました

ともあれ、完全版と、オリジナル版の 主人公達二人の印象は
ベッソン監督が 奥歯に物が挟まったように語ったほどには

深まった と言うよりは、異なった と捉えたほうが
正しいのだと思います


★★★ 楽天エンタメナビ レビュー ★★★
凶暴な純愛を描いた、大ヒットベッソン作品

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最終更新日  2015年02月21日 00時49分49秒
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