2015年01月24日
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新旧アニメファンの橋渡しを果たした作品
宇宙戦艦ヤマト 復活篇
Space Battleship Yamato: Resurrection


■ 監督 西崎義展/ 小林誠
■ 原案 石原慎太郎
■ 声の出演 山寺宏一/ 青野武/ 置鮎龍太郎/ 古谷徹/ 茶風林


- INTRO -

宇宙戦艦ヤマトの権利は良く複雑だと言われて来ましたが

それは簡単に言いますと
西崎氏の破産に伴い ヤマトの権利が破産管財人を通して
他社に譲渡される事になった時

ヤマトの著作権を東北新社が
ヤマトの著作人格権を 西崎義展氏が
ヤマトの商標権を西崎氏の長男が といった様に

ヤマトの権利を幾つかに分割して履行した所に理由があった様です

なぜこうなったのかをお話する前に
なぜこの様な事になったのかをお話しますと


そもそも西崎氏の会社 オフィス・アカデミーが
77年8月公開の一作目ヤマトの大ヒット後
ウエスト・ケープ・コーポレーションという子会社を同年12月に設立する所から

端を発する事になります


さらばヤマトの大成功で一躍時の人となった西崎氏は
更なる挑戦として 大藪春彦 原作『汚れた英雄』の映画化を計画し
実写の世界への進出を試みます

確かヤマトの特番のラジオ番組内で告知され
主題歌を唄う歌手も決定していたという内容だった様に記憶しております

しかし 西崎氏の出資会社の経営悪化から その資金繰りの為
82年にオフィス・アカデミーを手放した影響で 実写化計画が頓挫します

そんな事情を知らなかった当時は
角川映画として『汚れた英雄』が公開された時
なぜ 西崎氏の名前が無いのだろうと 不思議に思ったものでした


83年にウエストケープコーポレーションにヤマト関係他全権利を移し避難させ
『ヤマト完結篇』を制作しますが

84年末に バンダイ他大手映像関係会社を出資者にして
ジャパンオーディオビジュアルネットワークを設立し
ヤマト復活3カ年計画を発表します

その一作目 85年『オーディーン 光子帆船スターライト』の
興行成績が不振に終わった事で 計画そのものが頓挫します


加えて西崎氏が出資する関連会社の経営不振から
91年にはジャパンオーディオビジュアルネットワークが倒産します


94年には
バンダイビジュアルからヤマトの新作OVA『YAMATO2520』を発表しますが
97年の西崎氏の破産によってそれも未完に終わります

この時西崎氏は 最期の砦として著作権利を管理していた
ウエストケープコーポレーションの倒産と共に

ヤマトシリーズを含めた西崎氏所有の全作品の権利を
失う結果となりました



さて

西崎氏が手放したヤマトの著作権ですが

商標権を西崎氏の長男に移転登録した事で
皮1枚を残した状態で 完全な譲渡を回避し
事実上 権利の一部を西崎氏側が所有する事になります

これにより著作権利者が西崎氏側に無断でヤマトの商品化が出来ないと言う
権利関係を複雑化させる結果を生み出します


99年頃バンダイビジュアルから発売されたヤマトのPSソフトの販売権をめぐり
西崎氏と 東北新社、バンダイビジュアルとの間で裁判となりますが

これを受けて 西崎氏の長男への商標移転抹消を求めての裁判へと発展し
これに松本氏の著作人格権を求めた裁判が加わります

それに追い打ちを掛ける様に銃刀法違反等の不祥事が重なったので

実際は権利が複雑と言うよりは
度重なる裁判が複雑な印象を濃くしたというのが 本当の所なのでしょう



さて、ここでなぜこうなったという話に戻るのですが
考えてみますと

商標権は西崎氏側にあったのに
なぜ著作権者の東北新社が ヤマトのPSソフトの販売を許諾したのか

それを援護するかの様に松本氏の裁判が加わり
和解後 それらの判決に物申すかの様に

『訴訟上の和解では無く裁判外の和解』 と 著作権者の東北新社が
わざわざ見解を述べたのか

良く分からない事ばかりです



結局 西崎氏側の商標権は抹消され
代わりに 西崎氏側はヤマトの原作者を名乗っても良いという
和解案が成立して決着が付きますが


そうなった経緯を想像しますと

・・・商標権が西崎氏側にある以上
映画化 映像化は西崎氏の許可が必用だとしても

ヤマトの原作者は松本零士氏なのだから
PSソフトとしての商品化は可能だろう・・・

という著作権者側の思い込みが原因で訴訟に発展し

それを収拾させるかの様に 松本氏が巻き込まれた
そんな可能性が浮上して来ます


つまり そもそも
この様な一連のヤマト関係の訴訟が起きたのも、権利が複雑だと言わしめたのも

番組作品の著作権と 雑誌漫画の著作権とを混同した関係者達の
認識不足が原因だったのではないか とも考えられるのです


Wikipediaの解説文を読んだ限りの印象なので一概には言えませんし
そう捉えている方は おそらく私ひとりでは無いとも思いますが

ともあれ 松本氏のヤマト裁判に関しては
単体で捉えるべき事では無いのかもしれません


ヤマト完結篇後の西崎氏は

1997年に不祥事で逮捕された後、1999年に度重なる訴訟を抱えて
2004年に和解が成立し 2007年に刑期を終え出所するまでの10年間に

裁判と 懲役を繰り返す波瀾万丈な人生を送り

2010年11月7日
所有していた船舶から転落し帰らぬ人となります

紆余曲折の後 念願のヤマトの新作
『宇宙戦艦ヤマト復活篇』を発表した一年後の出来事であり

実写版『SPACE BATTLESHIP ヤマト』公開を待たずしての事でした


晩年は足を悪くして 車椅子を使っていた西崎氏でしたが
復活編の続編制作を控えて 英気を養いたかったのでしょうか

大好きな海で 更なる飛躍を誓いながら
その途上の高まりの中で悔いの無い逝去だった と

ヤマトファンとしては そう願うばかりです



△▼△▼△
前置きが長くなりましたが

純然たるヤマトの続編として前作から17年後を描き
実に26年ぶりに制作された

『宇宙戦艦ヤマト 復活編』をご紹介します

それでは今回も始めましょう


-STORY-

西暦2217年、移動性の巨大ブラックホールが太陽系に接近し
地球が呑み込まれる事が確実となった

人類は2万7000光年彼方のサイマル星系への移住を計画する

そんな中 移民船団の一つが 謎の艦隊の襲撃に遭い
責任者を務める古代雪共々消息を絶ってしまう

宇宙科学局本部長の真田は 古代進を
再建された宇宙戦艦ヤマトの艦長に任命し

第3次移民船団の責任者としてその護衛を託すのだった



-解説-
本作は 石原慎太郎氏を原案として招き

古代と真田と佐渡 など 一部メインキャスト以外
若い世代の新キャラクターが中心となった
CGを意識したシャープな線で描かれた 一新されたビジュアルで

これまでのミリタリー系SFドラマという側面を排し
石原氏らしい 国際情勢が投影された様な 多分に政治色の強い内容となり

戦闘場面に置いても
これまでの様な強大な侵略者を撃滅する為の 知謀と戦術に重きを置いた演出から

多国籍軍との国境紛争か 連合軍の報復攻撃の様に描かれた
現在 世界で起こっている 様々な国際問題を彷彿する様な

絵空事とは違う既視感を感じる
これまでのヤマトには無かった世界観で描かれた作品となりました



しかし

枠組みは現代的で重厚に造られながら 肝心のドラマ面は
2クールは必用かと思われる物語を
2時間で纏めたダイジェスト版を見せられた様な 内容で

ドラマで見せているのでは無くやや過剰で盛り込み過ぎた内容の
セリフだけで進む様な複雑なストーリーと設定を

初見で只々追わされるだけに終始したという 印象があり


冷酷で闇の面を持ちながらある種の美学を持つ 複雑で強大な存在が敵となり
熱血漢のキャラクター達が 時には対立しながら全力でぶつかり合って分かり合い
やがて団結力が生まれ一丸となって立ち向かう

成長の物語でもあった 前作までの「あの」ヤマトに対して


新キャラクター達が軍属の洗礼を受けていないという
人として戦士として まだまだ成長する可能性を秘めた若者達を
キャスティングをしてはいても

シニア層の眼を通した 異質で混沌とした現代の若者の姿を見る様な
若干鼻に付きかねない 偏った描写で描かれている為

一丸となる以前に 只々怒鳴られるしか無い未熟な子供か
感情移入出来無い 新人類の様にしか見えないので


初代のアニメ世代の多くの 共感は得られ無い
現代のアニメ世代の共感は まして得られ無い

一体 どの層をターゲットに作られた作品なのか分からないという
数多くの問題を抱えた作品という印象が強い様に思いました



一方で

旧作から受け継がれて来た 巨大な勢力に単騎挑む
戦後日本が世界に打って出た 団塊の世代を彷彿させる
気骨ある熱血漢の精神は本作にも健在で

物語がいささか予定調和的で 力を注ぐ場面の明らかな偏りが見られるなど
製作者の感情的見解が介入し過ぎな嫌いはありますが


力強い描写の発進場面などの映像は執念を感じる程の気迫があり
21世紀に蘇ったヤマトの新作として一見の価値は十分にある様に思え


本作は70年代に登場したヤマトが これまでファンに与え続けて来た感動を

世代の垣根を越えて共有し
新旧のアニメファンの橋渡しを果たした作品と

評価出来る一作と言えるかもしれません☆



コチラのヤマトの新作を見る限りでは


映画版 宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟【Blu-ray】

価格:6,318円(税込、送料込)





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最終更新日  2016年12月16日 10時26分39秒
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