【表層結晶】


『卒業』

景色の色が変わる頃
人はなにかを卒業する

思い思いの卒業を迎え
またなにかを目指し歩みだす

終わりのない旅は 
人生という名のもとに

その輝きをちりばめ

終わりのない旅は
希望という名のもとに

また船をこぎ出だす

あるべき場所に収まるように
やがて来る卒業に向けて

大きな卒業も
小さな卒業も

全てへの第一歩

(2002.03.10)


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『第三者への手紙』

春の香りを運ぶ風が
いつのまにか すぐ傍に来ています

あなたはそろそろ
夢から覚める頃でしょうか?
どんな夢を見ましたか?
誰にも言えない恋の夢?
それとも言い様のない悪夢?

どちらにせよ
応えが返ることはないのです
そう――― 
あなたはもうこの世には

届く事のないこの手紙
誰に出すというのでしょう

感情に身を任せ
思いを綴るこの手紙

意味など無くていいのです
ただ心をありありと
刻みつける術が欲しかった
ただ魂をゆらゆらと
あやす術が欲しかったのだと

名前もない
あて先もない
この手紙

やがてまた誰かの元へと
必要とする誰かの元へと

永遠に消えることのないままに

(2002.03.22)


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『広がる世界』

眼下に広がる
小さな世界

見えるもので推し量る
有限なる世界

人はみな
時間を彷徨う 永遠の旅人

目を閉じて限られた世を捨てよ
目を閉じて開放を待て

飛翔する鍵は 心の中に
無限なる世界は内に潜みて 

その深遠にとどまって
その覚醒を待ち焦がれ

あなたが来る日を
無限に広がる世界を
夢見ているのです

(2002.03.25)


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『スポットライト』

開演の刻
今 幕が上がる

そこにあるのは 無限の舞台
刹那の命 未完のシナリオ

私は私 
貴方は貴方

代役などが いる筈もなく

ただ一度だけ 
奇跡のロンド

――― 暗転 ―――

めまぐるしく廻る 光の輪が
めまぐるしく変わる 私を照らす

さあ 次の舞台へ

この体ある限り
この命ある限り

踊る 踊る 心も躍る

光溢れる 舞台の上で

(2002.04.02)


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『旅人』

この天空の彼方 
あなたは生まれた

偉大なるエナジーを
力の限りに解き放つ

届け もっと遠くへ
届け ずっと遠くへ

なによりも速く
何処までも遠く

永遠ではない一瞬を
駆け巡る輝きは

闇を魅了し
時を越えて

やがて私のもとへ

永遠ではない一瞬を
駆け巡る旅人は

未知を照らし
希望を灯し

そして全ての素へ
そしてやがて 無へと帰す

母なる光のもっと傍へ
ただ溢れるその場所へ

(2002.04.05)


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『神の領域』

万能なる神よ

我々はついに 

貴方を差し置き

独自の術で

命を産み出す

我々は我々の為に

命を産み出す

もう止まらない

賽は投げられた

貴方はそれを許すのですか

エデンを追われた

アダムとイブは

またしても禁断の実を

その口もとへ

貴方はそれを恐れずに

また傍らで見守るのですか

近づきすぎた我々を

罰する術はないのですか

限られた時間の中で

貴方に迫る我々は

既に貴方を見失い

しかしながら じつは貴方の掌で

心地良く躍っているのです

そのことにさえ

貴方は気付いているというのでしょうか

貴方の領域は既に侵され始めていることに

(2002.04.12)


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『空中花』

霧雨の降る 春一夜
ただじっと 外を見る

静夜の闇に 乗じた雨が
密かにそっと 大地を癒す

混沌とした 街灯り
雨の夜空を 優しく照らす

視線の先に 光の矢
夜空へすっと 駆け昇る

無の空間に 花が咲く
春雨の夜に 花が咲く

闇に映える閃光は
広がっては消え
広がっては消え
光陰の美を 垣間見る

誰かからの贈り物

春の夜の 空中花
ただそれが 眩しくて

春の夜の 空中花
ただそれが 愛しくて

何度も 何度も
いつまでも 

春の夜花は 
瞼の裏で咲き続けます

(2002.04.16)


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『終わりと始まり』

カタカタとキーを叩く
仮想世界に身を静める
カーテンの向こうでは
工事の騒音

カタカタとキーを叩く
仮想世界の扉を開く
カーテンの向こうでは
車の騒音

カタカタとキーを叩く
現実世界の忘却。。。

ある瞬間 音が消え
部屋の空気が振動をとめた

世界は終わった?
全ては消えた?

絶望と不安が頭をよぎる
思考が止まるのを恐れ
窓に寄り 黄色いカーテンを
力いっぱい開け放つ

世界はそこにちゃんとあった

まるで手品のように
目の前に 現われた

自分はそこに ちゃんといた

まるで罠におちた獲物のように
しめしめと 笑われた

笑われながら 自身で笑みを浮かべ
この存在を謳歌した

幸福は消えてはいない!

(2002.04.19)


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『 いたみ 』

貴方には 
人のいたみが見えますか

貴方には
人のぬくもり見えますか

貴方に対して
きっと私はそんなことを
言う権利は ないのだろうけれど

貴方のその言葉は
きっと誰かを 傷つけているのです

そして例外ではなく
私もその一人なのだと

早く気付いて欲しいのです

貴方の周りから
何もかもが消える前に

いつか私さえ
消えてしまうのですから。。。

2002.02.20


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『雲の切れ間に』

口ずさむ歌声も遠く
僕は日常に溶け込んだ

朝の街並みはただ一方的に
流れ流され

走る僕は風を浴びて
心の壁を少し閉じた

大切なのは今を生きるって事さ

なんて思ってはみても

体感する現実は
予想とはうらはらに

僕の背中に影を落とす

けれどもういいさ

明日が来るって事が
今やっとわかったから

終わりは始まりを連れて
目の前に現れた

くすぶっていた何かが
僕の中で また息を吹き返す

口笛とともにその音色は
大きく染まる

そしてまた 明日を目指す

期待外れは いつもの事さ
支離滅裂な感情に
支配されてまで
僕は理由を求めない

そう決める事が
今の僕には精一杯で最大限

覚悟を抱いて空を見つめ
雲の切れ間に光が射したなら

僕はまた明日を目指し 
ゆっくりと 歩き出すんだ

落としたはずの 希望の欠片を
また胸に探し求めて

いつか来た道を ゆっくりと ゆっくりと

(2002.04.24)



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