平穏な日々。~ドラマCDに明け暮れて~

平穏な日々。~ドラマCDに明け暮れて~

~華が咲く日~

∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨キリンも歩けば亀にぶつかる~華が咲く日~∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨


---番外編(シンとレイ)-------


シンとレイは、生まれた時から殆ど一緒に育ってきた。
もともと、母親同士が親友で、一ヶ月違いで妊娠したため、産まれた時期も同じくらい。
仲の良さが手伝って、二人一緒に育てられた。
二人の両親は大変な美貌の持ち主で、シンとレイが産まれた時も、「こんな綺麗な赤ん坊はそうそう見ることは無い」と病院中の話題になった。
月日は流れ……赤ん坊の時が綺麗な顔でも、成長するにしたがって平凡な顔になっていく子供はたくさんいるが、二人は違った。
赤ん坊の面影そのまま、美しい幼児に育っていた。
もちろん一緒の幼稚舎に入ったのだが、そこでも他の子供たちの親から絶賛を受けていた。
「シンちゃんもレイちゃんも、本当に可愛いわね~」
「うちの子も、こんなに可愛かったらどんなに良いか……」
「それに、素直で聞き分けも良くて……」
同じ幼稚舎の子供たちも、自分たちの親の影響を受けてか、我先にと二人と遊びたがる子供が続出した。

でも、可愛過ぎても弊害が起こる。
この二人に関しては、よく変質者に連れ去られそうになったりした。
気を惹くために腹を押さえて蹲るふりをすると、円らな瞳で
「おじちゃん、どこか痛いの?」
と心配そうに覗き込んでくる愛らしい子を、拉致りたくなるのも、分からないではないが、犯罪は犯罪である。
困った二人の親はシンとレイにGPS付きの携帯を持たせ、常にどこにいるかを確認した。
そのお陰で未然に防げた誘拐未遂が多々あった。
また、同じ幼稚舎の先生・親たちもそんな状況を知り、皆で子供たちを守りましょう!
と、地域ぐるみで目を見張らせることになった。

小学校にあがる頃。
母親に顔立ちが似た二人は、女の子のように可愛らしく成長を果たしていた。
周りから、蝶よ花よと、大切に育てられたのも手伝って、性格も大変可愛らしく、誰にでも優しく、親切だった。
クラスメイトのみならず、上級生も二人と仲良くなりたいと、先を競って近づこうとしたが。
あまりに凄い勢いだったため、二人が困り果ててしまった。
二人を困らせるのは本位ではない。
僕たちが二人を見守っていこう!と、不可侵条約がこの時出来上がった。
二人にはなるべく普通に接し、抜け駆けはしない事。
二人が話している時は邪魔をしない事。
二人が困っていたら、さりげなくフォローし、でしゃばりすぎない事、などなど。
小学校の6年間は、それで平和に過ぎていった。

中学・高校と持ち上がりで進学したため、その傾向はそのまま引き継がれていった。
中学にあがった頃はまだ可愛さが抜け切らずに、女の子めいていたが、高校にあがる頃には幼さが抜け、美しく成長を遂げていた。
学校側も二人一緒の方が見守りやすく、ずっと二人は同じクラス。
その為、4月のクラス発表の時は、天国と地獄に分かれた同学年たちのさまざまな悲鳴が学校を轟かせていた。
学年が違うと接触がないのかといえばそうではない。
いろいろな行事ごとはABC……と分かれたクラスの学年ごと縦割り(1~3年のAクラスは同じチームといった感じ)で区切られていたので、同じ番号が当てられたクラスは至福の1年を過ごした。
写真の売買は当たり前。だか、写真部だけがその特権を有し、収益金の一部は『シンちゃんレイちゃん後援会』の資金に当てられていた。
学園内では不可侵条約の為に、二人に手を出そうという不埒な生徒はいなかったが、学園外には我先にと気を惹こうとする人達で溢れかえっていた。
登下校時など、二人を守るために後援会のメンバーがそんな集団を蹴散らしていたのである。それも秘密裏に。
学園行事の度に、二人が参加した競技、出た劇や合唱などは本来学園で保管するビデオとは違うビデオに収められ、裏ルートで出回っていた。
レイは持ち前の性格も手伝ってかよく劇の主役をやっていたが、シンはあまり表舞台を好まず、裏方に徹するのみだった。
なので、高校2年の時にレイとクラスメイトから頼み込まれ、シンがしぶしぶ出た劇『若草物語』はシンがベス、レイがエイミーをやったため、ビデオを巡る熾烈な争奪戦が繰り広げられた、らしい。
が、二人はその真実を全くと言っていいほど知らないのであった。

ここまで周りに守られて育っていれば、性的知識は皆無に近しいものとなるが。
二人には決定的な違いがあった。
シンとレイには兄が一人ずついたのだが……。
兄の年齢が差を分けた。
レイの兄はレイよりも3歳年上。こちらは父親に似て、男らしい顔立ちの美男子だった。
それはもう、幼い頃から周りの女性たちがほっておかず、常に隣には彼女が存在した。
その為、小等部からエスカレーター式男子校の私立天界学園には行くのを拒み、ずっと共学の学校に進学し続けた。
なので、兄はおもしろ半分、レイに自分の女性関係の話を聞かせ続けた。レイが中等部にあがった頃から、ずっと。
レイが高校にあがる頃には知識だけは一人前の、立派な耳年増になっていたのである。
逆にシンの兄は、シンとは一回りも年齢が違う。母親の結婚が早かったからだ。
ここまで年齢にひらきが出ると、兄というよりも保護者気分になってしまうもの無理は無い。
シンを溺愛し、汚いもの・余計なものはなるべくシンに触れさせないように大切に大切に接してきたのだ。
初めは親が撮影していた写真・映像等も、途中からシンの兄がするようになり、玄武家と朱雀家には彼が編集した特製DVD『シンちゃんレイちゃん成長日記』が、ずらりと並んでいるのである。
それなので、高校にあがっても、シンは性的知識は殆ど皆無の、純真無垢・純粋培養に育ってしまったのである。

まったりとしてしまう位に穏やかすぎていく二人の日常。
こんな調子では恋の一つも身近に転がっていない。
テレビや小説では知ってはいても、実際には経験したことが無い。
いつか好きな人が出来たら、真っ先にお互いに報告しようねと、シンとレイは約束していた。

レイの初恋は、自分の両親が経営する料亭で。
個室の座敷に案内されていく二人連れの片割れの青年。
完全な一目惚れだった。
普段は店の事には口を出さないレイが、どうしてもと頼み込んで料理運びをさせて貰った。
この胸の高鳴りの正体が、一体何なのかを確かめるために。

シンの初恋は、ほぼ毎週の土曜日に通っていた図書館で。
大量の本を抱えて歩いていた時にぶつかった青年。
失礼をしてしまったのにも関わらず、真摯に対応してくれた人。
その意思の強い瞳を見た時から、惹かれ始めていた。
胸に咲いた淡い想いの正体を、自身でははっきりと認識しないままに。

シンとレイの初恋が実るのは、これよりも後のお話――

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