平穏な日々。~ドラマCDに明け暮れて~

平穏な日々。~ドラマCDに明け暮れて~

~V・D編 2~

∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨キリンも歩けば亀にぶつかる~V・D編 2~∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨


次の日、レイと共に学校へ向かった。
「シン、大丈夫ですか? 目が赤いですよ? それに、しんどそうです……」
「大丈夫です。レイは気にしないで下さい」
「でも……」
「それより……昨日の朝、門の前でユダさんと一緒にいるレイを見ました。ユダさんはレイに何を頼みに来てたのですか?」
「それは……」
いつもはっきり物を言うタイプのレイが珍しく口ごもった。
(ユダさんがシンには内緒と言ってたのに、僕が話して良いのでしょうか?)
シンの事を考えて、ユダの計画を今ばらしてしまうのは……と、レイは返答に詰まってしまった。
(やっぱり、私には言えない何かが、ユダさんとレイの間にはあるのですね……)
疑心暗鬼に捕われてしまったしまったシンは、そのレイの対応に、己の疑いの確信を得た気分だった。
「シン?」
「何でもありません。教室に向かいましょう」
「…………」
いつもと様子が違うシンに、レイは声をかける事が出来なくなってしまった。

いつものように、ユダがシンを校門で待っていた。
「シン。今日は調子どうだ?」
やはり、顔色が悪いシンであった。
「大丈夫か? 家に帰ってすぐに休んだ方がいいだろう」
そう言って、ユダはシンを強制的にシンの家に連れて帰った。
「少しだけお話したいのですが……お時間ありますか?」
少し悲しげにシンはユダに言った。
「大丈夫だが……」
シンが悲しげに深刻な顔で言うので、何があったのか……心配になるユダであった。
ひとまず、ユダはシンの部屋にあがった。
「話は聞くから、まずは、布団に横になっていろ。シン」
ユダはシンの上着を脱がせて、ベッドに寝かせた。
「どうしたんだ? シン」
シンの頭を撫でながらユダは問いかけた。
「土曜日は誰かとお会いしていたのですか?」
「? あぁ、レイと――」
「レイと、用事だったのですか?」
「そうだ。ちょっと相談事があったのでな。シン? 本当にどうしたんだ?」
「それは、レイにしか出来ない相談事なのですか?」
「あぁ、そうだが……」
シンが、何か深い悩み事を持っている、もしくは怒っている? のは分かったのだが、よもや、レイと疑われるなんて思ってもいなかったので、ユダは困惑した。
「シン? 何か怒っている……か? 俺が何かしたか??」
「怒ってなど、いません。……私にはもう、ユダさんの為に出来ることは、何も無いのですね。レイの方が、いいのですね……」
シンは涙を瞳に溢れさせながらユダに言った。
そして、ユダは、一瞬なにを言われたのか良く分からずにいた。
「シン……? 今なんて……?」
シンは、ベッドからがばっと起き上がった。
「だって……見てしまったんです。レイが頬を染めてユダさんを見つめて、ユダさんもレイをいとおしげな瞳で見つめ返している所を。それに……ユダさんの頼みごとの内容を、レイは教えてはくれませんでした……それは、ユダさんとレイの、二人の秘密ということでしょう?」
「どこをどうしたらそうなるんだ? レイはルカの恋人だろう? 何故俺が、シンではなくレイを選ぶんだ?」
シンは涙を必死に堪えて、見たままを話した。自分に内緒で二人で会ってたユダとレイの事。通学路で聞いた、女学生たちの話のことを。
「ルカさん抜きで、隠れるように二人で会っていたのはどうしてですか? ……二人は違うと思っていても、隠されたら、どうしても疑ってしまう。疑いたくなんて無いのにっ。二人とも好きだから、だから信じたいのに。疑ってしまう自分の弱さが情けなくて、恥ずかしい……。もう、優しく接して貰うのだけでは、物足りないのです。こんな些細なことですぐにユダさんを疑ってしまうなんて、もう嫌です。もっとしっかりとした絆が欲しいのです。ユダさんとは何でも話し合える間柄になりたい。穏やかな関係だけでなく、痛みも苦しみも。ユダさんが与えてくれるものなら、何でも受け止めるから……貴方の全てが、私は欲しいんですっ」
シンは歯を食いしばり、ユダの両腕を掴んだ。
「シン! レイとの事は別に隠していたわけじゃない。レイと話をしていたのは――」
シンは、今はそんな事はもう聞きたく無いとばかりに、首を振っていた。
(また、俺がシンをこんなに苦しめていたのか。こんな状態になるまで気付かないなんて……)
ユダは自己嫌悪に陥った。
まだ、首を振り続けるシンをぎゅっと抱きしめ、
「シン。分かったから、落ち着くんだ。シン……」
そっと、口づけた。
(俺のせいで……)
二度目の口付けは、先ほどのとは違いとても激しく、そして、どこか余裕の無いものだった。
「んっ……はぁ……」
そして、額からまぶたへ……頬を伝い首筋へとユダの唇が移動していった。
シンが感じる所に愛撫を続け、シンだけが達したのである。
息が切れながらも――
「ユダさ……ん……どうして……?」
自分だけがいかされてしまった事に、シンが驚いて声をあげる。
「シン。抱きたいだけなら、いつでも抱こうと思えば抱ける。だが……俺は……ただ、慰めるだけの為にお前を抱きたくは無い。俺自身も、自分の欲望だけをお前だけにぶつけたくはないんだ……レイとの事は、本当にシンの誤解だ。ただ、レイにお前が喜びそうな事を相談していただけだ。お前自身のことなのだから、お前に聞けば良かったんだろう。誤解をさせてすまない。シン」
シンを追い詰めてしまったユダは、自分自身が許せなかった。
「誤解? 本当に? 私はまた、間違ってしまったんですか?」
ユダの言葉に呆然として、自分では気付かないうちにシンは言葉を漏らしていた。
(シンにとって、俺は本当は存在しない方が苦しまずにいられたのかもしれない……いつも追い詰めてばっかりだ……)
あまりに純粋なシンを、ユダは壊してしまいそうで怖かった。
「シン。今日は帰るな。また、明日落ち着いて話をしよう。な?」
そう言って、ユダは部屋を出て行った。

ユダは、先ほどのことを考えながら歩いていると――
「ユダさん、待って!!」
シンが追いかけてきていた。
その時、車がシンに向かって暴走している事に気付いた。
「シン! 危ないっ」
シンに駆け寄り、シンを庇ったユダが、シンの前で跳ねられてしまった……。
シンは、今の出来事がスローモーションのようにゆっくりと時が流れているかのように、ユダが倒れる所を見た。
車はそのまま去ってしまったのである。
「ユダさんっ!!!!」
シンは、今まで出した事の無いくらい大声でユダを呼び、駆け寄った。
「ユダさんっ、私のせいで……あっ……救急……車……救急車を呼ばないと……」
震える手でどうにか番号を押し、シンは救急車を呼んだ。
ユダが運ばれる中、シンはずっとユダの手を握っていた。
(どうしよう……このまま、ユダさんがいなくなってしまったら……私は……私はっ……)
シンはユダが自分の前から消えてしまうと思うと目の前が暗くなり、そのまま意識を手放した。

病室にて――
ユダは、見た目よりは酷い怪我ではなく、2週間程度で退院できるという事だった。
倒れたシンも、ユダと同じ病室で寝かされていた。
ユダは、痛む身体を無理やり起こし、眠っているシンの所へ行った。
「シン……」
そっと髪を撫でながら……眠っているシンに語りかけた。
「シン。お前が俺の全てを欲しいと言ってくれた時、お前があんなに苦しんでいるのにとても嬉しかった。だが……いつも俺のせいでお前は、本来悩まなくていいことを悩み……苦しんでいる……いつも俺のせいで……」
シンは、ユダに髪を触られた時に丁度覚醒した。眠っているフリをしていたのだ。
苦しそうなユダの声に、いてもたってもいられなくなり、頭を撫でるユダの手を止め、自分の胸元で握りこんだ。
「そんな事ないです……相手が貴方だから、私は悩んだり苦しんだりするんです。これが他の人だったら、こんなに考えたりはしない。貴方だから……貴方だけが唯一、私を変えていけるんです。貴方の色に染まっていきたい……私はこれからもずっと、貴方と共に生きたいんです。これは、私の我儘ですか?」
ユダは痛みに耐えながら、
「いや……そんなことはない。俺もお前と共に生きたい。こんなに何かに対して執着した事は今までに無い。お前だけが俺を変えることが出来る。お前だけだ。本当に欲しいと思えるのは。それ以外は何もいらない……」
「ユダさん……」
怪我がたいしたことが無いとは言え、やはり、辛いのであろう。
「うっ……」
少し、うなり声を出し、ユダがよろめいた。
「ユダさんっ!!」
シンはあせって起き上がり、ユダをベッドに寝かせた。

「シン……今度は本当に抱いてもいいだろうか?」
「はい……貴方に愛されたい……私も、愛していますから」

その後病室では――
部屋中ハートマークが飛び交っているようであった。
もしくは、ピンク色な世界と言うのであろうか。
バカップルここに極まる!

ユダが一人で起き上がろうとすると、シンが半泣きになりながら駆け寄ってきて。
「傷口が開いたら……どうするのですか? ……起き上がる時は私に言って下さいっ!!!」
「すまない。シン」
怒られてても、嬉しそうなユダがいた。
また、一人で歩こうとするものならば……
「駄目ですっ、ユダさんっ」
とユダをかしっっと抱きしめ、無理やり車椅子に乗せる始末だ。
ルカとレイがお見舞いに来た時もそれは変わらずで……
「ルカさん、レイ。お見舞いに来て下さってありがとうございます。でも……あまり長時間話をするとユダさんの身体に障りますからっ」
と早めに帰らせてしまう始末だ。
ユダが大丈夫だと言っても、
「お医者様がいいというまで、駄目です」
という事を聞いてくれないのである。
他にも、
「少しでも早くに治って貰いたいのです。そんな事、私がしますから」
はい、あ~ん状態で、食事を口元に運んでやったり、
「まだお風呂の許可が出ないなんて辛いですね。私が拭きますから、ユダさんはじっとしてて下さいね」
と、温タオルで全身を拭いてやったりもしていた。

そして。
病院中が認める(バ)カップルとなっていた。
看護婦の間では、
「今日は私が担当よっ!」
「いいえ。私が行くわっ」
「あの、ユダさんとシンくんのラブラブな所を見るのは私!!!」
という戦争がおこっていた。

無事、ユダの怪我も治り、退院する頃には、ユダとシンはまるで夫婦のように仲むつまじい関係になっていた。
ただ……ユダが退院する頃には、バレンタインは過ぎていたのである。

退院し、ユダは自宅にいた。シンと共に。
「シン。本当はバレンタインに言おうと思ってたんだが……」
「はい、何でしょう?」
「プレゼントは何がいいか思い浮かばなくてな。お前が喜びそうなもの……ものというか。これしか思いつかなくて……今度、お前と共に暮らすための部屋を探しにいかないか?」
「……はい」
ユダに向かって、シンが微笑みかける。
今回の事で一皮向けて大人に少し近づいたシンは、子供っぽさがすっかり抜けて、しっとりとした笑みを浮かべるようになっていた。

事件を解決すると、より一層絆は強まるものなのです。



後書き
何か話が変な方向へ向きましたが(^^;)
ひとまずはハッピーエンドと言う事で…
ところで、シンはバレンタインに何も用意しなかったのでしょうか?
きっと、そういうイベント事には疎いので、後であせって用意しているんだろうな~(笑)

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