平穏な日々。~ドラマCDに明け暮れて~

平穏な日々。~ドラマCDに明け暮れて~

硝子の心~ユダxシン~

。;’* + ☆,°・ ‥.硝子の心(ユダxシン)~。;’* + ☆,°・ ‥.



――本当は、貴方さえいてくれれば良かった……
――それに気付くのがもっと早ければ……

かの時代。天界国という、大国が存在した。
その国の王はゼウスと言い、自分の国の領地だけでは飽き足らず、他の国まで侵入を繰り返す非道な王であった。
父王の残虐非道振りを憂いて、王子のルカが諌めるも、一向に耳を貸さず、自分勝手な振る舞いをしていた。
周辺の国々は次々と領土を奪われ、または配下の属国としての烙印を押され、天界国の拡大は広がっていった。
そんな中、まだ領土侵入の被害を受けていなかった小国諸国の中に、聖獣国があった。
その国の王は素晴らしい人物で、民達からも慕われていた。国も作物に恵まれ、大変裕福な暮らしを送っていたのである。
また、第一王子・ゴウ、第二王子・シン、第三王子・レイと、第四王子・ガイと四人の王子にも恵まれ、王子達も父王の生き様を見て育ち、立派な青年へと成長していたので
あった。

最近レイは、よく一人で外出をするようになった。
「レイ!」
「ルカっ」
ルカの姿を認め、レイが嬉しそうに駆けて来る。手にはバスケットを持って。
聖獣国の少し外れの高台。聖獣国が見渡せるその場所で落ち合うのが、ルカとレイの約束事になっていた。
あれは三ヶ月前。ルカが周辺諸国の偵察中、偶然出会った一人の青年、レイ。ルカはひと目見て、その青年に恋に落ちた。
また、会いたい。そう告げると、レイも、僕もです……とはにかんだ笑みと共に、了解の返事をくれた。
父王・ゼウスに知られたら、どうなるものか分かったものではない。ルカは一層の注意を払って、行動するようになった。
それからというもの、ここ、聖獣国で二人の逢瀬は繰り返された。
逢う度に募る想いを、二人はどうすることも出来なかった。

そんなレイの姿を、シンは温かく見守っていた。
「シン様、宜しいのですか? あれは、天界国の――」
シン付きの従者であるユダが、シンに進言をする。
「ユダ。言わなくても解っています。きっと、レイも気付いているでしょう……」
「はい」
「王のゼウスとは違い、ルカ殿は立派な方だと聞き及んでいます。心配することは、ないでしょう……」
「そうだとよろしいのですが……」
「レイの好きなように、させてやりましょう」
シンは穏やかに微笑んで、ユダを見上げた。
(俺は、あなたの方が心配だ。こんなにも心優しい方は、人一倍傷つきやすい……)

シンとユダとの出会いは、森の奥にある、泉の近くの大木の前だった。
その頃、今のように落ち着いてはおらず、まだお転婆だったシンは、森の奥にある泉まで行くのが大好きで、よく城から抜け出して一人で泉のほとりまで来ていた。
いつものようにおやつを持参で泉までやってきたシンは、大木の前に蹲っている一人の少年を見つけた。自分よりも少し大きい年頃の少年……。
『あなたは、だれですか?』
俯いている少年の顔を覗き込んで、シンが尋ねる。
『………………』
閉じられていた目が開けられ、一心にシンを見返してくる。澄んだ、蒼い瞳。
『ここで、なにをしているのですか? おとうさまと、おかあさまは?』
『親は死んだ……少し前に。それからは一人だ……』
少年から淡々と返された言葉に、シンは返事が出来なかった。
しばらくは無言の時間が過ぎ、やがてぽつりとシンが呟いた。
『これ、わたしのおやつなのですが、いっしょにたべてくれませんか?』
警戒して手をつけようとしない少年だったが、あまりに無邪気に、にこにこと自分を見つめてくる視線に負けて、手の中からクッキーを1枚口に運んだ。
『……美味しい……』
『よかった。もっとたべてくださいね』
『ありがとう。お前は食べないのか?』
二人でおやつを平らげたあと、
『わたしはシンと言います。あなたの名前をきいてもいいですか?』
『……ユダ……』
『ユダはずっと、ここにいるのですか?』
『行くあてはない……』
『では、わたしといっしょにいてくれませんか?』
シンの言葉に、訝しげにユダは問い返した。
『お前と? ……俺が孤児だから……哀れみで言ってるんだろう。そんな必要は無い』
『ちがいます。ユダはとてもやさしい目をしてるから……もっとおはなしがしたいとおもったのです。だめ……ですか?』
『俺でいいのか? 会ったばかりなのに?』
『ユダがいいのです。いっしょに来てくれますか?』
しっかりと頷き返すユダの手をしっかりと握って、シンは城へと連れ帰った。
通された場所に驚きを隠せないユダだったが、自分の手を強く握り締めるシンの温かさに、不思議と不安は感じなかった。
父王は渋い顔をしていたが、シンの強い希望と后の口利きのかいあって、晴れてユダはシンの従者となった。

月日は流れ。幼かったシンも、父王と兄王子の手伝いが出来るほどの立派な青年へと成長を遂げていた。その傍らには、いつもユダの姿があった。
『ユダ。これをあなたに……。色違いですが、私と揃いなのですよ。いつも守ってもらっているので御礼です』
シンはそういって、ブレスレッドをユダに差し出した。シンの腕には、既にブレスレッドがつけられていた。
(これに誓います。私の心は貴方の傍に。何があろうとも)
『シン様。ありがとうございます。大切に致します』
シンからそっとブレスレッドを受取り、大切そうに手首に嵌めた。
(俺は誓う。何があろうとも……あなたの傍を離れはしない。必ず守り抜きます)
ユダの行動に、シンは嬉しそうな笑みを浮かべる。
穏やかな時が、ずっと続くと……この時の二人は信じて疑わなかった。

天界国のゼウスは、苛立っていた。
「ルカめ……いつも私に逆らいおって……」
王座の上で、ゼウスは憎々しげに吐き捨てた。息子であるルカが、事あるごとに自分に楯突くのが気に入らないのである。
しかも、ルカが成長するにつれ、周囲の者達が、ゼウスを排斥し、ルカを主君に立てようという企みも企ているという噂があとを立たない。
「どうすればあやつをおとなしくさせることが出来るか……」
いらいらと肘掛を指で叩きながら、ゼウスは思案した。
「そうだわ。いい考えが浮かんだわ……」
1枚の書状をしたためさせる為、ゼウスは家来を呼んだのであった。
その書状とは――

天界国より届いた書状を父王から見せられ、シンは青褪めた。ゴウとガイは、領土内の見回りのため、3日ほど前に城を出て、あと10日ほど戻ってはこない。
そこには――聖獣国への領土侵入を食い止めたくば、人質として、第三王子のレイを差し出せというものであった。
ゼウスには良くない噂がたくさんある。そのうちの一つに、人質は人身御供――ゼウスの慰み者にされるというものだった。
ゼウスは全て知っていたのだ。最近、ルカの様子がいつもと違うので、ルカに見張りのものをつけていたのだ。
どれだけ注意を払っていても……ゼウスには、情報が筒抜けだったのである。
「父上、私は反対です。あのような男の所へ、レイを行かせるなど!!」
「わしとて、可愛いレイをあのような男の所にやるなど、考えたくも無いわ!! だが、我が国のような小国は、天界国のような大国に睨まれれば、ひとたまりもないのだ……」
父王が苦しげに呟く。
「国と民の為に、レイに犠牲になれと、そう仰るのですか!?」
「そうとは言っておらん……おらんが……わしの苦しい立場も判ってくれ……」
「……判りました。天界国へは、私が行きます。ご使者に、そのように返答を……」
「シン……お前は……」
「可愛い弟を、犠牲には出来ません……。このことは、レイには内密に」
その場にユダがいたら、絶対に止めていただろう。
いや、止める事は出来なかったかもしれない。
それほど、シンの決心は強かった。

天界国へ使者が戻るという前の晩。シンは1枚の書簡をしたためた。
「ユダ。あなたに頼みがあります。この書簡を持って、ルカ殿の下へ行ってはくれませんか?」
そっと、ユダに書簡を渡すシン。
「シン様? これは……何が書かれているのですか?」
「それは……」
天界国からの書状の話、そして、レイの代わりに自分が天界国へ行くということ、今まであったことを全てユダに伝えた。
「シン様!! 何故あなたは……」
とても悲しげな瞳をし、シンに問い詰めようとしたが……シンの心苦しさ、辛さが分かるユダは何も言えなかった。
だが……ある決心だけはしていた。
「分かりました。これをルカ殿にお渡ししたらよいのですね? その他に、俺がする事はありますか?」
「もし……ルカ殿が書簡の件に応じてくれるのであれば、ルカ殿の手助けをしてあげて下さい。約束の場所まで、ルカ殿の案内を……そして、二人を見送ってから、私の元へ
戻ってきて下さい。必ず……」
「分かりました。すぐに……すぐに戻ってまいります」

聖獣国よりの返答の書状を見て、ゼウスは目を見開いた。
が、満足げに頷いたのである。
――そこには、人質には第三王子ではなく、第二王子を向かわせると書かれてあった。
(ルカと恋仲のレイを捉えて我が物にしようとしたが……その兄でも事足りるわ……楽しみよのぉ……)
聖獣国の四人の息子達の噂は、天界国にも流れ及んでいた。四人とも見目が良く、性格も素晴らしいと。特に、第二と第三王子の美貌は、まことしやかに囁かれている。
(恋人の嘆く姿を見て、己が無力さを噛みしめるがいいわ、ルカよ!!)
「ふっわっはっはっは……」
ゼウスの機嫌の良い笑い声が、王座の間にこだまするのであった。

ゼウスに書状を出すと同時に、ルカにも書簡が出されていた。
それは、シンからルカへと、秘密裏に出されたもので、ユダがその任を賜った。
天界国へ戻る使者の護衛の任という表向きの任務に紛れ、ユダはルカに接触を図った。
書状にはこう書かれていた。
『ルカ殿。私はレイの兄で、シンと申します。今回の貴国からの申し出は大変遺憾ではありますが、貴方には何の咎もありません。ご自分を責められませぬよう……。そして
、貴方とレイの関係を知った上でお願いがあります。どうか、レイを連れて逃げて下さい。いつまたゼウス殿からの書状が届くか図りえません。私は、弟の幸せを願っており
ます。どうか、レイの事を宜しくお願い致します。落ち合う場所は、この書簡を渡した人物に案内を頼んでいます』
ユダは早急にシンの言われたとおりに動いた。
ルカに何とか連絡をとり、書簡を渡した。
ルカは、書簡を読み、すぐに行動を起した。
ゼウスが行動を起す前に――
「ユダと言ったな。すまない、シン殿やお前まで巻き込んでしまった……」
「いえ。気にすることは無い。俺はシン様のご命令により動いている。お前と、レイ様を逃がす。今俺のすべき事は、一つだ。そんな事より急ぐぞ!」
「あぁ」
そう言って、馬に乗り、走り出した。
追っ手が、後ろから追いかけてきたが、何とか振り切って、レイの待つ、あの場所へ急いだのである。

「レイ」
「シン兄さま!!」
シンがレイの部屋を訪れると、レイはベッドに突っ伏して泣いていた。
口止めしたにも関わらず、どこからか漏れ聞いてしまったのだろう。
「僕のせいで、シン兄さまが――」
「それ以上は言ってはなりません。――レイ、ルカ殿に話を通しておきました。レイはルカ殿と行きなさい。どこか遠くへ、二人で」
「でもっ」
「私は、貴方の幸せを祈っています。……ぐずぐずはしていられません。レイ、これに着替えて。身支度を整えたら、すぐに出立を」
レイを急かせ、支度を整えさせている間に、シンはレイ付きの従者であるキラに説明をした。
「キラ、貴方まで巻き込んで申し訳ありませんが、レイをお願いしますね。必ず、ルカ殿にレイを。……もし、万が一ルカ殿が来られなかった時には、貴方が……」
「シン様。それ以上は仰らないで下さい。判っております。レイ様の身は、俺の命に代えましても」
「お願いしましたよ」
シンとの別れを告げ、闇夜に紛れて出立する二人の姿を、シンはいつまでも見送っていた。

約束の場所でレイとキラが待つ事数刻、ユダとルカが姿を現した。
「ルカっ、ご無事で!! ユダ、ここまでルカを案内して来て下さって、ありがとう……」
「いえ。レイ様もご無事で何よりです」
「ユダ、シン兄さまをお願いします」
「はい。レイ様もご無事で。ルカ殿、レイ様をお願いします。キラ、お前も……」
ユダは、ルカとレイを逃がす時に、負傷していたが、それを隠し、シンに報告へ行った。

戻ってきたユダの姿を見て、シンは安堵の溜息を漏らす。
「ユダ。あなたのおかげで、レイ達を逃がす事が出来ました。今頃は、ルカ殿と遠くまで逃げ切っている事でしょう。……私は明日、天界国へ赴きます」
「…………」
「その前に、ユダ……貴方に一つお願いがあります」
「なんですか、シン様」
「これは、生涯私の胸の内に留め、誰にも告げないつもりでいました。ですが……天界国に行けば、私の末路は決まっています。あの男の、慰み者にされることでしょう……
。その前に……まだ清らかなうちに……貴方に……」
「シン様……」
「幼い頃よりユダを想っていました。ゼウスの手に落ちる前に、貴方に全てを捧げたい……」
「シン様。あなたを、ゼウスの手元などには行かせません。俺と……俺と共に生きると約束していただけるなら……」
「ユダ……貴方と共に生きれたら、どんなに素晴らしいでしょう……けど、私は国と民を犠牲にすることなど出来ない!!」
涙を流しながら、シンはユダに訴えた。
「シン様……国も、民も……あなたも犠牲には致しません。必ず……必ず俺がお守りいたします。たとえ何があったとしても。この身に変えても。あなたが苦しむ顔は見たく
ない。あなたが笑顔でいられるよう……俺はそれだけの為にあなたの傍にいるのですから。俺を信じてはいただけませんか?」
シンを抱きしめながら、ユダは力強く、シンを包み込むように語った。
「ユダ……貴方を信じます……これからも共に……もう、敬称などいりません。シンと……シンと名で呼んでください」
「シン……」
その夜、二人は共に過ごした。
やっとの事で、互いの想いが通じた瞬間である。

次の日――
「シン!! ゼウスの家臣がお前を迎えに来ている。今すぐ城をでるぞ。急ぐんだっ!!」
ユダはシンの手をとり、城を抜け出した。
だが……。
追っ手にすぐ見つかり、ユダは拘束された。
そして、シンは――
シンが目覚めると、そこは天界国だった。寝台に横にされ、目の前にはゼウスが椅子に踏ん反り返って寛いでいた。
「やっと起きたか。ただの小国の王子だと甘くみておれば……まぁ、良い……」
「ゼウス……殿……」
「噂に違わず、たいした美貌だわ……」
「………………」
「少してこずった方が手にした時の喜びもひとしおだからな……はっはっはっ……」
ゼウスは機嫌よさそうに言い、シンの全身を舐めるように見回した。
「そうそう。先ほど捕らえたお前の部下だが、正午の鐘の音と共に処刑することに決めたわ。邪魔者を全て片付けてから、お前は我が物にしてやる。楽しみにしておけ……」
シンは、ゼウスの言葉に絶望しながらも、ユダを助ける方法を必死に考えていた。
刻々と時間が迫る中――
シンは、何とか部屋から抜け出し、ユダが拘束されている牢屋まで辿り着く事が出来た。
ユダは、拷問を受けたあとであろう、体中にムチや殴打の跡が色濃く残っている。両手足は壁に拘束され、身動きの取れない状態にされていた。
「ユダ!!!!」
シンは悲壮な叫び声をあげた。
「ん……シン……ここから……早く……逃げ……」
すぐにシンは、ゼウスの手下に見つかり、部屋に戻された。
ユダをあのような姿にしてしまったのは自分だ。そう責め続けた。

その頃、ユダはルカの臣下に助けられていた。
「ユダ殿ですね。以前はルカ様をお助け頂きありがとうございます。私どもに出来るのはこれくらいですが……」
「いや。助かった。シンは……シンは何処にいるか分かるか!?」
「おそらく……ゼウスの下にいらっしゃるかと……今なら……今なら間に合います。シン殿と一緒にお逃げ下さい!!!」
ユダは、シンの元へ急いだ。

「シン。今から処刑を始める」
ゼウスは、ユダが逃げた事を知り、早急に探したが見つからず激怒していた。
その時、ゼウスの機嫌を取ろうと、重臣の一人がゼウスに耳打ちした。
「ゼウス様。あの手下が見つからぬ時は……身代わりのものを処刑してはいかがでしょう? さすれば、シン殿も、あやつめへの想いを断ち切ることでしょう」
そう。今から処刑されるものは、ユダに似た者。
ユダではなかった。
だが、遠くから見ているシンには、それを判別できなかった。
いや、たとえ遠目でなくとも、今の気が動転しているシンには気付く事は出来なかったかもしれない。
そして、シンの目の前で、ユダは処刑された。正確には、ユダに似た者が処刑された――

絶望の淵へと追いやられてシンを、ゼウスは自分の寝所に連れ込んだ。寝台へとシンの身を投げ出した。
「どうだ。お前の部下は死んだ。初めから素直に私の元に来ていればいいものを……お前があの者を死に追いやったのだ……ふはっはっはっ……」
シンの顔は涙に濡れ、憎々しげにゼウスを睨みつける。
「泣き濡れた顔も、また格別よのぉ……。もう逃げても無駄だ。表にも見張りをつけておる……支度をしてくる。しばらく待っていろ……」
ゼウスはそういうと、上機嫌に部屋を出て行った。
残されたシンは、寝台の布を力の限り握り締め、唇が切れるほど強く歯を噛みしめた。
(ユダっ……ユダっ……私のせいで……貴方を……死に……)
後悔の念がシンを襲う。あの時素直に従っていれば、ユダは死ななくて済んだ。自分の身はどうなっても良かったのだ。ユダさえ、無事ならば――生きていてくれれば。
(貴方が存在しない世界になど……もう……)
シンは首から提げていたネックレスを外し、中身を取り出した。少量でも摂取すれば死に至る猛毒。
シンは何の躊躇いもなく、それを一気に口に含んだ。身体の力が抜け、寝台に倒れこむ。
(ユダ……私も貴方の元へ逝きます……待っていて下さい……私には……貴方だけだから……)
倒れこんだシンの瞳から、涙が一筋流れ落ちた。だが、その顔には、笑みすら浮かんでいた。

ユダは、ルカの家臣たちに教えてもらった、秘密の通路を使い、ゼウスの部屋まで辿り着いた。
「シン!!! どこだ!?」
ユダがシンを見つけた時には――
「シン……なぜ……」
その時、ドアの外で足音が聞こえた。
ユダは咄嗟にシンを抱きかかえ、部屋を後にした。
そして、無我夢中で逃げた。どこへ向かっているとも分からないままに、馬を駆り続けた。
辿り着いた先は。シンと出会った、森の奥の泉のほとり……。
シンを大木に優しくもたれかけさせ、
「シン。俺は、お前との約束を守れなかったのだろうか……俺は……お前一人にはしない。ずっと傍にいる。お前と共に……」
ユダは敵に捕まった時は自害するようにと、将軍から持たされていた毒を口に含んだ。
そして、最後にもう一度そっとシンを抱き寄せた――

ユダはとても大切な者を守るように、そっとシンを抱きしめた。
腕の中のシンは、なんの苦しみも無く……とても幸せそうに、まるで眠っているかのように安らかな顔をしていた。

『シン。俺はお前が笑ってくれるだけでそれでいい。後は何も望まない』
『私は、ユダ。貴方が傍にいてくれるだけでいい……願いはそれだけ……』



ふと、ユダが目覚めた時、何故か涙が頬を伝っていた。
目の前にはシンが幸せそうに眠っていた。
存在を確認するように、ユダはシンの頬を優しく撫でた。ユダの手の感触で、シンは目を覚ました。
「ん……ユダ? どうかしましたか?」
「いや……なんでもない」
そっとシンを抱きしめた。
シンの存在を確かめるかのように。
(夢……か。夢でよかった……お前を失う事など考えたくない……いや……お前を失ったら俺は――)
そして、ユダはシンを抱きしめたまま、眠りについたのであった―ー―



今度生まれ変わる時もまた、共に生きよう。
俺は必ずお前を見つけ出す――

幾度生まれ変わっても、貴方と共にありたい。
貴方の傍が、私の生きる場所だから――


後書き
いかがでしたでしょうか?
少し悲しい物語です。
大切なものは失った時に気付くものなのでしょうか?
でも、失う前に気付く事が一番いいのですけどね(>.<)
ちょっと、しっとりと寂しい物語を書きたいな~と思って書いてみましたっ
といっても、基本設定は、さやっちが作っているのですけどね(^^)
でも、どんな時代であっても、出会わないよりは出会った方が幸せだと思いますvv

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