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第6章 (330さん)
読者の皆さんの中にはお気づきになった方もおられるかと思いますが、
このキャンディの物語の舞台はヴィクトリア朝になっています。
つまり本当のキャンディの世界より少し前ということで。
第一次世界大戦後の世界はあまり好きでないので、19世紀後半ということにしたんです。
ずっと時代ロマンス物というものを書いてみたいと思っていたというのもあったし。・・・(以下略)
(第6章に入る前に、短い筆者のコメントがありまして、一部を意訳しました。
私自身最初の頃、「なんで移動に馬車を使うの?」とか「アフリカの描写がかなり前時代っぽいような・・・」
など疑問に思いながら読み進んでいたのですが、それは作者がちゃんと意図した上でのことだったようです。)
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第6章
「あいつに会ったらすぐにぶちのめしてやる!」
書斎にて、瞳を大きく見開いたスザナと、驚いた表情をみせるキャンディの目前で、
テリィは眉をしかめ、火花が散るような眼光で怒りをあらわにした。
「テリィ!それはあんまりいい考えではなくてよ。お客様もいることだから、
どうか大きな声を出さないで・・・。」
スザナはキャンディのことを気にかけて言った。
「客がなんだ!」
テリィはたしなめる妻を無視し、声を荒げた。
「君をこんな風に傷つけやがって、あの野郎!」彼は理性を失って叫んだ。
「奴のところへ行って、キャンディと結婚するよう訴えるべきだ」
「やめて、テリィ!」
キャンディはテリィの振りかざした腕を掴んで止めた。
「お願い!子を成すということは1人では出来ない、これは2人でしたことなのよ。
私が彼の元へ行ったの。」
キャンディはテリィを追いかけながら必死で伝えた。
「関係ないさ。奴にも分別ってものがあって然るべきだろう。
ああ、キャンディ・・・奴は君の後見人、保護者のはずだったんだからな!
奴が赤ん坊を認知するよう、俺が要求してやる。」
青ざめた顔をしてテリィの腕にしがみついていたキャンディが、打ちひしがれた表情で
首を横に振っているにもかかわらず、テリィはまだ怒りに燃えるような面持ちで続けた。
「お願いだから、やめてちょうだい、テリィ!」
キャンディは懇願し続けた。テリィはちらっと、キャンディの泣き濡れた顔に目をやった。
「・・・奴が認めないというなら、認めるまで殴り続けてやるさ・・・!」
やめて、と繰り返すキャンディを見ながら、まだ続けた。
しかしやがて落ち着きを取り戻すと、キャンディをじっと見つめた。
「・・・そしたら、君は一生ただ惨めな思いをするんだろうな・・・」
キャンディの悲痛な表情を見つめながら、テリィは口を閉ざした。
「オーケー、分かったよ。俺のアイデアは大したことないってことだ。」
そう認めると、アルバートに対する怒りは消えないものの、テリィの勢いは急速に衰えて言った。
脳裏に浮かんだアルバートの端整な顔に、自分のこぶしを見舞ってやりたい、
まだそのように思いつつ、両手をポケットに突っ込んだ。
「貴方はいつも頭よりも手で考えるのだから、テリィ。」
スザナが言うと、テリィは苦笑いを返すのだった。
彼女は立ち上がり、夫とキャンディのほうへ少し寄りかかるような姿勢で言った。
「私はまず、キャンディに私達のところで心地よく過ごしてもらうことが先決だと思うわ。」
キャンディの瞳は驚きに見開かれ、さらに、とっくに充血した目から、
また大きな感涙がこぼれた。
テリィは彼の妻に同意し、頷いた。
「キャンディがいたいだけ、ここにいていいんだよ。」
「次に大事なのは、アルバートに赤ちゃんのことを伝える意思があるのかどうかだわ。」
スザナには、それがキャンディにとって難しい決断であるものの、
かならず直面しなければならない案件であることが分かっていた。
キャンディは書斎の窓へ向かうと、外の霞んだ冬の景色を見渡した。
両手を合わせ固く握りしめながら、彼女の心は幾千マイルもの隔たりを越え、
想いを遂げられなかった男のところへ飛んでいった。
ただ自分が彼を愛したように、自分も愛されたかっただけだった。
また心が彼を強く求めている・・・キャンディはそう思った。
「彼には伝える必要があるわ。」
かつて会った事のない、自分の両親のことを考えながら、キャンディは静かに言った。
自分の子供が親に会う権利を奪うことは、決してすまいと思ったのだ。
キャンディは、テリィとスザナのほっとした表情には気がつかなかった。
「彼はきっと子供を認めると思うの。アルバートの責任感はゆるぎないものだから。
でも、私は時を見て彼に知らせたいわ。」
彼女は締めくくった。
「私の心の準備が出来たときにでも。」
テリィはキャンディに近づくと、彼女の美しい顔を見つめた。
彼女の表情は不安に満ちていた。
「早いほうがいい。キャンディ。」
彼は慎重に、静かに言った。
「自分も父親だからいうけれど、こういうことは、安易に扱ったり、
長いこと知らされないままにしないほうがいい。
あいつだって、ずっとだまされていたと思ったらいい気はしないと思う。」
キャンディは涙を拭きながら頷いた。
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数週間後・・・
ミシガン州、アードレー家にて
「僕は貴方がそこまで最低の男だとは知らなかったよ!」
アルバートと弁護士が書斎にて会合をしているところへ、アーチーが怒鳴り込んでいった。
アルバートは彼を睨み付けた。
「何をそんなに怒っているんだ、アーチー?大事なミーティングの最中なのが分からないのかね?」
「そんなものさっさと終わらせたほうが身のためですよ。
弁護士達にあなたのスキャンダルについて知られたくないのならね!」
アーチーが脅すように言った。
アルバートは甥のいわんとするところを推し量るようにじっと見つめたが、
やがて目を閉じて無表情になった。
そして弁護士に席を外すように伝えると、軽蔑の眼差しを
向けるアーチーのほうへ向き直った。
「これで私の一切の関心が君に向けられたわけだ。さっさと言いたいことを言って出て行ってくれ。」
アルバートの辛辣な態度は変わらず、
彼の青い瞳は冷たくアーチーをにらみつけていた。
アーチーはアルバートをより近い距離から見つめた。
彼の目の下にはクマが出来、やや暗い金色のひげを蓄えた顔の輪郭は、
普段よりやや痩せこけて見えた。
彼のダークブロンドの髪は、一日中何度も手でかき上げたのかという感じに
乱れている。
いい気味だ。アーチーはほくそえんだ。
キャンディをひどい目に合わせた奴に相応しい風貌だ。
「キャンディに関することだ。」
その名をいうことで、アルバートの関心を一気に傾けることができると知りながら、
切り出した。
案の定、アルバートは広い肩を真っ直ぐ伸ばし、彼のからだ全体が
困惑のため緊張しているのが分かった。
「私は聞いているよ。」彼はそれだけ言った。
「彼女はシカゴのグランチェスター邸に身を寄せているようですが。」
テリィの姓を聞いただけでアルバートの目が怒りに光ったのに
気づきながら、アーチーは話を始めた。
「ブラッドフォードの友人である、ドン・フェルナンデスも、
キャンディに熱心な求婚をしているらしいですよ。」
「ほう、それだけかい?」
アルバートは特に関心を持たず、ためいきをついた。
彼はシカゴを訪れ、その男達を打ちのめしたいという思いを押しやった。
自分の暴力的な考えを制御するための理由をむりやり考えた。
アルバートは、月初めにキャンディから届いた手紙を思い出していた。
2週間前にキャンディから届いた手紙には、元気にやっていて、
彼女自身と彼女の新しい人生に関して心配はいらない、と書かれていた。
ジェームス・ファローは、プロポーズ以前に、彼女と自分の間に
なんらかの同意が必要だろうといって、キャンディへの求婚をとりやめた。
アルバートは、アフリカからキャンディを追って戻ってきたものの、
ニューヨーク港から先の彼女の行方が分からなくなってしまったのだった。
追跡に手を尽くしたが、彼女を見つけることはできなかった。
なので、もうあきらめかけていたところだった。
彼はもちろん、彼女がどれほど傷ついていたか知っていた。
そして自らの心の痛みを理解せず、あるいは彼女への想いが募る度に完全に無視し続け、
当座のところをやり過ごしていた。
しかしながらアルバートは、来る日も来る日も、彼女の安否はどうか、
自分が仕事にいっそう打ち込んでいる間、彼女は誰と時間を
供にしているのであろうかと気が気でなかった。
そして夜になると今度は、彼女の官能的な美しさや、
一緒に過ごした熱い夜を思い出し、苦悩するのであった。
何度、彼女の優雅な手紙を読み返しただろう?
彼には数え切れなかった。
何度となく読み返したため手紙の端は擦り減り、ぼろぼろになってしまっていた。
アルバートは気をとりなおすとアーチーに焦点を戻した。
キャンディの名を聞いて鼓動が高鳴っているにもかかわらず、
平静さを失わずに、足を組みながら机に寄りかかった。
「いや、それだけじゃありませんよ・・・。」
アルバートの不動の沈着さを覆す、最期のときを期待しつつ、アーチーがニヤリとした。
「キャンディのお腹には、赤ん坊がいる。あなたの子供がね。」
「何だと?」
最初の激昂。その瞬間、アーチーはアルバートの前で勝ち誇ったように、
くすくすと笑っていたはずであった。
しかし次の瞬間、彼は、アルバートが本当に自分を殴ったのかと疑うほどに、
ボーッとした状態で壁に寄りかかっていた。
アーチーは、自分のすぐ横の壁にあいた大きな穴を見て驚愕した。
そして、アルバートがこのときはじめて見せた怒りの激発に、
ある種の恐怖を覚えた。
「貴様が今言ったことをはっきり説明してもらおうか。
さもなければ、貴様の頭に、
壁にあけたのと同じサイズの穴をあけてやるからな。」
激しく燃えるような眼光が、彼の怒りとともにアーチーを串刺しにした。
襟をアルバートにつかまれたアーチーは、意を受けて言った。
「彼女は貴方の子を身ごもっている!テリィは言わないが、
彼の目が確かにそう言ってましたからね。
彼の妻ですら、アニーと僕に冷たく接していましたよ。」
アルバートが手を離すと、アーチーは、痛くなっていた喉元を
さすりながら床にへたり込んでしまった。
「独りに…。キャンディに会いにいく。」
アルバートは踵を返すと書斎の出口へ真っ直ぐ向かい、
ドアを勢いよく閉めると部屋を出て行った。
.
.
.
イリノイ州、シカゴ
「お聞きになりまして?」
ひとりの若い女がそわそわとした様子で、漆黒の髪と、
非の打ちどころのない乳白色の肌をもつ貴婦人に話しかけた。
その美しい女性の氷のような蒼い瞳は、不機嫌に少しゆがんだ、
彼女の真っ赤な唇とマッチしている。
未亡人となって間もないキャサリン・シャロン・デュ・プリーは、
彼女の友人のほうへ身を傾けた。
もう30歳台後半だというのに、彼女の美貌は歳をみじんも感じさせない。
キャサリンはオペラ座に、高慢な姿で登場しては、つい最近まで夫があった身にもかかわらず、
何人もの愛人と情事を楽しんでいた。
キャサリンは表情には出さないものの、同席しているこの友人に対し、
多分に退屈感を感じていた。
シカゴのオペラやバレエにはまったく関心がなかった。
しかし友人が、名優として知られるテリィ・グランチェスターが、
彼の妻と、彼らの招待客であるキャンディス・ホワイトを伴って来るので、
どうしても、というのでやってきたのだった。
「スコットランドのアードレー公爵がさっき着いたそうよ。
噂によれば、まったくの道楽好きで、ハンサムなプレイボーイだとか。」
友人は扇子の影で、急に身体をこわばらせたキャサリンに囁き続けた。
「ここへ?」
キャサリンは、オペラ観劇に来ている誰にも驚きの表情を見せないよう努めつつも、
ショックに息を飲んだ。
「ええ」
友人は、地元のゴシップとの関連を楽しむように頷いた。
「彼は、彼の我侭な養女を探しているそうよ。その女性は、
申し分なく美しくて優雅で、名をキャンディス・ホワイトというらしいの。」
キャサリンの友人は、自分の扇子で、会場の向かい側の大きなボックス席を指すと言った。
「そして彼女は妊娠しているんですって!キャンディは独身で、
お腹の中の子供が誰のなのか、誰も知らないそうよ。」
友人はキャンディス・ホワイトにまつわる、おいしいスキャンダルにクスクスと笑った。
「グランチェスター夫妻はキャンディス嬢を庇護する立場をとっていて、
事の真相については全く公表していないの。
テリュースは彼の父親の爵位後継者だけあって、誰も何も言えないというわけ。」
「そう、彼女のお相手が誰なのか、まさにシカゴ上流社会の注目の的なわけね。」
キャサリンが慎重にそういうと、友人が全くその通りといわんばかりに頷いた。
キャサリンはすぐに、自分の友人が指している人物に気がついた。
テリィと彼の美しい妻、スザナはすぐに分かった。もうひとり、全く見たことのない女がいる。
ずいぶん遠くからでも、彼女はその女性が、優雅で美しいと噂される理由が理解できた。
彼女はふと、アルバートが本当にこの女性を探していたのか、
そしてキャンディを自分のもとに連れ戻すつもりなのか疑問に思った。
キャサリンはなんとかしてつき止めたいと思った。
「あの女の人、あなたをじっと見ているわよ、キャンディ。」
スザナがキャンディの耳元でクスっと笑った。
キャンディは驚いて、会場内をキョロキョロと見回した。
「誰?私達のいるボックス席を見ている人ならたくさんいるようだけど。」
キャンディは小声で応答した。そして黒のベルベットのドレスについた
糸くずを取るふりをして、頭を前に突き出した。
「2人とも、静かに。演者のセリフに集中しようとしているんだから。」
テリィが2人の静かな会話をさえぎった。
黒い夜会服に身を包んだ彼は、たまらなくハンサムであった。
彼のチョコレート色の長い髪は、後方へきれいになでつけられ、
悪魔とも、独裁者ともいえるような威厳をかもし出している。
スザナは周囲の者が見ていない時、何度となく彼へ賞賛のまなざしを向けたのだった。
彼は、オペラ観劇の後の、2人の夜の楽しみの合図の意をこめて、美しく赤らめた頬にウィンクした。
キャンディは、テリィの返答にスザナが赤い顔をして、もう少しで声を出して笑いそうになるのを見て、
自分も貴婦人らしくなく、鼻から息をもらして、クスクスと笑い出した。
「いびきをかくことが貴方にとって集中を意味するのだったら、
私は貴方に楽しんでもらうための努力なんて、惨めなことはしたくないわね。」
テリィはスザナの返答に少し赤くなりつつ、静かに笑った。
「でも本当に、どの女性のことをいっているの?」
キャンディはまだ気になるようで、スザナにたずねた。
扇子で顔を覆いながら、周りを見回した。
「通路の向こう、ひとつ下の階よ。」スザナが囁き返した。
「彼女、二幕目の前座の時からずっとあなたを見ているわ。」
「まあ・・・」キャンディは、黒髪の女性に気づき、ため息をついた。
「誰だか知らないけど、とってもきれいな人だわ。」
キャンディは言った。するとその女性の目が合った。
キャンディはその女の刺すような視線から目をそらし、
より高い社会的地位や権力を持つ招待客のための、優雅なボックス席を見上げた。
シカゴにはそれほど多くの有力者がいないのか、席はまばらにしか埋まっていなかった。
その時、馴染みのある、硬質な青い目が熱く彼女を凝視しているのに気づいた。
キャンディはショックのあまり、突然周囲のことを忘れてしまった。
驚きのあまり、彼女の息は絶え絶えで、止まりそうになった。
鼓動が早くなり、心臓が飛び出しそうだった。
椅子に座っていなければ、気を失っていたに違いない、そう思った。
キャンディは、信じられないといった様子で、すばやくまばたきをした。
キャンディ達の席からほぼ向かい側に、アルバートが座っていた。
タキシードを着こなした彼はこの上なくエレガントかつ、信じられないほどハンサムであった。
その姿にはかすかに周囲を威圧するものがあった。
アルバートはキャンディと、スザナ、テリィを冷たく見つめていた。
オペラ開演時には彼の姿はなかった。第2幕から入ってきたにちがいない。
キャンディは、自分に向けられた彼の視線に、燃えるような怒りを感じ取り、身震いした。
「キャンディ、大丈夫かい?」
オペラが終わり、会場を出るため人ごみの中を歩きながら、テリィは心配してたずねた。
「オペラの後半ずっと静かだったね。」
「いえ、大丈夫よ。」彼女は答えた。
震えは止まっていたが、彼女には来るときがやって来たことが分かっていた。
キャンディはテリィとスザナには、アルバートがオペラ座に来ていることを知らせたくなかった。
このような場での出会いは惨たんたるものになるになるだろう、
彼女はそれを恐れたのだ。
「赤ちゃんは大丈夫?」スザナも心配してたずねた。そして彼女の夫を見上げた。
「え、ええ。大丈夫よ・・・」
その時、アルバートと、先ほどスザナが話していた女性が視界に入ってきたため、
キャンディはそっと身を隠したが、時すでに遅しであった。
立ち話をしているいくつかの集団をのぞき、ほとんどの観客はすでに会場を離れていた。
キャンディは我を忘れて立ち止まり、震えながらアルバートを見つめていた。
こんな状況で、どうして自分の妊娠を隠すなど願えようか?
彼はすでに自分の近況について知っているようだ。
先刻と違い、アルバートの青い瞳は閉じられていた。
彼の表情は、キャンディが客席から感じた、彼の怒りと矛盾することはなかった。
彼の悪魔的な容姿にいまだ魅了されつつ、その素敵な姿を見つめる他、
彼女にはなす術がなかった。
テリィとスザナも、アルバートと女性に気づいていた。
夫妻は彼らとの直面に際し、微動だにせず、緊張に身体をこわばらせた。
テリィは、キャンディを気遣いその手を彼女の肩に置いた。
その動作がアルバートの目にとまると、彼は目を細め、若い男をにらみつけた。
「さて、以前もらった手紙に書かれていたとおり、君はうまくやっているようだね。」
アルバートは、キャサリンのことはすっかり忘れ、キャンディに声をかけた。
彼は、テリィがやや身を硬くしたのに気がついた。
この男はキャンディが自分に手紙をよこしていたことを知っているのだろうか、と疑問に思った。
キャンディはハッとし、彼の言葉に何か返さなければ、と気を持ち直した。
彼の、強烈に冷たい目つきには警戒したほうがいい。
分けが分からずそんなことを考え、何かいう代わりに、頷いた。
「少し時間をもらえるかな?」アルバートはゆっくりと慎重にたずねた。
彼の声にはしごく冷静であった。
彼はキャサリンをキャンディと彼女の友人に紹介すらせず、非礼であることを気にはしていた。
しかし今は、キャンディが自分に教えなかった事について、言及すること以外考えられなかった。
そしてアルバートはキャンディが、子を身ごもった女性にしては、
自分の想像を絶するほどに美しくなっていたことに打ちのめされていた。
自分の子供!なんてことだ!
キャンディはしずかに頷くと、止めようとするテリィとスザナを手で制した。
彼女の意向を尊重して、彼らは態度をやわらげた。
テリィとアルバートは鋭い視線でにらみ合いながらも、互いの距離を保った。
「君は私の子供について知らせる気はあったのか?」
2人だけになるや否や、アルバートは詰問した。
「当たり前じゃないの。アルバート!」
彼のあざけるような声のトーンに、急に背中をこわばらせながら、キャンディは言い返した。
「いつそうするつもりだったんだ?子供が生まれてからか?
2年先ぐらいまでにでも、などと思っていたんじゃないのか?」
キャンディの自己防衛的な態度に腹を立てたのか、アルバートは嫌味に言った。
まだ怒りが体中を駆け抜ける。
彼はポケットの中で両手をぎゅっと握り締めた。
シカゴに着いてから2日間というものの、彼はずっとキャンディの状態を心配し、
神経をすり減らしていたのだった。
彼女は自分が彼を地獄に落としたことに、少しでも気づいていたのだろうか?
「もちろん、そんなつもりはなかったわ!」
彼女が言い返すと、突然、その瞳から涙が溢れ、アルバートは何も言えなくなってしまった。
キャンディはアルバートが深い苛立ちに髪を掻き揚げ、彼女の泣き顔から顔を背けたのを見た。
「キャンディ、この2週間、君がどんなひどい拷問を僕に与えたか、分かるかい?
君の安否を気遣い、さらには僕の子供がお腹の中にいると知って?」
彼はついにキャンディの濡れて、大きく見開かれた目に視線を戻した。
アルバートは、彼が求めている答えが、きっと得られるであろうと確信しながら、
彼女の大きな緑色の瞳を見つめた。しかし、代わりに返ってきたのは、不確かさと、苛立ちのみであった。
キャンディは、アルバートが突然見せた、オープンな表情に疑問を感じ、
頑なな態度を崩さなかった。
探るような視線で彼の表情を観察すると、彼の口元に半ばからかうような笑みが浮かんでいるのに気づいた。
彼女はもう一度、アルバートの真意について疑った。
キャンディは、彼に子供を認知してもらうことに関し、
ずっと彼女が心に秘めていた懸念について、ついに口にしてしまった。
「 あなたは私の赤ちゃんを連れて行ってしまうつもりなの?」
彼女は喉に痛みを感じながら、掠れた声で囁いた。
アルバートはひきつった口元に少しだけ笑みを浮かべると、首を横に振った。
「いや・・・だが、親切なグランチェスター夫妻にこれ以上世話になり続けるわけには
いかないだろう。 僕は君に対して責任がある。」
彼は、プライドと失意が彼女の体中を襲っていることに気づきながら、
彼女のこわばった肩に向かって語りかけた。
「私はもう子供ではないわ、アルバート・・・」
アルバートが遮る前に、キャンディは怒りをあらわにした。
「分かっている。」
彼は、目の前に堂々立つ女性に向かい、掠れた声で言った。
彼の情熱的なまなざしは、彼女の優雅な体から発せられた言葉が真実であることを悟った。
(あどけない快活な少女から、魅惑的な女性にすっかり変貌したな。
ああ、これは全て自分のせいなのだ。)
過去の彼女への扱いについては、彼自身も嫌気がさしていたし、
自分に彼女に求婚する価値などないのだと、アルバートはまだ思っていた。
しかし、キャンディのお腹の中で日々育っていく子供を前に、そんなことは関係なかった。
キャンディは彼の言葉に、胃袋がひっくり返るような感覚を覚えた。
妊娠中で体型の崩れた自分でも、彼は抱いてくれるのだろうか。
「僕の子供を私生児にしたくないんだ、キャンディ。
明日、婚姻証明書を送らせる。
君には、今回の手続き上でのみ、アードレー姓を名乗ってもらうよ。」
彼は驚きのあまり息をのむキャンディにそう告げた。
「僕たちは結婚するんだ、キャンディ・・・僕が変わるために
君を巻き込む必要があるならね。」
アルバートは彼女に言った。その声は硬質で、威圧的なものだった。
キャンディは、満月と星々のように輝く満面の笑みを返した。
アルバートは彼女の変化に、息もつけず、驚くばかりであった。
彼は、どこか懐かしい彼女の微笑を見て、心臓のあたりに妙な感覚を覚えるのだった。
「私を“巻き込む”必要なんてないわ。…自分の意志で行きます。」
彼女は頷くと、ゆっくりとその手を彼の腕のほうへ伸ばした。
プロポーズで、彼は永遠の愛を誓言しなかったけれど・・・。
キャンディは一時の落胆をおぼえた。
しかし彼女は、結婚さえしてしまえば、彼が自分のものであると主張することができると思ったのだ。
キャンディは強く決心した-自分を深く愛するよう、彼を仕向けることにしよう。
彼女はついに、アルバートを惹きつけるための、自分の肉体のパワーというものについて理解したのだ。
そしてそれを利用しようともくろんだ。
くもの巣のように複雑な愛の巣を張り巡らすのだ。
それが出来上がってしまえば、彼は糸に深く絡まったように、もう彼女の元を離れられなくなるだろう。
アルバートの高慢かつ堂々とした表情を見上げながら、
愛を得るために、身を粉にして闘うだけの価値のある男だわ、と思うのだった。
キャンディは、後ろで話をしている友人達を振り返った。
そしてアルバートと一緒だった女が、まだこちらを鋭く見つめているのに気がついた。
その視線は、女とアルバートの関係を疑わせるものがあった。
キャンディは女を凝視した。彼女の決意がそのまま表情に表れていた。
(気をつけてね・・・彼は私のものよ!)
「今夜は僕と帰るんだ、キャンディ。」
アルバートが柔らかく指示した。
キャンディは彼のほうへ向き返り、アルバートの積極さは何なのだろうと疑った。
「でも私、着替えを持ってきてないわ?」
彼女はテリィ、スザナ、そして女性のほうへ向き、反論した。
「それは朝にでも簡単に調達できるだろう。」
彼はいぶかしげに2人を見ているテリィとスザナへ、礼儀正しく頷いた。
彼はグランチェスター夫妻達が自分に質問を投げかけようと
しているのを察し、速やかに回答したいと思った。
「キャンディ、こちらはキャサリン・デュ・プリー。
彼女は、東海岸から長い旅の途中で、彼女の近い親戚を訪ねているところだ。」
キャンディは驚いて、キャサリンの冷たい視線を見つめ返した。
これが、かつてアルバートを傷つけた女。
静かに思いながら、年上の女性に対し、挑戦的に顎をつきあげた。
「お近づきになれて光栄です、キャサリン嬢」
キャンディは自分がそう言う声を聞いた。
キャサリンは頷くと、目を細めて美しいキャンディを見た。
そして、「私こそ大変嬉しく思いますわ。」と淡々と言った。
「私達がずっと昔恋人同志であったこと、アルバートはあなたにお話ししたのかしら?」
アルバートの腕に軽く触れながら、彼女は微笑んだ。
「ああ、キャサリンは家族ぐるみの“古い”友人でね。」
アルバートはキャサリンへ向かって“古い”と強調した。
なんて嫌な女だ、目元を強張らせながら、アルバートは感情を隠した。
彼はキャンディの頬が高潮し、怒りの言葉を押し殺そうとしているのが分かった。
彼女はキャサリンと自分の過去について知っているのだろうか。
「いいえ、アルバートは何も・・・。でも、ファロー氏とフェルナンデス氏から
一度、あなたとアルバートとの関係について聞いたことがありますわ。」
キャンディは、明らかに傷ついた様子で、視線をアルバートのほうへやりながら、
そう答えた。それはアルバートの疑問への答えでもあった。
「テリィ、スザナ、私が海外にいる間、キャンディを泊めてくださったことに対し、
深く感謝します。しかし今夜、彼女は私とともに戻ります。」
抵抗をものともせず、彼は言った。
アルバートがテリィに手を差し出すと、テリィはその手を、
何か腐ったものが付いているかのように見下ろした。
「まだ貴方の意向が明らかでない、アルバート。」
テリィが冷たく、怒りに満ちた声でうったえた。
「お腹の子に関しては、キャンディが明日、自分と結婚することに同意したので安心して欲しい。
私は父親として、あるいはアードレー家の総帥として、責任を怠るようなことはしない。」
その手をまだ宙に差し伸べつつ、アルバートは淡々と述べた。
「それは本当なのか?」
テリィは、キャンディのほうを振り返ると、頷く彼女を見てため息をついた。
「そうすることにしたの。」キャンディは静かに言った。
テリィとスザナは少しずつ理解していった。
スザナはキャンディが望んでいたこと、そしてこれから意図していることを
完全に呑み込むと、柔らかく微笑んだ。
アルバートとテリィは握手をした。
アルバートは、グランチェスター夫妻とキャンディとの暗黙の了解について、
推し量ることができないまま、平然とキャンディの横に立っていた。
しかし、彼の性癖から、遅かれ早かれ、必ず突き止めてやると思っていた。
キャサリンは完全にかやの外であった。
彼女は、アルバートが自分を忘れてしまったことにがっかりし、ため息をついた。
もっと残念なことに、成熟したアルバートはうっとりするほど男としての魅力に満ちており、
噂にたがわず、この上なくセクシーであった。
キャサリンは当然、彼を愛人にしてみたいと思ったが、
彼女が垂らした釣り餌にはアルバートは全く興味がないようだった。
彼の目は、若い女に釘付けになっていた。
「あの、私のような単なる通りすがりの者には、少しプライベートな事情のようですわね。
友人を外で待たせておりますので、私はここでお暇いたしますわ。」
アルバートが泊まっている一流ホテルへの道のりは静かなものだった。
途中何度か、キャンディはアルバートの視線を感じたものの、
馬車の揺れと騒音で瞳の奥を読み取ることはできなかった。
彼が何を考えているのか、はっきりと知ることは無理だった。
ホテルに着くと、アルバートは彼女の部屋を見せた。
その部屋は彼の部屋に繋がっており、そこへキャンディをひとりにした。
彼は、キャンディに、明日の朝最初にすることは、婚姻証明書が手に入り次第、
カトリック第1教会へ行き、婚礼をすませることだと伝えた。
教会の後、彼らはミシガンの邸宅へ戻る予定であるとも告げた。
アルバートはキャンディがそこで赤ん坊を産むことを希望した。
キャンディはため息をついた。
私・・・いや、私達の子供は、自分と同じような環境で育つのではないのだ。
そう思い、ある種の安堵感を覚えていた。
長い夜のあと、ひどい疲労に襲われたキャンディは、すぐに服を脱いだ。
ベッドの中で、お腹の中の胎児が体の向きを変えようとして、
自分の横腹を元気に蹴っているのを感じながら、優しくお腹に触れた。
彼女が気だるく笑みを浮かべ、右向きに横になると、蹴りはおさまった。
急にキャンディは、アルバートとこの瞬間を分かち合えたら、と思った。
たぶん明日…彼女は深い眠りに付く前に、半ば夢を見ながら次の日のことを考えていた。
次の朝、太陽がやっと地平線上に現れたばかりの頃、
キャンディはアルバートが、自分の部屋との間のドアを激しくノックする音で目覚めた。
彼女はローブを掴むと、突き出たお腹のあたりで腰紐を結び、
眠そうにあくびをしながらドアへ向かった。
ドアを開けると、アルバートが険しい顔をしてドアの向こう側に立っていた。
キャンディは、彼がすぐに自分の姿に見入っているのに気づいた。
彼の目線が、紐で結んだにもかかわらず、半分ずり落ちたローブに
釘付けになっているのを知り、驚きに暖かい血がサッと上るのを感じた。
キャンディには、自分の丸く、豊満な乳房が、どれだけ
薄いローブにぴっちりと張り付いているか、また冷たい室内の空気に
2つの乳首が硬く勃起し、官能的にその形をさらけだしているか、
気づくはずがなかった。
彼女のくしゃくしゃになった、黄金の髪は、魅惑的な光輪のごとく
美しい顔を包み込み、驚きに開かれた唇はやわらかく、そそるようであった。
アルバートは、自分の体が反応するのを感じた。キャンディの、
無意識にもかかわらず挑発的なポーズが、荒れ狂う波のように彼に衝撃を与えていた。
彼はやっとのことで平静を保ちつつ、緩めようとした手をぎゅっと握り締めた。
やがて、アルバートは、完ぺきな、大柄な姿勢で戸口にもたれかかった。
それを見たキャンディの鼓動は踊りあがった。彼女は鼻を
ヒクヒクさせ、彼の香水と男の体臭を、むさぼるように吸いこんだ。
30分ほどで教会へ出かけなければならない。」
アルバートは、自分でもあまり意味を成さないと思うことを口走りつつ、
キャンディが目前に立っていること以外に、まったく興味はなかった。
夜な夜な夢の中に姿を現し、彼がずっと褥(しとね)を供にしたいと待ち望んでいた女性。
アルバートの視線が、挑発するように、大きくV字に開いた
ローブの胸元と、キャンディの輝く緑の瞳を行き来した。
襟に手を伸ばすと、それを押し流す。突然キャンディの乳房は、
呼吸と供に大きく波打つのだった。
彼は、彼女の頬がさっと赤くなるのを見て、自分の理性の“たが”が外れるのを感じた。
たまらなく美しい…。
彼女を見つめながらそう思わずにいられなかった。
アルバートによっていつも駆り立てられてきた、押し寄せる
欲情を抑えようと、キャンディは、彼の手に自分の手を置いた。
やがて彼の大きな手が柔らかな乳房を包み込むと、キャンディは
再びそこに彼の手があることに、この上ない悦びを感じ、
小さく喘ぎ声をもらした。
どれくらい前のことだったか・・・?よろめきながら彼女は考えた。
長すぎるくらいの間、待ったのよ。
アルバートの手が胸から腰の後ろへ回される。
キャンディが為されるままに、アルバートの硬い体に引き寄せられると、
青い眼差しはいっそう激しく、燃え上がる炎のごとく熱くなった。
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